第16話 王子との邂逅
窓の無いその祭壇の間は、薄暗く、静謐な空気に満ちている。
祭壇と、その前に立つハルに降り注ぐように差す光はどこから入って来るのだろう。窓が無いというのに揺らめく光が、優しくハルを照らし出している。
荘厳であり、また静寂だ。
祈りの場に相応しく広間は静まりかえり、外部の音は何も入って来ない。屋敷に居る時は常に何かの、誰かの立てる音が聴こえていたのだと思い返される。
ここは神域。
あまりに神秘的で、不自然なまでに綺麗すぎた。
汚れひとつ無く整えられたこの舞台が、ゲームの中なのだと実感を与えてくる。
──こっちが普通、なんだよな。
メイドさん達によって常にきっちり清められている屋敷の中も、ここまで完璧にすることは不可能だ。
人が生活している以上、いやしていなくても、小さな汚れは溜まっていく。あえて汚れを表現する技術もかなり進歩しているが、その生活観を演出するには至らない。
綺麗過ぎるこの場所に居ると、嫌でもそれを実感させられるようだった。
「ハルさん、MP尽きますよ」
「そうだね、浸ってる場合じゃない」
カナリーの声に感傷を振り払う。
回復薬でMPを補充。<MP回復>も育ってきたが、<神託>の消費を相殺するほどのスピードはない。
これから何が起こるか分からないので、あまり無駄遣いは出来るとは言えないが、せっかくの彼女の神殿なのでもう少し繋いでおく。
《スキル・<神託>のレベルが上昇しました:Lv.5》
「君の神殿なんだから無料で啓示を与えてよね」
「私の神殿なんだからお供え物をするんですよー」
「違いない」
消費は割引されなかったが、雰囲気に合わせたのか、ちび状態だったカナリーが本来の姿に戻っていく。
神殿に光臨する女神は美しかったが、やはり現実感を感じないものだった。
──僕もアイリにはこう映っているのかな。
こちらに来てから俯瞰視点が使えない。自分を省みる事が出来ていなかった。
「みんなが居ないと静かだね」
「ハルさんは本質的には寂しがりやさんなんですねー」
「そうだね」
わりと容赦の無い発言だ。
普段なら皮肉の一つも返したかも知れないが、カナリーが相手だと、あまり気取らずに答えられた。
◇
「そろそろ来るんじゃないでしょうかー」
「いよいよだね」
「何か考えはあるんですかー」
「君次第かなー」
「おー、やっぱりですかー。期待通りですねー」
ハルの行動は予想されていたのか、それとも彼女の目論見も同じだったのか。嬉しそうに周りを飛び回るカナリー。
のほほんとしている彼女としては、多少大げさなアクションだ。言葉通り、この展開を期待していたのだろうか。だとすれば、何の為に。
「さてカナリーちゃん。君の家に強盗が入ろうとしている」
「大変ですねー」
「大変そうに見えないね……。だが、君の手足となるべく在る警備員の僕は、彼らに攻撃出来ない。どうしたらいいと思う?」
「そうですねー。攻撃出来ないと困りますよねー。強盗が入るんだから仕方ないですよねー。……仕方ないので、ロックを解除しちゃいます」
《NPCに対する制限が解除されました》
「どうぞ、ご存分に」
そうニッコリと笑うと、カナリーは輝く粒子となって光の中に溶けていった。
この場所の空気のせいだろうか。普段は可愛らしく緩んでいる彼女の顔も、その瞬間だけは逆光に照らされ、妖艶な雰囲気を醸し出しているように感じられた。
ぞくりとする。
円滑に運営する為に定めたはずのそのルール。理由を付けて、破りたがっているとでも言うのだろうか?
◇
正面の大扉が開かれる音が響く。
実際は一切の摩擦などは無いだろう、音はきっと後付けだ。ぎぎ、と大仰な響きが届いてくる。
入り口をくぐると、左右に分かれ道があり、そちらにいくつかの部屋がある。だがこの広間には正面に進んですぐの距離だ。
「寄り道せずに来てくれれば良いのだけれど」
こちらから出て行くのは格好がつかない。カナリーではないが、演出はしっかりと、効果的にしなければ。
その思いが届いたか、それとも最初はやはり目立つ場所をと思っただけか、足音はまっすぐこちらへと続いてきた。
そして広間の扉も開かれた。
アベル:Lv.-(NPC) 称号<王子>
HP342/347
MP215/1713
先頭に立つ男のステータスを確認する。
王子その人のようだ。ここへは王子は来なかった、という間抜けな事態は避けられたようだ。
HPは高いが、MPの最大値はアイリや一部のメイドさんよりも低い。前衛タイプの戦い方を得意としているのだろうか。裏付けるように、腰に豪奢な剣も下げている。
とはいえ現状のハル(今はレベル37、つまりMPは1370だ)よりも高いことには違いなく、油断は出来ない。
現在値が低いのは、どうやらこの世界では基本のようだ。プレイヤーよりも回復手段が乏しいためと思われるが、詳細は不明。
「お前は……、ここの人間か?」
お互いしばし向かい合い、王子が口を開く。
後ろには数人の近衛が続いている。アイリとは違い、侍従といった装いではなく、皆戦士だ。
王子の声は力強い。
スラリと整いながらも、しっかり鍛えられた体から発せられる圧、そして自信に裏打ちされているのだろう。
この状況にも震えは混じらない。だが緊張が無い、という訳ではないようだ。少し硬さを含んだ。
やや短めに整えられた金の髪が、そのセットに反発するように微妙に跳ねている。
──イケメンだ!
笑えば爽やかな好青年だろう顔つきを、厳つい視線がアンバランスに固くしていた。
──惜しい。方向性は主人公も張れるタイプだろうに。
答える間にそんな事を考えるハル。こちらには緊張は無い。緊張させられるのは美少女相手だけで間に合っている。
「そうだよ。ここの神の使徒。そういう君はここの人間じゃあないね? まあいいや。僕はハル、よろしく」
「貴様っ、おうじに」
「黙ってな」
「……はっ」
貴人に気安い口を利いた事で注意されそうになったが、王子に遮られた。
アイリの時のようにはいかないようだ。いや、普通はこうなるのだろうか。どうやらこの世界の人間にとって、使徒は無条件で目上にはならないらしい事が分かる。
「悪いな。アンタらは別の世界の平民だって知ったらコイツらうるさくて」
「いや、事実だからね」
「でもアンタ、話に聞いた王女の男だろ? 巫女である王女が認めた使徒だと本当は神レベルに敬わなきゃならねぇんだが。お互い様って事で許してくれ」
──斜に構えた喋り方だね。微妙に似合わない。
良く言えばフレンドリーだ。これで敬えと言われても困るだろう、特にプレイヤーは。
そのプレイヤーの事を、どうやら知っている様子だ。耳が早い。
王都で会ったのだろうか。それとも、ハルとアイリのように、誰か他の神によって彼と引き合わされたプレイヤーが居るのか。
「オレは瑠璃の第五王子だ。よろしくな」
「ああ、よろしく」
──いや、名乗りなよ。
試しているのだろうか。プレイヤーの仕様をそこまで知っている訳ではないのか、名前を告げない事で反応を見ているのかも知れない。
ハルはそのまま流す事にする。化かし合いは得意だ。お返しとばかりにウィンドウの束、ブラックカードをこれ見よがしに左右に振って反応を見る。王子の視線は動かなかった。
──きっと、神の使徒に本名を知られたら魂を抜かれる、的な迷信が伝わっているんだろう。かわいそうに……。
そんな冗談を口にしたくなる。
だが、このまま名乗らないでいると、ハル達の間では『即決王子』で定着してしまいそうなのだが、それは大丈夫なのだろうか。
◇
「さて、歓迎したいところではあるけど、君達は不法侵入だ。聖印を置いて立ち去ってもらえるかな?」
「おう、悪いな。身内の者が間違って持ってきちまったんで、返しに来たんだ。屋敷には入れないしな」
「えっ、それなら玄関先に置いてすぐ帰ればよかったじゃん。ここまで入ってくる必要無いよね?」
「お、おう。なんだ、直接渡そうと思ってな……」
「ボロ出るの早すぎるでしょ……。もうちょっと頑張ろうよ……」
何だか愉快な奴のようだった。ハルは少し脱力する。
王子を見る近衛達の視線も暖かい。何時もの事なのだろうか。
だがそんな彼らに追い込まれた色は見えない。この飄々とした態度でこれまでもやってきたのだろう。自信は揺らぐ様子がない。
「まあ、誰か張ってるんじゃないかと思ってな、都合がよかった」
「だろうね。それで、素直に返してくれるのかい?」
「話が早いな。取引しようぜ」
そうなるだろう。せっかく手に入れた材料だ、政治家が無条件で手放す訳は無い。
なんとなくこの王子の気風ならそれもありそうだとは思えるが、やはり彼も為政者なのだと感じさせる。
「条件は?」
「こいつを返す。代わりに王女との婚姻を飲め」
「だめ」
「まぁ聞け」
「だめ。論外」
「聞けって……」
袋から鍵を取り出し語る王子を半眼で睨むハル。一気に機嫌が悪くなる。
互いの距離は十メートルも離れていない。いっそ一足飛びに踏み込んでひったくってやろうか、という考えが頭をよぎる。
「舐めすぎでしょ。釣り合うとでも思ってるの?」
「そうだな。取引と言うより提案だ。聞け、婚姻と言っても書面上のもんだけだ。オレは王女に指一本触れない、いや一切会う事もしない。お前はそのまま王女と仲良く暮らせばいい」
「この結婚、君にそんなにメリットがあるの?」
「ああ、オレはこの土地が欲しい。それさえ飲めばお前も、王女もオレの軍が守ってやれる。他の国からも、オレの国からもだ」
──土地ときたか。随分と譲歩したものだが、この地そのものに何かあるのかね。戦略的な駐屯地として、という訳じゃあないよね。
イラつきながらも王子の言葉の内容を考えるハル。戦略資源でも埋まっているというのか、それとも龍脈でも流れているのか。カナリーに聞けば何か分かるだろうか。
王子をよく観察するが、どうやら一切嘘を言っている様子は無かった。すべて堂々と本心を語っている。そのあたりは結構ハルにも好印象なのだが、内容が内容だ。
別の事だったら、この王子の気質にほだされて乗ったかも知れないのだが。
「だめだよ。有耶無耶にしたいらしいからハッキリ言うけど、ここはカナリー神の聖域で、君らはそれを侵した大罪人だ。力ずくで取り返しても文句を言える立場じゃあないんだよ?」
「怖いな。だが出来るのか? 力ずくで」
「そんなに力量に自信があるのかな」
「そうじゃない。お前にオレが殴れるのかって聞いてる」
どうやら知られているようだ。プレイヤーがNPCを攻撃出来ない仕様が。
誰を通して知ったのだろうかという事に、ハルは思考の一部で興味を覚える。だが、今はそんな状況じゃない、と他の思考が強引に押さえつけた。
──そして自信はある、か。
そうじゃないと言いつつも、その声の自信が揺らぐ事は無い。指揮官でありながら、本人も相当に戦い慣れしている事が窺えた。
「試してみるかい」
「いいね! 決闘といくか」
言うと王子は剣を腰から外し、近衛に預ける。命のやりとりはしないという意思表示か。素手のハルに合わせたのか。
──いや、彼はあの剣にこそ絶対の自信を置いている。あの剣を抜くことは殺し合いのサインなんだろう。
「王子がそんな事でいいのか……」
「いいんだよ。殴り合わなきゃ分かり合えねぇ」
「まあ、僕も嫌いじゃないけど、その考え」
拳は口よりも物を言う。
何を思い、何を隠したいか。何を好み、何を嫌っているのか。ゲームのプレイスタイルは、時に言葉よりも雄弁に伝えてくる。
ゲームの対戦は会話に例えられる。ハルの会話は、本心を徹底的に隠した姑息なものだが、という自嘲が含まれているのだけれども。
近衛を見ても、少し呆れながらも止める事はない。普段からこうなのだろう。
最初から和やかとは言い難い空気であったが、一気に張り詰めたそれに難なく適応している様子だ。慣れを感じる。
王子というもののイメージが少し崩れそうになるハル。だが傲慢なそれよりもずっと好ましい。決闘に応じる。
二人、戦闘態勢を取った。
「いいぜ、何時でもき」
言い終わる前に王子の視界からハルが消える。
意識の間隙を突いた。飛んだのは斜め前、地面を這う低さ。
実際には、視界には入っている。だが王子はハルの表情を読み取ろうと注視していた。ピントが、合わない。
なめらかな体の運びは足音を残さず、この静謐に保たれた空間は反響を許さない。
次の瞬間には、王子の意識から完全にハルは消えていた。
一瞬で拳の届く距離。真横につける。
「一撃で死んでくれるなよ」
あえて声をかける。
急に横から聞こえた声に王子がギョっと固まる。慌てて対応しようとする重心の乱れにハルは滑り込んだ。
──でもどうしよう。NPCへの攻撃は初めてだ。犬殴った時はいいとこ150ダメージで、王子はHPが350あるから死んだりしないと思うけど。念のためちょっと、いやかなり手加減しようか。いやそれも真剣な相手に失礼かな。でもやっぱ死んだら困るし。
「ぐおぉぉおぉ!?」
結局手加減しないハル。
王子は派手に吹き飛んだ。
◇
アベル:Lv.-(NPC) 称号<王子>
HP341/347
MP216/1713
──全く減ってないし……。
どうやら心配は杞憂だったようだ。モンスターとNPCはダメージの計算方法そのものが違うらしい。全力でぶっとばしてよかった。
HPとは個人の保有する魔力。魔力で作られたプレイヤー達とは違い、肉の体を持つ彼らには直接魔力ダメージは通らないということだろう。
ハルの側への反動ダメージも無かった。あれは魔力を直接殴った事からくる反動だったのだろう。
「ナイスな体捌きじゃねぇか! だが軽いぜ。こんなんでオレを殺せると思うなよ」
「顔腫れてるよ」
「えっマジ? すまん、次は顔は止めて?」
「うん。ごめん」
貴人の顔を傷つけてはならないのだ。ハルは少し反省した。
「だが軽いのは事実だぜ。そんなんじゃ何十発撃ってもオレは倒せねぇ」
「鍛えてるんだね」
「おうよ。お前はナヨっちぃな色男。荒事は止めて王女に愛を囁く仕事に戻りな」
「へえ、言うじゃないか。挑戦と受け取った。なら本当に何十発も入れてあげるよ」
煽り合いも久々だ。頭に来ながらも少し楽しくなってくるハル。
普段はのんびりしているように見えるが、その実ハルは好戦的だ。準備を積み重ねるのは相手を打ち倒すため。
戦う事は、好きだった。
──2番から12番、覚醒起動。限定二十秒。
《休眠解除。二秒後に強制覚醒》
「はぁっ!!」
気合一閃。叫び喝を入れ、その勢いのまま飛び込む。
脳の休眠状態にしていた部分を強制的に叩き起こし、全能力をもって肉体の制御にあてる。
格闘ゲームがフルダイブになって以降、最適動作は延々と研究を続けられてきた。それはリアルの格闘技のセオリーとは、微妙に異なる。
筋肉の動き方。骨や内臓への負担。そういったものを一切無視した、“人間の形をした物体”同士の殴り合いによる最適解。
徹底的に研究され纏められた理論。的確に、それをなぞった。
「てめっ、ちょ、まっ、ぅぼぉ!」
「自慢の筋肉に頼むんだな! どうか持ってくださいと!」
執拗にボディへ連打を入れる。
反撃は受け付けない。重心制御の予兆を、徹底的に叩き潰している。
拳を振り上げようとすれば逆の脇に、蹴りを放とうとすれば軸足を。ガードを固めればその上からしつこいほどに。
いかに百戦錬磨の王子とはいえ、自分の動作にこうもぴったりと合わせられるのは初めての経験だったであろう。不気味さに体がこわばる。
ハルの方も、高揚に半ば身を任せてはいるが、少しの気味の悪さは感じていた。互いのルールが同じではないというのはあまり無い経験だ。
どこまでやればいいのだろうか。リアルの体でケンカをすることなど無い身だ。
「ぅあっ! わかった! オレの負けだ。強いな、本当に」
「はははっ! ああ! 鍛えてるからね、僕も」
ほどなく、降参が入る。引き際は潔かった。ハルも少しほっとする。
戦局を見る目も確かなのだろう。勝利の余韻に浸りつつ、将としての資質にハルは警戒を強める。
「王女に詫びよう。男を見る目は確かだったと」
「えっ、あっ、うん、ありがとう。でも問題点そこだっけ?」
珍しく上がっていたハルのテンションも、王子の天然な回答に急速に落ち着いていった。
◇
「オレも別に結婚したい訳じゃないんだよ。しかも顔も見たことのない相手とよ」
「じゃあ止めなよ。僕が勝ったんだし」
「そういう訳にいくかよ……。鍵は返す、負けたからな」
《称号・<神域の守護者>を獲得しました》
その後、王子とハルは座り込んで話している。
不良同士が殴り合って仲良くなる展開か、などとハルは適当な事を考えた。実際、王子にそういう気質はあるかもしれない。
「お前それしまえるのか」
「うん。ここの人間だからかね」
仲良くなっても油断は出来ない。
“普通はしまえない”ということまでもう知っているようだ。情報の出所はどこだろう。王子を探っても素直すぎる性質のせいか、あまり見えてこない。近衛の方から『余計な事を言うな』という念を少し感じる。
ハルが収納出来るのはカナリーの直属であるからか、アイリの持ち物だからかのどちらかの理由だろう。
「王子は誰か他に結婚したい人が居るんだ」
「おまっ! 待て、耳を貸せ」
「王子、その角度だと唇読まれるよ」
うかつなこの王子の様子だと、既に周知の事実なのだろう。
相手は身分の低い女の子のようだ。きっと体が弱い子なんだろう、とハルは勝手な想像をする。
何故か。古来よりそういうお約束なのだ。
*
しばらくどうでもいい話をして、王子は帰る事になった。
話の内容はどうという事はないものだが、この世界をあまり知らないハルにとっては新鮮だった。
そしてその間、ハルは王子本人よりも従者達の反応に注意を払い、情報を集める。王子からはやっぱり何も得られなかった。
「お前の気持ちも分かるが、結局、国の問題だ。お前は国民の命を負って立つ気概があるのか?」
「無いよ。でもそれは卑怯な言い方だよね。国民の命を背負っていれば侵略していい事にはならないでしょ」
「そうだな。だが止まる訳にもいかねぇ」
「だろうね」
引き下がってはくれないようだった。最後にそんな話をして王子とは別れる。
問題は一つ解決したが、これで終わりではないと思うと少し頭が痛い。
王子達の姿を見送りながらカナリーを呼び出す。
「<神託>。終わったよ、鍵は取り返した」
「殺してしまわなかったんですねー」
「カナリーちゃんいきなり黒いよ……。外交問題でしょそれじゃ」
「この中なら治外法権ですのでー」
よもやこの神様はそれを望んでハルに特権を与えたのだろうか。
微妙に気味の悪さを感じながらも、ハルもアイリ達の待つ屋敷へと戻っていった・




