7話 仕事
「お前の俺達への任務の采配に問題がありすぎる。特にカイに与えた任務は基本2、3人構成だ。あいつに3人分の力があるとも思えないし、みんな一人ずつで挑まなければいけない事になっている。この任務で数少ないこのスパイチームの隊員がどれくらい死ぬと思っている?」
「話しが長い。まとめてから言ってくれ」
[王国宮廷スパイチーム]の執務室にて、バジルとロットが言い争っていた。
「要すんに今日の任務を全員分再編成しろっつってんだよ」
すると、
[王国宮廷スパイチームNo.6]
バリッテット・ナイラーム
がロットの話しをまとめた。
「そりゃ無理な話しだな。今回の任務は俺は決めていない。決めたのは王だ。きにくわねぇなら王に言ってこい。俺はしらねえよ」
「王…だと?」
俺は驚愕する。
「グルかお前ら」
バリも気付く。
「何の事言ってんだかね?」
それにバジルはどこ吹く風。
「マーガレットとエステル。この二人を殺す用にリオールとかいう男を仕掛けたのはお前だな?白状しろ」
バジルは顔に笑みを貼りつけながら、
「リオール?ああーその二人を殺した殺人鬼ね。俺もリオールを恨んでいるお前達の同志だ。だから共にリオールを打倒する計画を練らないか?」
どこまでいっても話しが通じない。
「お前…話しを変な方向に持って行きすぎ。さっさとリオールについて教えろよ」
ついにバジルの余裕な態度に苛ついたバリがバジルの額に銃を突きつける。
…だが。
「嘘だろ?」
バリの後頭部に銃が突きつけられる。
「新しく入隊するラオール君だ。仲良くしてやってくれや」
銃を突きつけながらゆっくりと後ろを向いたバリも、傍観していたロットもその人物を見て驚愕する。
「完全に黒やん」
バリはそう呟いた。
*
その夜。
夜と言うには遅すぎ、朝と言うには早すぎる深夜2時。
たっぷり寝た俺は、すっかり元気になった。
…気分は最悪だが。
場所は廃墟されたビルの二階。
そこで、俺は情報屋達の頭に向かって銃を発砲していた。
「嫌な仕事だな….。はやく辞めてぇ」
そう言いながら発泡する。
発泡するたびにこの世から一つ命が消える。
何も生み出さない仕事。
悪いものを生み出す輩を潰す仕事。
それがスパイ。
分かってはいるが…。
たとえどんな凶悪犯などでも殺す時は…。
全然いい気もしないし達成感もない。
たまにある生物兵器との戦いは少しばかり達成感はあるのだが。
この仕事を今まで続けていられたのはエステルがいつも隣りにいてくれたからだ。
銃を発泡するカイの顔は、まるでついさっきまで少女とデートをしていた人とは思えないぐらい辛そうにしていた。
…デートじゃなくてめるでーとだったが。
「やめてくれれれれれれれれ!」
「命だけは!命だけわぁ!」
「すみませんでしたあああああああああ!もうこの仕事やめますからぁ…!」
自分に殺されまいと必死に縋り付いてくる人達。
こいつらから出る情報屋がいかに後に危険になってくるものか分かりはしないが…。
もしかしたらこの中には人質などを取られて、いやいやながら情報屋をやっていた人もいるかもしれないが…。
冷徹麻痺に殺していく。
殺していくたびに血が飛び散り、自分の服や体の至る所に付く。
いつ見ても嫌な光景だ。
自分の頬に飛びついた血が、まるでその血の主人の涙を表現するが如く下に落ちていく。
…そんな光景を見たくなかったから、前回の情報屋の仕事でも俺は目を瞑って…。
メルがいて安心していたから…眠ってしまい、在りし日の記憶を見たのだろう。
…そんな事を毎回考えているな、と思った。
俺がひたすら銃を撃ち続けていくと、
「早くしろよおおおおおおお!こっちは高い金払ってんだごほっ!」
「うるっさいわねー!私の射撃の腕前があれば今回の標的のロットなんて簡単に殺せんのよっ!みくびんないでちょうだい!あんたたち障害物は邪魔だからさっさと死んでなさい!」
そんな悲鳴と罵声が角を曲がった廊下側から聞こえてきた。
雇った暴力団か何かか…?
声と口調からして女だな。
何故か俺の銃以外で誰かが殺される音を聞き、なんか聞き覚えのある声だな…と思いながら、警戒し、慎重に角の方を盗み見ようとするが…。
バンッ!
一瞬、盗み見た時に銃口が目に入り、俺は咄嗟に角に引っ込み、自分に向かってきた玉をやり過ごす。
…暴力団なんかじゃねぇ。
相手はやり手だ。
いくら俺の体が銃を無効化するといっても、侮ったらこっちが狩られかねない相手だと即座に理解した俺は即座に銃から玉を全部取り出し、代わりに強力な睡眠薬を投入する。
かなり体に擦ればすぐに眠気に襲われるというエステル作の一品だ。
その後、エステルによって魔改造されたこの銃口に毒を多く塗りつける。
この毒も勿論超強力であり、エステル作の睡眠薬による眠気を向上する性質がある。
それらをほんの一瞬でこなす。
もうかなり慣れている。
…慣れたくなかったが。
俺は目を見開き、今から始まる殺し合いに集中するよう、深く呼吸をする。
俺はまず銃に撃たれ、効かない俺に驚いているところを叩く。
いつもの作戦で問題ない。
…よし。
そして俺は敵のいる廊下へ飛び出て撃とうとした時、その敵の顔が露わになる。
もちろん俺の顔も。
「…ネーヴェ?」
「カイロットおおおおおお!?」
何故かそこには
[王国宮廷スパイチームNo.4
ネーヴェ・エイザップ
がいた。
…なんでだ?
二人の間に沈黙が訪れた。