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第71話

第71話


「こちらが俊介さんのご実家ですか。」


「ああ、古くて大きいだけが自慢の家だ。」


「そうかしらそこまで無いと私は思うけど?」


「いやお前らの実家と比べるなよな、普通はそこそこでかい部類に入るんだからな。」


◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇


「うわぁ、おっきなくるま。あのくるま、おじさんの?」


「お嬢ちゃんは?」


「わたし?。わたし、かざまつりゆみぃ。」


「おじさんは?」


「おじさんは、お父さんの古い知り合いだよ。」


「おとうさん、いつかえってくるかしってる?」


「あぁ。昨日会ったけど元気にしてたから、もうすぐ帰ってくると思うよ。」


「わぁ、ありがとう、おじさん。おとうさんのこと、おしえてくれて。」


「いいえ、どういたしまして。」


娘がいたのか? なら俺の姪になるのか。


◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇


「風祭さん、お待ちしておりました。

昨日は同席されていなかった風祭家の方々に状況だけは説明済みです。」


「ありがとうございます水嶋さん。」


マジで水嶋さんは優秀な人だな。

俺が家に行くと言っただけで何がしたいか察してくれている。


「この方の説明された事は本当の事なのか俊介。」


「ああ、全て本当の事だぞ。」


「お前はなんて酷い奴なんだ。

実の兄の命を救うのに金を取るなんて。

大体そんな金があるんならこっちに回してくれても良いんじゃないか。」


何言ってんだこいつ馬鹿じゃねえのか?

こいつら俺になら何でも言っていいと思ってやがるから嫌なんだ。

ガキの頃酔っぱらう度にアンタに何度殴られた事か

それに火の着いたタバコを肩に押し付けられた時は大泣きした覚えもある。

そうだ!!パックリと割れた額をガムテープで塞がれたこともあったな。


「はぁぁ言いたい事はそれだけか?

死んでも良いとは思ってはいるがこの手で殺したいほど憎んじゃいないよ。

寧ろどうでもいいくらいだ。

それなのに今回は助けてやったんだ。それだけで我慢しろ。」


「本当にお前は昔から親の言う事を聞かない子だね。

大輝はあんなに素直で良い子に育ったのに。」


親の言う事に全てイエスマンとかマジ無いからな。

それにアイツが殴られたところを一度も見た事ないし

アイツがちょっと熱を出しただけで救急病院に連れていくくらいに

大事に大事に育てたんだから当たり前の事だ。

それこそ洗脳教育の賜物だろ。


「俊介君。本当の事なの?

弟さんなんだからお兄さんを支えてあげないと駄目じゃない。

私はとても悲しいわっ。」


相変わらずゆるい人だ変わってない。

この人にとって善悪は関係ない。

兄貴に従っていれば大丈夫だと思っている。

そりゃそうだ。

兄貴は面倒ごとが起きると直ぐに投げ出して知らんふりを決め込む。

それがどんなに重大な事であっても他の奴らが気づくまで自分の記憶から消せる特技を持っている。

だがそれがバレたとしてもこの家では兄貴の言う事を信じない人間は居やしないから

兄貴が俺がやったと言えば皆がそれを信じるのだ。


こんな育て方をされたら人間不信にもなるってもんだ

だから俺に知人や知り合いと言える人はいても親友や友人と呼べる人間は居やしない。


本当におかしな人達だ。

相変わらず俺には理解出来ない言葉を喋っている。

この事に気づいたのはいったい何歳ごろだっただろう?

しかしこの両親の血が流れているのなら

きっと何処か俺も欠陥があるんだろうと思うと嫌になる。


「まぁいいさ、俺が今日来たのはアンタ達に直接会って引導を渡したかったからだ。

因みに絶縁届は役所に提出済だからアンタ達とは完全に赤の他人だと理解しろよ。

血や情に訴えたらどうにかなるとか甘い考えは起こさない事だ。


アンタ達の大事な大事な長男の所為で

家も畑も農耕機械も全部が全部

赤の他人の俺の物になってしまったんだが今どんな気持ちだ。

後悔くらいはしてるのか?


と言っても一応育ててもらった恩があるから

すぐに売り払わないくらいの分別はある。


だが、働いて金を返す気が無いならいつでも辞めてくれて構わない。

俺はこんな家と畑にはこれっぽっちも興味がないからな

その時はさっさと売りに出すだけだ。

そうするとあんた達の大事な大事なご先祖様に申し訳が立たなくなるがどうなんだろうな。」


社畜時代なら、たかられてもびた一文出てこなかったが

今はそれなりの大金を手に入れてしまった

俺にもしもの事があった場合にアイツらに金が流れると考えただけでも虫唾が走る。

という訳で今回絶縁と言う法的手段に及んだ訳だが

後で聞いたところ必要書類が多いうえ本籍の地名が変わってたりしていて

取り寄せる必要もあったらしくて手続きが物凄く大変だったらしい。


水嶋さんが代行してくれていなかったら確実にやっていなかった自信がある。

水嶋さんには感謝の気持ちを込めて何処かできちんとお礼をする必要があるだろう。

それにちゃんと俺の見せ場を残してくれてたしな。


「以上の通り

今後は鷹宮財閥の系列が管理指導を行いますので

改善されない場合は先ほど言われたように

速やかに売却処理を行い資産へと変換させて頂きます。

なお請求異議申し立ての裁判を起こされても結構ですが

この場合は代理であり請負人である鷹宮相手に裁判を起こす事になるのでご注意ください。」


気に入られたらブクマと

評価をよろしくお願い致します。


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