第46話
第46話
「お孫さんなんだが。
言いにくいから彼女と呼ばせてもらうけど
彼女の治療の事なんだが
ポーションをかけ続けてたんだろ。
表面だけでももう少し治ってないとおかしくないか?
何であんなに酷い状態のままだったのか気に為ってたんだ。」
「今回治療に使われたポーションの効果については
報告を受けてるから私が答えるわ。」
会う前から微量の敵意を向けられていたが
知らない所でこいつに敵意を向けられるような事をしたのだろうか?
こいつに会うの初めてだよな?
「あぁ、頼むよ。」
「忌々しい事だけど
私がヨーロッパで買わされたポーションの1/4が
半分に薄められたものだったのよ。」
「それは解ってて買ったのか?」
「そうよ。緊急事態だからと割り切ったわ。」
「わかった。
その表情からすると思い出すのも嫌そうだな。」
「ええそうよ。だから効き目が弱かったんだと思うわ。」
「次の質問だ。
彼女は事故で火傷を負った時に
何かの薬品を全身に浴びたんじゃないのか?」
「詳しくは説明せんがその通りじゃ。」
「火傷が治らなかったのが納得いかなかったんだよ。
表面の火傷だけなら他のポーションと同じで
かけるだけで治療できたんじゃないかと思うんだ。
だけど身体の内側に薬品がしみ込んでいて
目で見えない部分が重度の火傷になってたんなら納得がいく。」
上級鑑定で
身体の内側が焼けていたのは確認したからな。
「そうじゃ。
だから医者は延命措置も限界で打つ手がないと匙を投げたんじゃ。
わしはそれを責めたりはせんかった。
誰が見ても助かる見込みの無い状態じゃったからな。」
「という事はポーションを使えと指示したのは爺さんの発案なんだな。
普通に考えたら医者が迷宮なんて怪しい場所で発見された
ポーションを使おうなんて考えないだろうからな。
でも使ってみたら
なまじ効果を発揮したから現代医学そっちのけで
その後の治療行為の判断を鈍らせたんだろうさ。
俺は部外者だしあの時点でポーションの所有権は爺さんたちに移ってたから
悪いとは思ったが治療方針に口を挟まず
大人しく成り行きを見守らせて貰った。
効果を見たかったし実際治療に関しては素人だからな。」
それで結果として治らなかった訳なんだが。
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
「何故ランク3のポーションで治療出来なかった彼女が
四肢の欠損まで完治したかと言うと
俺が使ったポーションがランク2ポーションだったからなんだ。
それで何故貴重なポーションを使用してまで
助けたかと言うと。
ただの偽善だ。
自分の為。
自己満足。
勿論損得の勘定くらいはするが
基本俺は凡人だからその時その時の感情で動くし価値観もコロコロと変わるんだよ。
だからあの時はあの子が治らないのが許せなかった。
ただそれだけなんだよ。
それにあんな大金を貰っておいて
完治させる手段も持っているのに
ポーションの効果だけ確認して見捨ててたら
今後その時の事を思い出して自分が許せそうに無かったからな。
それにその場合。
外道以外の何者でも無いだろう?」
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
「それと言い訳みたいに聞こえるかも知れないが
治療のために口移しでポーションを飲ませた事なんだが
人工呼吸みたいなもので治療行為以外の他意は無かったと
代わりに謝っておいてくれないか。
あの時はあれが最良だと思ったんだ。
それで効果は爺さんたちが見た通りで
ランク2のポーション1本で怪我が全快して1か所の欠損を治療するみたいだな
俺は口に含んだだけだったが古傷が綺麗さっぱり無くなった。
それと付け加えるなら
俺の手元にポーションは1本も残って無いからな。
昨日売ったのが全部で
ランク2のポーションも2本しか持って無かった。
あと今朝方迷宮を確認してきたが
エリアが変化していてポーションが手に入らなくなっていたな。
またいつか変化すれば取れるようになるだろうけど。
今伝えられる事はこれくらいだな。
一気に言ったがこれで良いか?」
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
話せない事の大部分がスキルの事だからしょうがないのだが
よくこれだけの事を嘘を交えながら
本当の事の様に話せるものだ。
俺なら確実に騙されている。
どこまで信じているだろうか?
まあこんなものだろう。
更なる大金を押し付けられずにこれで関係を断てれば良し。
だが交渉人のスキルを手に入れて交渉に挑んだが
効果はどれ程あっただろう?
元々の俺の交渉術が低すぎて判断がつかない。
だが少し前の俺よりマシに思えるから良しとしよう。
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
「黙って聞いてれば貴方馬鹿じゃないの。」
「何で馬鹿なんだ。」
「ランク2のポーションって何処にも存在しないのよ。」
「未発見なんだからそうなんだろうな。」
「それを2本とも使ってしまうなんて。
一体何を考えてるの?」
「必要だったから使った。只それだけだが。」
「絶対に使わないわよ。
オークションにかけて更なる大金や名誉を得たり
自分の為に残しておくわよ。
ランク3の上なのよ。それも未発見の。
それを全部使ったですって本当に馬鹿じゃないの。
それにもう手に入らないとか何を考えてるの。」
「そうか?こんなタイミングでも無ければ使う機会は無いだろ。」
「同情?好奇心?罪悪感?貴方がその時どう考えたかは知らないけど。
先に対価も受け取らずに使うなんてどこの聖人君子よ。
ランク3ポーションの数倍、数十倍、数百倍以上の価値があるのよ。
しかも代金は要らないとか言いだすし。
もう信じられない。
偽善?
良いわよ私達は嬉しいわ
それで栞里ちゃんが助かったんだから。
助からないのに助かった。
私達にとっては奇跡なのよ。
貴方の事を見極めてやるって息巻いて帰ってきたのに。
ホントにこれじゃ私の方が馬鹿じゃない。もぉ・・・。」
「そんな事を俺に言われても困るんだが。」
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
「だから、風祭俊介様。
嫌な態度を取り申し訳ありませんでした反省しております。
そして姪の鷹宮栞里を救って頂き本当に有り難う御座いました。
心より感謝致します。」
「いいえどう致しまして。
それと気にして無いから大丈夫だ。」
【名前】鷹宮美月
【性別】女
【年齢】36
【感情】微敵意⇒普通⇒興味⇒良好⇒好感
【役職】鷹宮財閥ヨーロッパCEO
気に入られたらブクマと
評価をよろしくお願い致します。




