第164話 暗躍する彼らの悲喜こもごも
※(喜)(怒)(哀)(楽)のような表現は、対応する感情アイコンが表示されているとお考え下さい。
何時もならばもう章が終わっている頃ですが、五章は水着回のぶん長くなっていますので、もうちょっと続きます。
番外編みたいに分ければ良かったでしょうかね。
◎ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
そういう訳で僕では彼女を止められません
力を貸していただければ嬉しいです
>◇ <緑色の仮面>
それは構わないんだけどよぉ
どうするんだ? 俺らじゃお姫さんに勝てないと思うぞ?
>>◇ <橙色の仮面>
そうそう、いい所まで行けたとしても
一人やられると、その度に彼女強くなるんだろ?
こっちの強みの数がかえって仇になる
>>◇ <紫色の仮面>
かといって精鋭部隊はもう大半が吸い尽くされちゃったしな
>>◇ <藍色の仮面>
もっと優しく吸って欲しかった……(悲)
>>◇ <橙色の仮面>
黙れヘンタイ! (怒)
お前みたいなののせいで話ややこしくなってるんだろうが!
>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
まず彼女をあの手この手で拘束して時間稼ぎします
その間に代表者を一人、可能な限り強化します
>>◇ <紫色の仮面>
おお! 皆の力を一つに、だな!
熱いぜ……
>>◇ <赤色の仮面>
確かに、力の集合であるセリスさんを倒すには
こちらも力を集合させてやればいいのは道理ですね
>>◇ <青色の仮面>
代表者って、どうやって決めるんですか?
>>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
そこは決めている時間が無いのでこちらで指定します
ぽてとちゃんに全員でポイントを送って下さい
>>◇ <緑色の仮面>
ぽてちゃんか! 皆のアイドルだもんな、適任だ!
でもあの子で大丈夫か?
>>◇ <藍色の仮面>
不意打ちで倒すんだろハル?
それならぽてとは最適だろうな
第二回では彼女に殺られた奴も多い
>>◇ <橙色の仮面>
あの暗殺者ぽてちゃんだったの!? (驚)
>>◇ <緑色の仮面>
な? 気づいてすらいない
>>◇ <青色の仮面>
ぽてと、がんばるよ!
みんな、パワーをぽてとに!
>>◇ <紫色の仮面>
良かろうなのだぁ!
◎ <青色の仮面>
ですがハルさん、ぽてとさんで彼女を倒せるでしょうか?
ぽてとさんは確かに不意打ちは強いですが
今のセリスに致死ダメージを通せるかは不安が残ります
>◇ <青色の仮面>
ハルさんが手伝ってくれるんだよね!
ぽてと、知ってるんだ(喜)
>>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
そうだね、僕がそこはなんとかするよ
>>◇ <緑色の仮面>
なんとかって、どうやってだ?
>>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
魔道具を作ります、対セリス専用の
それをぽてとちゃんに使ってもらいます
>>◇ <青色の仮面>
おおぉーー(楽)
すごいね! ぽてと、完全武装!
>>◇ <橙色の仮面>
魔道具、って……
そんな簡単に作れんの!? てかいつ作るの!?
>>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
いずれセリスはログアウトで逃げる事を思い付くでしょうから
僕もその間に戻って作ってきます
設計は今やってます
>>◇ <紫色の仮面>
ええぇぇ…………
この人の頭どうなってんの?
>>◇ <赤色の仮面>
ちょっと待って
じゃあログアウトの事をここに書いたら危険じゃない?
それ以前に作戦書くのも危険だけど、それは仕方ないとして
>>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
それは大丈夫です
彼女は戦闘中にここを見る余裕はありませんから
ずっと戦闘状態にしておきます
>>◇ <赤色の仮面>
……何でこの人は戦闘中でも平気で書き込んでるんだろう?
状況はセリス側と全く変わらないよね
>>◇ <橙色の仮面>
ルナちゃんがハルのふりして書き込んでるとか?
いや彼女にはウィンドウ出てないな……
>>◇ <緑色の仮面>
ハルだから。以上。
諦めたほうがいいぞ?
>>◇ <青色の仮面>
セリスに通用するような強力な魔道具
それこそそんなに簡単に作れる物なのでしょうか?
>>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
今日一日で様々な魔道具を目にしてきました
なので仕組みは大体理解できました
ただ単に威力を高めれば良いだけなら問題ないです
>>◇ <藍色の仮面>
その発言に問題しかない……(怖)
◎ <緑色の仮面>
っておい、ハル
お前、今わざと力渡しただろ? どうすんだ?
この後ぽてちゃんが倒すのに支障は出ないのか?
>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
大丈夫です、それは慣れました
奪われた力は僕の好きなタイミングで返して貰えます
>>◇ <紫色の仮面>
……? は? 慣れ?
>>◇ <緑色の仮面>
今日いちばん意味不明なコト言ってるこの人! (怒)
>>◇ <赤色の仮面>
それを皆に教えれば、奪われた力全部取り戻して勝てるのでは?
>>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
教えると言っても……
慣れです。深く観察して、慣れましょう
>>◇ <橙色の仮面>
全く参考にならねぇ!
>>◇ <青色の仮面>
私たちも早くハルさんに慣れないといけないようですね……
>>◇ <青色の仮面>
ぽてと、慣れた! ハルさん、すごい!
>>◇ <緑色の仮面>
実際そのくらいの感覚でいるのがいいぞー? (諦)
◎ <藍色の仮面>
しかしよぉ、魔王討伐戦だろこれ
思うところはあるだろうが、セリスに任せればハルに勝てるのでは?
>◇ <橙色の仮面>
ああうん、魔王セリス討伐戦だよな?
突如現れた、力を奪う悪い魔王を倒さなきゃ(乱)
>>◇ <紫色の仮面>
<魔皇>ハル様もお力を貸してくださる
えっ? ハル様は<魔皇>であって魔王じゃないから……
>>◇ <緑色の仮面>
手のひら返しスゲーなお前ら!
>>◇ <橙色の仮面>
いやでも勝てないだろ冷静に考えて
本当に全員が一丸になってようやくどうにか、ってバランスだ
一部でもハルの味方ムードが出た時点で詰みだったわ
>>◇ <緑色の仮面>
今だから言える事だけどなぁ
最初からここでこうして計画練らないと無理だったね
たぶんハルは自殺の名所設置した時から計算してたわ
>>◇ <赤色の仮面>
恐ろしい子っ! (恐)(驚)(醒)
>>◇ <緑色の仮面>
アバターの顔すげー(笑)
>>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
いえ、僕もそこまでは計算してませんでした
敵を減らそうとは思ってましたが、ここまで味方が増えるとは
>>◇ <緑色の仮面>
またまたー
皆の装備だってメイドインハルばっかじゃん
規定路線だったよこっちから見りゃあ
◎ <橙色の仮面>
おっと、カウントダウン出たか
……相変わらず何やったのかわからねぇ
>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
五感を奪いました
>>◇ <緑色の仮面>
こっっわっっ! (恐)
>>◇ <藍色の仮面>
やっぱり魔王なんじゃ……(怖)
>>◇ <赤色の仮面>
よせっ! それ以上はやめるんだ! (焦)
疑問を抱いてはならない……
>>◇ <黄色の仮面> ※あなたの書き込み
では僕は準備してきます
後は仕上げをお待ちください
>>◇ <緑色の仮面>
おー、なんだかんだで楽しみだぜ(楽)
>◇ <紫色の仮面>
ぽてちゃんの強化は十分?
>>◇ <青色の仮面>
ぽてと、すっごい強いよ! 今なら空もとべる!
ふらいどぽてと!
>>◇ <青色の仮面>
……これは教育が必要なのか
狙ってやっているのか、判断に困ります
>>◇ <赤色の仮面>
ぽてとの備蓄は十分か
>>◇ <橙色の仮面>
私のぽてとは53万箱です
>>◇ <藍色の仮面>
おまえのじゃねーから!
◎ <緑色の仮面>
おぱんつ大公開! ユキちゃんナイスな提案だ!
やれ、ハル! やるのだ! 動けないうちにがばっと! (喜)
>◇ <紫色の仮面>
おぱんつ! (喜)
>>◇ <藍色の仮面>
おぱんつ! おぱんつ! (喜)
>>◇ <緑色の仮面>
あっ、カナリー様……
私はそんな事は望んでいません
全部彼らの罪です
>>◇ <藍色の仮面>
勿論ですカナリー様
我々は規約を遵守します
>>◇ <橙色の仮面>
こいつら……(呆)
>>◇ <紫色の仮面>
結局、今回カナリー様の出番無かったよな
出るまでも無い力の差だったって事か
>>◇ <赤色の仮面>
やっぱこっちも神様ぶつけないと駄目かね
◇
そうして全ての準備は整い、実行の時だ。ハルはぽてとに完成した魔道具を渡すと、自身はその場を去った。成り行きはゾッくんの目を通して見守る。
紫チームの本拠地は、装飾の精緻な大神殿といった感じだった。相変わらず宝石がよく採れるようで、随所に宝石による飾りつけが豪華に行われている。
ぽてとはすぐに、その柱の影に<潜伏>で潜んだ。別に物陰に入る必要は無いのだが、そこは気分だろう。
そのまま待つこと数分。果たしてセリスはこの本拠地へと現れた。
「……何だったのかしら、あれ。急に真っ暗になって。あれもハルの魔法、なのよね? 反則じゃないのあんなの! ……おかげでログアウトにも気づけたんだけど。ざまぁないわね!」
ひとりごちるセリスの様子は、まだ少し混乱が残っているようだ。ログインに時間が掛かったのもそのためか、それともリアルの休憩を済ませてきたか。
ハルとしてもあれは最後の手段だった。あまり普通のプレイヤーに使いたい手ではない。いきなり無音の闇に放り込まれるのは、恐怖が大きいだろう。
「……居ないのかな? いや、いいわ! これから一般人を狩って狩って、それで今度こそハルを倒す!」
「残念ながら、それはさせる訳にはいきません。ここで貴女を止めます」
「誰っ!?」
息巻くセリスの前に、神殿の入り口に立ちはだかる影があった。
自国をイメージした青色の妖精ワンピースに身を包み、背中にも妖精の羽を増設した女性、シルフィード。ストレートロングに流した輝く金髪が、リアルの地味な彼女との対比を濃くしている。
万一セリスが掲示板の作戦に目を通していたとしても、意表を突けるようにと、あちらでは一切口に出さなかったカウンター役だ。
「……青のリーダーさんか。無理よ、止めるのなんて、そこを退、……く必要は無いわね。あなたから最初に奪い尽くしてあげる」
「させません、と言いました」
「あはっ、無理よ! 今のあたしはあのハルよりも……、あれ、うそ、何で?」
臨戦態勢に入ろうとした所で、自身の変調に気づいたようだ。ハルから奪った力が、ごっそりと抜けている。
ハルの新たなスキル、<禅譲>。これは<簒奪>を観察することで得られたスキルだ。それらは扱うデータを同じくしており、同じデータベースにアクセスしている。
つまり、“他人に渡ったハルの能力”ならば、ハルの意思でいつでも任意に回収が可能となっていた。それは奪われた物であっても変わらない。
限界まで強化された自身の力が、またハル以下まで落ちている事にセリスは大きく動揺する。その隙を見逃すシルフィードではなかった。
魔道具を取り出すと、すかさずそれを起動する。
「えっなにっ! ……何も起きない、いや、違う!」
「『アリアンロッドの円環』。ここであなたを拘束します」
シルフィードが武器らしき物を取り出した事に警戒し、後ろに飛びのくセリスだが、そのステップは見えない壁に阻まれてしまう。セリスの周囲の空間が、再び断絶していた。
「ハルさんの魔法、アリアンロッド。それを再現した魔道具です。貴女はこれを、突破できていませんね?」
「あんたもハルの差し金っ! ……ふんっ、忘れてるみたいね。あたしはハルの拘束、全部切り抜けて来た」
空間の壁を無造作に殴りつけるセリスだが、突破は叶わず壁はぴくりとも変化しない。反動で自身のHPにダメージが入るのみだ。
「貴女こそ、忘れているようですね? 貴女は、アリアンロッドを突破していません。自爆を恐れたハルさんが、ご自身で解除しただけです」
「しまった……」
「ここで、拘束させていただきます」
セリスにこの魔法が効かなかったのは、“ハルが使った魔法だった”為だ。それに起因するダメージで死ぬと、ハルが倒した事になり、復活されてしまう。
だが使うのがハル以外なら、単純に反動ダメージをも伴う最強の拘束魔法だった。
「また、ログアウトすれば……」
「無駄です。これから先、イベント終了まで、私がずっとお付き合いします。何度でも何度でも、拘束してさしあげます。……ログアウト時間も、先ほどのように五分とは限りませんよ? 時間はランダム。長いものでは二十分も確認されています」
「……めるな」
「その平均値は十二分。あなたがログアウトで逃げられるのは、一時間に五回程度。私を揺さぶろうと、緩急を付ければ試行回数はそれだけ減ります」
「ナメるなあああぁぁあぁ!」
シルフィードの宣言に激昂し、我を忘れたように隔離空間の壁にセリスは拳のラッシュをかける。
強化されたその体によるスピードは残像を生じ、武道の術理を忘れたその突きは自傷ダメージを加速させる。
だが彼女もただ自爆して終わるような女ではない。頭の芯はきちんと冷静さを保っていた。
眼前にメニューウィンドウを固定すると、回復薬使用の画面にしてそれも連打する。仲間により潤沢に用意された薬を惜しげもなく使用し、反動ダメージを逐次無効化していく。
「壊れろ、壊れろ、壊れ、ろぉぉ!」
「凄まじい迫力ですね」
頃合だろう。冷静なシルフィードが頼もしい。ハルは隅で監視しているゾッくんの目をキラリと光らせて、彼女にサインを送る。
隔離魔法の解除のサインだ。それを受けてシルフィードは、セリスに気づかれないように魔道具を解除する。丁寧に、破砕のエフェクトと効果音も付いている。
「やった! 壊れた! これで、あんたを倒せばっ……」
拘束魔法を突破した達成感、次なる標的に狙いを定める照準、今後の展望に胸を躍らせる期待。
それらが生むセリスの体の硬直を、ぽてとは見逃さなかった。
「どっかーん」
「えっ……?」
撃ち出された爆撃が、セリスの胴から下を一撃で消し去る。皆の力を集めたぽてとによる、過剰にMPを注がれた魔道具の、凶悪な一撃だった。
「おー、すごいね。まだ生きてる。さすがだね!」
「あんた、何処から……」
「ぽてとはね、最初から居たんだよ?」
<潜伏>により機を窺っていたぽてと。だが強化され非常に素早くなったセリスへと、魔道具の一撃を確実に命中させる必要がある。シルフィードは、そのための駄目押しの配置だった。
シルフィードを突破したと思えば、確実に気が緩む。もともと終了まで拘束して逃げ切ろうとなど、考えてはいなかったのだ。
姿を現したぽてとが、セリスへひたひたと迫る。確実なトドメを刺すために。
ゲーム慣れしていないセリスは、咄嗟の判断が取れないだろう。回復して逃げれば良いのか、魔法で迎撃した方が良いのか。頭の中はパニックのはずだ。
だが回復は間に合わず、迎撃もシルフィードが魔道具を使い冷静に防ぐ。どちらを選んだとしても、彼女に窮地を脱する目は無かった。
「ねぇまって。やっ、やめてぇ……」
「ちぇっくめいと!」
ぽてとの魔道具から無慈悲に魔法が炸裂し、ここに、対抗戦を騒がせたセリスとの決着は成るのであった。
※誤字修正を行いました。
サブタイトルの話数を修正しました。最近多いですね、気をつけます。




