第66話
第66話
「全部で¥726,000‐になります。」
「たった3時間潜っただけなのに、それなりの金額になるのね?」
「普通はなりません勘違いしない様にお願い致します。
風祭さんの討伐数とドロップ率が異常なだけです。
これで先ほどのポーションと宝石が加わっていたら
もっと凄い金額になっていましたよ。」
「そうなんですか?
次から次に出て来て倒されていくから
あれが普通なんだと思っていました。」
「そう言えばスライムスターチって何に使われてるの?
俊介さんは迷宮の中でポーションの材料になるらしいって言ってたのだけど。」
「それは初耳ですね。
世間ではコーンやジャガイモ
最近ではタピオカデンプンの代用品として使われてるそうですよ。
買い取り価格は子供のお小遣いにもならない価格ですが需要は常にあります。
まぁ無ければ無いで困りませんし価格も上がる傾向はみられませんが。」
へぇ、そうなのか。
「ねぇ俊介さん。どうなの?」
「すまない少し考え事をしてた。
以前に迷宮の中で得た情報なんだが薬草、果実、ドロップ品、鉱石、水晶なんかが
ポーションの材料になるらしい。
世間ではまだポーションは作られてないんだろ?
憶測なんだが迷宮の中でしか作れないんじゃないかと思う。
それも職業とかスキルを使ってだな。
考えられるのは薬師、薬術師、錬金術師とかじゃないだろうか?」
スキルの内容までは確認してないが、
職業欄にあったから間違ではないだろう。
俺は外でも造れると思うのだが。
「興味深いお話ですね。
私はこうして迷宮に関わる仕事をしてますが
そんな事考えたこともありませんでしたね。」
「じゃぁ探したら何処かに
その職業かスキルを持っている人がいるかも知れないわね。
父さんに相談してみようかしら面白そうだし。
その時はどこか人気の無い迷宮を買い取らないといけないわね。」
「迷宮なんて国から買い取れるのか?」
「コメリカやヨーロッパみたいな海外では無理だけど
日乃本でなら買い取れるわよ。
だって国内にある殆どの迷宮は民営よ。
今いる迷宮管理局戸夜嶋支部だって鷹宮の傘下企業じゃないの。」
「そうなのか?迷宮管理局って言うから
国営だとずっと思ってたぞ。」
「私も前回の件があってから色々と調べたんだけど
出来た当初は国が管理しようとしてたらしいわ。
だけど使えもしない資源ばかり出る迷宮を管理する予算が捻出できなくて
国民からは税金の無駄使いだと突き上げられるわで
結局は出来て数年で民営化されたらしいの。
私も今までの生活に迷宮の「め」の字も関わりが無かったから知らなかったのよ。」
「じゃぁ丸山さんも公務員じゃ無い?」
「ええ。肩書は迷宮管理局支局長ですが鷹宮の傘下企業の職員ですよ。」
「質問しても良いですか?」
「どうしたの栞里。」
「あのでも。入ったら魔物が出て危険なのに国が管理しなくて大丈夫なんですか?」
「ああそれね。当初はそれもちゃんと議題にあがったらしいわ。
今から国が調査を行うから民間人は立ち入らないでくださいって
全放送局を使って放送したらしいのよ。
でも欲深い人達っているでしょ。
何でも新しい土地を目指して移住しようとした人達がいて
我先にと土地を確保しようと迷宮に潜ったらしいのよ。
だけど入ってすぐに魔物に襲われて逃げ帰って来たって訳。
その後警察が封鎖するけど全部は無理でしょう。
何度か鼬ごっこをしてそんな事を何回か繰り返していると
外までは魔物が出てこないじゃない。
それでその当時の国会では
山に山菜を取りに行って熊に襲われるのと何が違うのかという議員が出てきて
結局自衛隊が出動して確認した結果、潜らなければ問題ないとの結論に落ち着いたらしいのよ。
町に降りて来て人を襲わないだけ魔物の方が安全なんじゃ無いのかってね。
入らなければ襲われない訳でしょ。
だから山登りと同じ自己責任という事で基本無料開放になったらしいわ。
一応注意を促す為に入口に連絡所兼の警備所が置かれたみたいだけど。
それにその当時は今みたいに
好き好んでレジャー感覚で迷宮に潜る人達がいなかったから
何の問題もなかったみたいなのよ。
殆どの迷宮が私有地に出来たのもあって数も数でしょ
国が全て買い取って管理するのも無理だったのよ。
だから今、国が管理してるのは国有地にある分だけ。
そして1番の問題は最初にも言った予算。
だからこその民営化だったのね。
今でこそ映画や物語にお話にと取り上げられてるらしいけど。
日乃本で再度注目を集めだしたのは13年前にポーションが発見されてかららしいわ。
それも物好きな武道家が自宅の庭に出来た迷宮で自身を鍛えるために潜り続けていて見つけたらしいから偶然の賜物ね。
それにその後なんだけど他の迷宮に潜っていたダイバー達がインテリジェンスカードなる物を持っていて
スキルや職業を得ていたのが発覚したのだからさあ大変
それまで誰にもバレなかったって言うんだから凄いわよね。
その当時、迷宮に潜っていた人たちが戦闘狂もしくは変人と言われる人達で社会不適合者と言われているのが頷ける一面ね。
防空壕みたいに入口を塞いでた物もあったりして
撤去して管理を委託して入場を有料にしたりで急に慌ただしくなったのよ
民間企業がダイバーのスポンサーになり
新人ダイバーを育成して探索をサポートしたり
安全の為に契約ダイバーが見回りなんかもして
独自の企業研究なんかも少しづつだけど成果をあげてきて今の状態が出来たって訳。
先見の明があったコメリカ合衆国と中華国は発見当初から国営にして迷宮に潜るには国家資格が必要。
ヨーロッパと周辺諸国はマフィアが占拠して開発してたから日乃本より進んでるのかしらね。
他はそれぞれどちらかに似たり寄ったりで皆がそれぞれ情報を規制してたから
最初に無駄だと管理を放棄して情報収集を怠った日乃本は出遅れた訳。
そして今、世界で手が付いていないのは南極大地か南米の奥地くらいかしらね。
迷宮が出来た当時では国には何のメリットも無かったし
国民の殆どが興味を示さなかったみたいだし
自分の生活が大事だからそんな訳の分からない物に構ってる余裕も無かったのも背景にあるのかしら。」
「そうか、確かにな俺もダイバーになるまで興味が無かったし
なっても今の話は初めて聞く事ばかりだったな。
迷宮が出来て33年と聞けば長く感じるが
そう考えると迷宮産のドロップ品の研究が僅か13年かそこらで進む訳が無いよな。
確かにそれからすると無茶を言うなって感じだ。
研究者に今の話を聞かれたら
逆にこんなに短い期間で何を期待してるんだって怒られそうだ。
結局のところ知ってる人は知ってるってくらいで
それ程迷宮は身近な存在じゃないって事なんだな。」
「そうですね。私も俊介さんに迷宮に連れて行って貰ったのが初めてですし。」
「私は前回の取引したポーションが初めてね。
最後に締めくくるけど日乃本では迷宮は買い取る事が出来るのよ。
話の切りも良さそうだしそろそろお暇しましょ。
丸山さんも仕事があるでしょうし今日は迷惑をかけたわね。」
「今日はありがとうございました。」
「いいえ。
今回の様な用件で無ければいつでもお越しください。
お待ちしております。」
「じゃぁ俊介さん栞里。工藤行きましょうか。」
「じゃぁ丸山さん。また。」
「失礼いたします。丸山様。」
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