第6話
第6話
この道をまた延々と逆戻りで歩いて帰らなければいけないのかと覚悟していたのだが
何故か5分程度歩いた時点で上りの階段にたどり着く事ができた。
最低でも40分。
疲れて脚が重いから歩みも遅くもっと時間がかかるはずなのだが
近いならそれに越したことはないと早々に思考を放棄して階段を上ることにした。
ようやく階段を上りきり外が見えると
スマホを取り出し時刻を確認する。
良かった。
転んだ時に画面が割れてなくて。
時刻は午前0時8分。
どうやら迷宮内で日をまたいでしまったようだ。
後、バットを迷宮の中に忘れてきたが
安物なので気にしないことにした。
そして、ふと視線をあげて監視所のほうを見ると
明かりが灯っており監視員が驚いたような顔をしてこちらを見ていた。
それに入った時にはあったロープが取り外されている。
知らなかったのだが
やはり営業時間外か監視所の休憩時間中に勝手に入ってしまったようだ。
監視員が建物から出てこちらに歩いてくる。
話したくないがここで逃げたら不審者になってしまう
素直にごめんなさいと謝って許してもらおう。
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
監視員が近づいてくると話しかけてきた。
「今夜は満月なのに今まで迷宮に潜っていたんですか?」
こいつ何してんだって顔で監視員が質問してきた。
「えっと、はい。ちょっと仕事で必要なものの採取を上司に命じられたもので。」
丁度いい、怒られたらあいつのせいにしてやろう。
「良く無事に出てこれましたね!!」
ホントに驚いたという顔で感心されてしまった。
「何があるんですか?」
「知らないで潜ってたんですか?」
「だから何がですか?」
「えっと、知らないなら教えてあげますから
今後は無茶をしないでくださいよ。
満月の夜は日没から日をまたぐ午前0時の間まで
迷宮内の通路やモンスターの配置なんかが変化するんですよ。
迷宮の中の通路がエメラルドグリーンに光ってませんでしたか?
普段の通路はアクアマリンのようなブルーに光っているんですよ。
だから知ってれば忘れていても
すぐに満月と気付くはずなんです。
入らないに越したことは無いんですが
中にいる時に通路が青と緑に明滅しだしたら
急いで出口を目指すか安全地帯になってる階層間にある階段へと避難してください。
帰り道が伸びたり他の階層につながったり
迷路になったりして帰ってこれなくなりますよ。
後は大物の魔物に出会ったなんて話も聞きますね。」
どうやら俺はとんでもない時に迷宮に潜っていたようだ。
確かに状況はかなりやばかった。
今生きているのが奇跡だし。
そして気付いた。
地図が嘘なんじゃなくて通路が変化していたからたどり着けなかったのだと、
そして、もし明日潜っていてもこの地図は全く役に立たなかったのだという事も。
そりゃ納入業者さんも場所を教えて地図までくれる訳だ
使おうとしても役に立たないんだから。
「本当に気を付けてくださいね」
「はい。すみませんでした。教えて頂きありがとうございます。」
監視員さんは念を押すようにそれだけ言うと監視所へと戻っていった。
出来れば、進むにつれ評価を頂ければ、
書き続ける自信になりますので、よろしくお願いいたします。