第72話
第72話
「水嶋さんはこのまま帰られますか?」
「はい。一度戻って御前へ報告したいと思います。」
「先ほど言われていた管理指導の件なんですが追加でお願いしたい事があるんです。
実は俺に姪がいたみたいなんです。
それで今後、姪が困っていたりお金がいりそうな案件があった時は俺に連絡が入るようにして頂けないでしょうか。」
「姪御さんのお力になりたいという事ですね。」
「はい。あの子は関係ありませんから。」
まぁ恨まれることはあっても感謝されることは無いだろうけどな。
不幸になりそうだからって事だけで親と引き離すのは無理だろうし
そもそもあの子もそんな事を望んではいないだろうしな。
ただ継がせる家と畑が無くても長男が産まれるまでアイツら頑張るだろうから生まれた後が心配だ。
普通なら必要無い事がわかりそうなんだが、家や土地がらみの因習とか風習にそう言う事は関係ないんだろうからな。
はぁぁ、その時に力になれれば良いんだが。
アイツらの血が薄い事を祈るのみだな。
「わかりました。そのように取り計らわせて頂きます。」
「ではこれで失礼いたします。」
「今回は本当にありがとうございました。」
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
「美月も栞里ちゃんも古くて汚い家だが上がってくれ。」
「へぇ、ここが俊介さんの住んでた所なのね。」
「俺の部屋はそのままあるらしいからそこへ行こうか。」
「楽しみね男性の私室に入るのなんて初めてよ。」
「私もです。」
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
「ちょっと待っててくれ写真の在りかを聞いてくるから。
なぁ俺のガキの頃の写真とかって残ってるのか?」
「ああ。あんたの部屋の押し入れの段ボールに入ってるはずさ。」
「捨ててねえんだな?部屋の中の物は全部俺の物か?」
「ああ、アンタがいなくなった後に全部あの部屋に放り込んだからね。」
という事は
今の俺の部屋は事実上の物置部屋になってるのか。
美月と栞里ちゃんにはドアの前で少し待ってもらって一度全部回収だな。
「わかった。」
「あの人達はアンタの何なんだい?」
「あぁ。あの2人は。」
「私たちは俊介さんの婚約者よ。」
「おっおい。」
「2人共かい?」
「はい、勿論です。俊介さんは既に鷹宮の家族同然なんですよ。」
「鷹宮!財閥の?」
「もちろんよ。先程うちの顧問弁護士がそう言っていなかったかしら?
その為に鷹宮財閥の顧問弁護士の名を出させたのだけど。」
「もういいだろ。行くぞ。」
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
今、部屋の外で美月と栞里ちゃんには待ってもらっている。
サッサと済ませてしまおう。
≪エリアピュアクリーン≫
そして回収。
座布団なんかは前の部屋で使ってたやつを出せばいいよな。
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
「何も無いんですね?。」
「だけどお手入れはされていたみたいね。」
「写真は押し入れみたいだから引っ張り出すまで座って待っててくれ。」
押し入れの中も全部俺の私物みたいだから全部回収しておこう。
そして〈空間収納〉の中身を写真で検索っと・・あったあった。
取り敢えず全部見せれば満足するだろう。
「あったぞ。小中高校のアルバムが3冊と
後は俺も見た事無いからどんなものがあるかは知らないから好きなのから見ていってくれ。
ところで、さっきのは何なんだ。」
「さっきのって?婚約者の話?」
「あぁ。」
「水嶋さんには鷹宮との繋がりを示すために名を出すように指示してたんだけど
それでも俊介さんが何だか下に見られているみたいで嫌だったからかしら。
でも、それだけではないのよ。
事実私達2人が貴方に好意を抱いているのは本当の事だし。
それに俊介さんからこんなに凄い婚約指輪も貰った訳じゃない。ほらっ。」
そう言うと左手の薬指を俺に見せてきた。
確かに2人にせがまれて俺がその指に嵌めたんだが。
「俊介さんは御爺様が認められています。
もちろん父も母も同じです。
美月さんも私も既に家族同然に思っていますし好意も抱いています。」
「そうだな、あれから3年と少しか。
ずるずるとつかず離れずの状態を維持していて2人にはずっと悪いと思ってたんだ。
俺としても2人と一緒に居ると落ち着くし楽しくてどうしてもな・・・
俺も2人の事を大事に思ってるし好意を抱いてはいる。
だが・・・
家の親や兄貴の嫁を見ただろう。
とてもではないが俺なんかが家族を作れるとは思えてこなくてな。
夫にしても父親としてもちゃんやっていけるのかとか?
アイツらと同じことをしないかなんて考えると物凄く怖いんだ。
それに俺は定職につかない自由業のダイバーだからつり合いがな。
遊んだり食事したりデートなんかは良いんだが、いざ結婚となるとな。」
今まで難聴系主人公の様な聞こえないふりや
分からないふりをしてきた・・だが・
頭ではわかってはいるんだが感情がそれを拒むんだ。
結局は兄貴のやってる事と同じで人の事は言えなかったんだな。
それにアイツらと同じ血が流れてると思うと怖くて結婚なんて無理だと思った。
「私は「なんか」じゃなくて俊介さんでなくては嫌なんです。
それに大丈夫です。俊介さんには私達がいます。」
「栞里の言う通りよ。
それに俊介さんはしがないじゃなくて凄いの間違いじゃない。
何処に1回で128億稼ぐダイバーがいるのよ。
確かに俊介さん以上に優秀な人物は探せば他にいるかも知れないけど
ただ隣にいて欲しいと思ったのは俊介さんが初めてなのよ。
もう、恥ずかしいからこんな事言わせないで頂戴。」
情けないな、女性にここまで言わせるなんて正真正銘のヘタレだ。
クソ野郎だ。
ここまで言われて腹を括れないようなら死んだ方がマシなんじゃないか?
俺はアイツらと同じ様にはならない。
決断しろ。
「はぁぁ、15年ぶりにこの家に来て
それも俺の部屋でとか
どんなタイミングなんだよ?俺って本当に締まらねぇなぁ。」
「そんな事ないわ。」
「・・・美月さん。」
「はい。」
「俺と結婚を前提にお付き合いをして頂けませんか。」
「はい。喜んでお受けします。」
「栞里さん。」
「はい。」
「俺と結婚を前提にお付き合いをして頂けませんか。」
「はい。喜んで・・・うっ嬉しいです。」
「栞里。良かったわね。」
「はい。私たち・・今から俊介さんの婚約者なんですね。」
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