第61話
第61話
「久しぶりね俊介さん。
連絡のやり取りはしてたけど逢えて嬉しいわ。」
「俺も逢えて嬉しいよ。」
「あらっお世辞でも嬉しいわね。」
「世辞じゃないさ。逢えて嬉しいよ美月。」
「ありがとう。嬉しいわ俊介さん。」
「明後日から行動しようと思ってるから
今日明日はのんびりしていてくれ。」
「じゃぁ明日は私とデートしてくれない?」
「ちょっと美月さん、抜け駆けはずるいですよ。私も行きますからね。」
いつの間にか明日は、2人とデートする事に決定したようだ。
「どこか行きたい所はあるのか?」
「ええ。俊介さんの仕事場を見てみたいわ。」
「あっ私も見てみたいです。」
「それは迷宮に潜りたいって事で良いのか?」
「うぅんちょっと違うわね。
迷宮の中での俊介さんを見てみたいのよ。」
「別に見ても面白くも何ともないぞ。」
「別に面白くなくてもいいのよ。」
「2人とも物好きだな。」
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
「栞里様。今晩はこれで失礼させて頂きます。」
「ねぇ工藤さん一つ聞いても良いでしょうか?」
「何でございましょう栞里様?」
「明日。私達俊介さんにお願いして迷宮に連れて行って貰う事になったではないですか。
その、俊介さんは迷宮で魔物と戦われてるそうですが
どのくらいお強いのでしょうか?」
「そうですね。
普段の身のこなしや隙の無さから推測したにすぎませんが
私の師匠である祖父と同じ位の強さは持たれておられると思います。
ただ迷宮の中で戦われている姿はお見かけした事が御座いませんので
何と答えて良いか返答しかねます。」
「確かとてもお強い方だと
御爺様から伺っておりますが。」
「その通りです。
お嬢様こちらをご覧ください。
<インテリジェンスカード>」
手のひらの上に淡く輝く光の粒子が集まり
金色の免許証くらいの大きさのカードが現れた。
「それは?」
「インテリジェンスカードでございます。
そうですね、迷宮で得た最初の神秘と申しましょうか。
迷宮内で魔物を倒してレベル1になった時に出せるようになりました。」
「工藤さんも迷宮に潜られた事があるのですね。
それには何と書かれているのですか?」
「栞里様はインテリジェンスカードを所持されておりませんので
読む事が出来ませんが、この様に書かれております。」
【名前】工藤通孝
【性別】男
【年齢】58
【職業】剣士
【LV】6
【スキル】
俊敏 剣術(鎌鼬)危険察知
「迷宮が誕生した年でしたので私が25歳でした。
それからこの仕事を引き継ぐ40歳になるまで
15年間毎日実践で学べと、それが護衛の職に就いたときに役に立つからと
祖父に連れられ門下生達と共に迷宮で鍛えらました。」
「レベル6と言うと
どれくらいのお強さなのですか?」
「それが。お答えしにくく上手く伝える事が出来るか分からないのですが
強さとは余り関係が無いので御座います。
レベルが幾ら上がっても身体能力は迷宮内と外では変わりなく
筋力や腕力それに脚力などが急激に上がる訳では無いのですよ。
なのでレベル6とは倒した魔物の数や
それまでにかかった年数が大凡わかるだけで強さの指標には全くならないのです。」
「では何故レベルを上げるのですか?」
「それは職業とスキルを得る為ですね。
スキルで剛力を得れば力が強くなりますし。
俊敏を得れば動きが早くなる。
剣術を得れば剣術が使えるようになります。
そして魔法を得れば魔法が使えるようになります。
迷宮内でスキル以外の手段で筋力や素早さや技術を上げようと思ったら
地道なトレーニングしかありませんね。
それに魔法はトレーニングでは取得できませんから。
私はレベル2で運よく職業とスキルを授かり
それ以降もレベル4とレベル6の時にそれぞれスキルを授かったので
訓練についていくことが出来ましたが他の門下生はかなり苦労していました。
私もなんだかインチキをしているようで心苦しく思う事があったのを覚えています。
結局祖父は職業もスキルも授かる事がありませんでしたが、それを全く気にしていませんでしたね。
経験を積むことには役に立ちますが迷宮を出ればスキルや職業は何の役にも立ちませんから。」
「授からない事もあるのですか?」
「そのようですね。
逆に職業とスキルの両方を授かる方が珍しいようです。
私は15年前に潜るのを辞めましたが
祖父は102歳の今でも現役で33年間毎日潜っており私よりも元気ですよ。
レベルはもう直ぐ12になるそうです。
もしかしたらレベルには長寿になれる何かがあるのかも知れません。
結局は職業もスキルも何ひとつ得られなかったそうですが
私が迷宮で得たスキルで剣術の鎌鼬というものがあるのですが
それをを自力で会得して庭の藁人形に放っていましたから
もはや化け物だとしか言いようが無いですね。」
「凄い方なのですね。」
「はい。
そして風祭様はあの年齢で
既にその祖父と同じ域に達しておられます。
全く末恐ろしい方です。」
「はぁぁ凄いです。」
「ですから明日は安心して
風祭様に迷宮内を案内して頂いて下さい。」
気に入られたらブクマと
評価をよろしくお願い致します。




