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死者と生者のスパイコンビ  作者: ノーム
10/12

8話 裏切り者達

「何で…?カイロットがここにいるの…?」

「こっちのセリフなのだが…?」

 時刻は早朝の2時。

 情報屋は大体片付け、残り2人となった。

 その2人は奥の部屋に逃げて込んだ為、逃げ出す心配はない。

さっきまで悲鳴や命乞いでうるさかったのが嘘だったように、辺りは静寂に包まれている。

 そんな中、一本道の長い廊下にてカイロットとネーヴェは呆然としていた。

 …何でネーヴェがここに?

 もしかしてロットが俺にネーヴェも一緒だと伝え忘れていたのか?

 いや、あいつはそんなうっかりさんじゃあない。

 …だとすれば…。

 そんな訳ないか。

 「どうしてお前ここにいんだ?今日のお前の任務ここじゃないだろ?」

 「いや…?その前にカイロットもここじゃないよね?ここの任務はロットのはずじゃ…」

 何故かネーヴェがものすごい震えて聞いてくる。

「いや俺はロットと任務を交換しただけだぞ?お前は…何でここにいんの?」

 俺が質問したその時、ネーヴェの耳の辺りから微かに振動音が聞こえた。

「あー…。間違えてたかもー…。ちょっと室長に聞いてみるね?」

 そう言いながら、ネーヴェは廊下の奥の方へ走っていった。

 どうしたんだあいつ?


 *


「ねえねえ聞いてないんですけど!?何でこっちにカイロットがいんのよ!どう言う事よバジル!?」

「こっちにはロットがいる…。あいつら任務を交換しやがった!普通交換しないだろ…!難易度Cと難易度MAXなんか!」

 カイロットと遭遇した長い廊下の奥にある部屋にて。

 ネーヴェは耳に付けているイヤホンのような通信機で、バジルとバガラと連絡をとっていた。

なぜかバジルが何も応答しないが、バガラもネーヴェと同じ状況であり共感しあっていた。

「嘘ぉ!まあ私はあいつとめっちゃ相性悪いからとりま逃げる。もう後は全部リオ…ラオールに任せちゃいましょうよ!そうすれば…!」

「そうだなっ…!ラオールがやれば一瞬で殺ってくれる!別に今俺達が骨を折る必要なんか…!」

「駄目だ」

 突然、バジルがそう言った。

「…は?」

「…え?」

「帰るのは殺ってからだ」

 2人が逃げる準備をしていたが、バジルの一言で一瞬固まり…。

「何でよっ!ふざっけんじゃないわよ!私達の戦法分かって言ってんの!?」

「…どう言う事かな?バジル。僕達を殺すつもりなのかな…?例えバジル上官でも許しませんよ…?」

 ネーヴェは怒りながら、バガラは怒りを抑え込みながら言う。

 それに対してバジルは…。

「殺れ。殺ってから戻ってこい。これは命令だ」

「つぅ…!」

「何でそこまで…?」

「今、絶対に奴らを会わせてはいけないからだっ!」

バジルの焦ったような大声で一瞬、2人は黙り込む。

「バリッテットも[異能者]だったんだよ!奴らを会わせたら…死ぬぞ?」

 突然、バガラの回線が落ちた。


 *


「奴らを会わせてたら…死ぬぞ?」

「それってどう言う…っ…!」

 バジルの謎発言から数瞬後に自分の首の隣りにナイフが刺さる。

「俺は近接戦タイプだからカイロットに相性が良くて…ネーヴェはスナイパーだからお前に相性が良かったのに…!どうしてかな…?ロット」

「あからさま過ぎだ。バガラ」

 かつん、かつん、と乾いた廊下に靴の鳴る音が響く。

 [反逆者]のみんなが提供してくれた施設、[ホテル オーロランド]にて。

 ロビーでかっこ良くカイロットを待ち構えていた俺は、突然のロットの出現に驚き、階段を上り屋上に出て階段の後ろ側に隠れてバジル、ネーヴェと連絡を取った。

 そしてバジルが不安な事を言った瞬間、ロットにナイフを投擲されたという状況。

 …非常にまずい。

 非常に。

「スパイチームにいるお前の仲間を全員喋れ。…嘘はつくなよ?」

「誰が言うかっ!」

 そう言いながら俺はロットに拳を振るう。

 俺も格闘タイプなんだ!

 万能型のお前とは距離を取られることさえなければ十二分に戦える!

「生憎、俺は小さい頃から空手を習っていてね」

 ロットは俺の拳を受け流して掴み、背負い投げをした。

「つぅ…!」

 ごきごきばきっ!

 俺の背中がすごい音をたてて地面に叩きつけられる。

…絶対に背中がなってはいけない音だ…!

「柔道の間違いなのでは…?」

 背負い投げは…柔道です。

「ああそうだったな。確かに間違えていたよ。空手ではなく…柔道でもなく…暗殺術だったよ」

 そう言いながら背負い投げによって地面に仰向けになった俺の額に銃を突き立てる。

「普通…人は空手と暗殺術を間違えたりしない…ぞ」

 完敗だわ。

 知ってたけどさぁ…。

 まさか同じ[王国宮廷スパイチーム]でこんな実力差があるとは思わなかった。

「では、話してもらおうか。バガラ。こんな状況証拠があるんだ。もう社会的な意味でも逃げられんぞ」

 そう言いながら、俺の額にあった銃を自分のポケットにしまった。

 ものすごい華麗なしまい方だな…。

「分かった分かったよ。話す。何でもどーぞ」

俺は起き上がりながら言う。

「そうだな…」

 ロットは何か考えている素振りをする。

「じゃあまずは…お前の階級は?」

「Dの9。はっきり言って下っ端だな」

 俺は何気なく答える。

 すると何故かロットは俺の返答に驚愕していた。

「…階級がDでも、スパイチームに入れるのか…!?」

「まあそうだな。上の奴らとか馬鹿みたいに強いのばっかだし」

「そうか…!想像していたより状況は最悪だな。上位回には恐らく[異能者]もいるだろうし…!」

「[異能者]?」

 急に出てきたファンタジー用語に俺は首を傾げる。

 何だかついさっき聞いたような気がしたが。

「ああーすまん。忘れてくれ。…ともかく次の質問は…」

 ロットはまた考える素振りをしようとした瞬間。

「なっ!」

 ロットがいきなり焦ったように大声をだす。

 いきなり首に鋭い痛みが走る。

 もうそれは痛みを通り越して熱で熱せられているかのよう。

 だが、余り痛みを感じない。

 矛盾しているが…そうとしか表現できない。

 痛みが走った自分の首に手を当てようとするが、何故だか腕が持ち上がらなかった。

「なっ!誰だ!?」

 ロットが何やら叫んでいるが…。

 次の瞬間、目の前にいきなりナイフの柄が激突し、俺の意識はそこで途絶えた。

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