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なろうラジオ大賞2 • 3 • 4 • 5 • 6参加作品

雪原の雪だるま


地平線の先まで広がる雪原に夜の帳が降りる。


澄みきった夜空には沢山の星が瞬いていた。


「宝石箱をひっくり返したみたいな星空だぁー!」


「きれいだなー」


「あれがふたご座で、こっちがオリオン座ね」


「あそこのペルギウスとあっちのシリウスにこっちのプロキオンで、冬の大三角になるんだね」


「あ! 流れ星」


「え、どこどこ」


「ぎょしゃ座、見つけたー!」


夜空を見上げ歓声を上げる小さなもの達。


「そろそろ時間だ、皆、集まれ」


大きなものの1体が小さなもの達に声をかけ、雪原に放置されている1台のトラックの周りに集まるよう指示する。


数百年前、地球温暖化により世界中の海の海流の流れが変わり、海流の流れの変化を契機として地球は氷河期に突入した。


沢山の人達がキャラバンを編成し、北の地から南に向けて移動を始める。


急速に冷えて行く空気に、大地に、追い立てられるように人々は先を急ぐ。


過酷な旅によりキャラバンを編成する人達は次々と命を落とした。


その中の1つのキャラバンの最後の生き残りの男が乗ったトラックが、雪原に辿り着く。


トラックの燃料が此処で尽き動けなくなったのだ。


男は寂しさを紛らわせる為に、旅の間に亡くなった家族や仲間達の顔を一人一人思い起こしながら心を込めて、大小いくつもの雪だるまを作る。


その作った雪だるまに家族や仲間達の遺品を纏わせた。


キャップや毛糸の帽子、マフラーに手袋、メガネにサングラス、ジャケットや毛皮のコート、シューズにブーツ、ブレスレットにベルトなどをだ。


それらの遺品に残っていた魂の残滓が、極寒の地で溶ける事なく凍りついた雪だるまに染み込む。


乏しかった食料の最後の一欠片で食事を終えた男は、トラックの座席に横たわり窓から見える夜空を見上げた。


男はそのまま息を引き取る。


魂の残滓が染み込み仮染めの命を宿した雪だるま達は、毎晩、誰にも看取られる事なく一人寂しく亡くなった男の冥福を、手を合わせ頭を下げて祈るのだった。











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