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エーテルの夢 ~夢が空を満たす二つの世界で~  作者: 天球とわ
3部2章 エリクシル編

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第1245話 属性相性のお講義

星⇔聖⇔光⇔地⇔水⇔雷

虚⇔暗⇔闇⇔風⇔火⇔命


 遅くなってすみません。前書きにも早見表置いときます。

 このゲームには、全部で十二の属性とそれに対応した属性魔法がある。それらは属性同士で相互に干渉し合い、相性が存在していた。

 相性は互いに相克そうこくする関係にあり、例えば『水は火に強い』といった一方的な有利不利は存在しない。この世界では、『水と火は相克関係』にある。互いに弱点ということだ。


 また、後述する隣り合う属性同士はある程度の吸収が起こる関係にあるため、例えば<神聖魔法>は光の力を持ったモンスターには効きが弱くなる。


「これによって、いち属性の魔法しか覚えていないと、状況によっては役立たずになりかねない。なので、よほどの思い入れがなければ一属性特化ではなく、少なくとも二種の属性魔法を習得しておくのがおススメさ」

「しかし、かといって、ハルのように十二種全てを習得する必要はないのではないかな?」

「それはその通り。二属性で足りない状況はそうそう無いし、器用貧乏になるだけだ」


 まあ、直前まで多属性を一人で操って無双していたハルが言っても、またどの口が言う案件になってしまうだけかも知れないが。


 そんな自分のことは棚に上げつつ、またはハルだからこそ語れる内容も含めて、魔法の講義を始めていく。

 敵の要塞はしんと静まり返っており、恐らくは<聞き耳>で聴講ちょうこうしてくれていることだろう。魔法の恐怖に縮こまっている、訳ではないはずだ。


「さて、ご存じの通り、属性魔法の種類は<火魔法><水魔法><風魔法><地魔法>の四元素に始まり、<光魔法><闇魔法><神聖魔法><暗黒魔法>の光系、闇系。そして<星魔法><虚空魔法><雷魔法><生命魔法>の聞きなれないタイプを合わせて十二種だ」

「相性順に並べると、また違った並びになるのだよね」

「うん。『星、神聖、光、地、水、雷、虚空、暗黒、闇、風、火、生命』だね」

「これを時計回りにぐるりと並べるんですねー」


 その通りだ。時計の十二時を頂点として<星魔法>から始まり、


『星⇔聖⇔光⇔地⇔水⇔雷』

『虚⇔暗⇔闇⇔風⇔火⇔命』


 という形で一周する。

 虚空からは六時の部分で折り返し、そこからは対角線の先、十二時の星属性と相克の相性となるのだ。神聖なら暗黒、地なら風といった上下の位置が互いに弱点である。


 属性同士の関係が複雑で、覚えるのが面倒であると、『とあるゲーム』では割と不評だ。


「まあ、実際のところ、こんな相性図なんて覚える必要は特になかったりする」

「自分の担当の対属性だけ覚えて、あとはサブに『十五分後』を持っておけば大抵は事足りるね」

「そもそも威力で上回っていれば、ゴリ押しでも済みますからねー」


 そんな訳知り顔の意見を、セレステとカナリーも補足してくれる。

 二人は近接職なのに何を知った風な口を、と言うことなかれ。彼女らは『とあるゲーム』で、その相性を設定した側だ。このゲームはそちらから属性システムを一部流用していた。


 ハルも最初のうちは、この相性を利用してセレステの作った試練を攻略したり、対抗戦で上手く立ち回ったりもしていたが、後半になるに従い威力ゴリ押しになってしまった。

 まあ、世の常である。今回は、せっかく覚えた十二属性が役に立つといいのだが。


「中でも使いやすいのはどれかと言えば、やっぱり基本の四元素だね。地水火風だ」

「<生命魔法>はどうなんですかー?」

「回復は役に立つかも知れないけど、攻撃面で使いにくさが目立つから、どうしても回復専門になりがちかな」

「<虚空魔法>はどうだい? 強そうじゃないか」

「名前のカッコよさに引かれて取った人は後悔するんじゃないかな?」


 要塞の中から、『ギクリ』という声が聞こえてきそうだ。上級魔法のような強そうな響きをしているが、実際は他と変わらぬ下級魔法。むしろ使いにくい。

 もちろん上級クラスまで育てれば強い魔法が生えてくるのかも知れないが、そこまでは使いにくい魔法で修業し育てなくてはならない。


 それを如実にょじつに表しているように、<虚空魔法>スキルのワールドレベルは非常に低い位置で推移していた。

 オンリーワンの術師になりたい稀有けうなプレイヤーは、狙い目である。


 回復の<生命魔法>も取得者は多そうだが育っている者は意外と少ない。

 回復部分はいいのだが、現状アイテムで事足りてしまうのと、攻撃面がまるで毒のような、生命力を徐々にむしばむ即効性の低い攻撃なことが足を引っ張っている。


 天空と重力を司る<星魔法>も、罠というか苦行の一つ。初期は期待したような派手な魔法は発動できず、活躍は四元素に大きく水をあけられていた。


四不遇よんふぐうの中では、雷だけはマシですかねー」

「四不遇言うな……」

「まあ、属性の基本とそれぞれの現状は分かったよ。それでハル? それが今の状況と、どう関係するんだい?」

「うん。本題はこれからだ。現在、この要塞は謎の巨大バリアに覆われて守護されてしまっているんだが」

「これは、誰かの魔法なのかな?」

「いや。こんな魔法が撃てる術師が居るならもっと善戦しているだろう。アイテムのはずだ」

「なるほどー。新資源から採取できる、ボーナスアイテムですねー?」

「そう予想している。有用な品でいいね。欲しい」


 ハルの支配した二種から採れるアイテムは、今のところ仕様効果はただの回復薬でしかない。

 まあ、あれは何らかの素材として用いることで、後々強力な効果を発揮してくれるだろうが。


 とはいえ現状は『四不遇』と四元素の関係のように、即効性のあるバリアに軍配ぐんばいが上がる。しかし、そのバリアも無敵ではない。


「どうやらこのシールドは風属性のようだ。そして、属性があるということは、今の講義の内容が生きてくるね?」





 ハルは要塞を覆ったバリアから軽く距離を取り、魔法を撃つのにちょうどいい立ち位置へと移動していく。

 言ってしまえば、このバリアも単なる属性魔法、<風魔法>の一部である。

 ならば、前述の属性相性による有利不利の関係により、攻略が可能であるはずなのだ。


「はい、では問題。このシールドはどうやら風属性の魔法のようです。ならば、これを破るのに適した魔法はなんでしょうか」

「はいはーい。<地魔法>ですよー?」

「もしくは、隣接する<闇魔法>か<火魔法>なのだろうけど、今回の状況だと逆効果かな?」

「そうだね。吸収関係の相性だと、より強力なこのシールドに魔法を食われて終わりだろう」


 魔法同士の吸収が発生すると、強い魔法が弱い魔法を食い尽くし、更に強い魔法になってしまう。

 このため、常に世界一である絶対の自信でもなければ、一属性特化は厳禁だ。必ずサブ属性を用意しよう。


「なので今回は<地魔法>でこいつを破っていく訳だけど、それもまた問題がある。僕でもここまで強力な魔法をまだ撃てない」

「詰みですねー。どうしましょうねー?」

「ああっ、なんということだっ! みすみす相手が体勢を立て直すのを見ているしかないなんてっ!」

「……なーんか喋りが胡散臭い誰かさんっぽいですねー」

「君ら二人ってちょっと似てるよね?」

「心外なのだけれど?」


 人数が必要になってきたことだし、リコリスにも手伝ってもらうのもいいだろうか?


「……それはさておき、対属性を撃っても弱っちかったら、やっぱり一方的に消されて終わりだ。なので、やはり吸収属性も使う」

「応用編ですよー?」

「敵ではなく、自分の<地魔法>に吸収させて強化するという訳だ」

「その通り」


 優秀な生徒たちである。いやまあ、彼女らは元となった属性魔法を知り尽くした教授クラスなので当然なのだが。むしろハルより詳しい。


「ここで、僕が十二属性全てを使えることが生きてくるね。こうして『地』に『水』を含ませるだけでなく、」


 ハルが発動した<地魔法>の土槍に、ほぼ同時に発動された<水魔法>の水球が吸い込まれて強化されていく。

 水を吸い込んで膨らむように土の槍は巨大になり、勢いを増してバリアへと突き刺さった。


 だが、この程度ではびくともしない。ハルは更なる吸収効果を重ねがけし、その抵抗に抗っていく。


「隣は水だけじゃない。なんと地は、『光』も吸収できる」

「どういう理屈なんでしょー?」

「芽でも出るんじゃないかな? <草魔法>というわけだ!」

「そんなものはない」


 直感的な部分を気にしても仕方ない。そういう相性になっているのだ。

 そうして<光魔法>も含めて、両側からの吸収を果たした土槍は更に強大になるが、それでもバリアの破壊には至らない。

 なかなか強力だ。現状、単独での突破は不可能な代物と考えてしまってもおかしくはない。


「どーしましょー。両面吸収での強化も通用しませんでしたー。おしまいですー」

「棒読みだねぇカナリー。なに、大丈夫さ。今のはデモンストレーション。そうだろうハル?」

「その通り。次は本気でいくよ」


 そもそも、起点となる土の槍が最高の威力とは程遠い。ハルは<地魔法>で放つ技を、兵士との戦闘中にも使った足元から地面ごと突き上げるような範囲魔法へと切り替えた。


 そうして地鳴りと共にせり上がって行くシールド直下の地面に、先ほどより強力となった<光魔法>と<水魔法>が吸収されていく。

 これで、魔法の威力は更に向上し、超強力な破城槌はじょうついとなってシールドへと襲い掛かることになるのだ。


「だがまだ終わりじゃあない」

「ですよー?」


 ハルは<龍脈接続>によるMP回復に任せて、更に更に魔法を重ね合わせて発動する。十二種使えるのだ、全て重ねがけないでどうしようか。


 水が雷を、雷が虚空を。逆側の光が神性を、神聖が星を。隣り合う属性がそれぞれ更に隣を吸い取ってゆき、最後には十二の属性全ての力が<地魔法>へと収束していった。


 その結果生まれた魔法は冗談のような威力と範囲、そして高さを生み出して、ハルたちの住む山のふもとに、もう一つの山かというような小高い丘じみた槍を作り出してしまった。

 それに撃ちぬかれたシールドの運命は、語るまでもない。もはやシールドどころか、敵の要塞も一気に全壊し、この場にはもう破片だけを残すのみだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ハル様の魔法学<入門編>ですねー。大変貴重な機会なので要静聴ですよー。講義の途中に実践が入っているせいで集中できないのですかー? 予習不足なのでエーテルの夢、オーキッドの魔法入門<実践編>…
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