第10話
第10話
次に来たのは塔京最大の迷宮をおひざ元に抱え
日々の取引量が我が国最大という触れ込みの迷宮管理局志部谷支部。
日々の取引量が最大というのなら【炎龍の鱗(欠片)】も目立たないだろうと思い
持ち込むことにしてみた。
流石に戸夜嶋支部と比べると建物は倍ほど大きく
日々の取引量が最大というだけあって
五ヶ所ある買い取りカウンターには多くの行列が出来ている。
時間帯も夕方とあり取り分け人が多いのかも知れない。
並んでいる人達は主に5人から6人の集団で列を進んでいて
運動部のようなガタイの良い学生が多く見受けられる。
そして、中には社会人と思われる女性だけのグループや男女混合のグループの姿も見受けられた。
俺は比較的に列の少ない女性グループの後ろに並ぶことにしたのだが
どうやら俺くらいの年齢の中年男性が1人だけで並ぶのは珍しいのか
この人何というような視線を女性グループから感じた。
この列に並んでいるんだから
買い取り依頼に決まっているだろうと思いながらも
静かに並んで順番が来るのをひたすら待つ事にした。
恐らく学生は小遣い稼ぎ。
女性にしても有用なスキル持ちで
仲間を組めば危険もなく安全な副業という所なのだろう。
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次第に人もさばけて人数も減ってきて列は順調に進んでいく。
そして前の人たちと買い取り窓口とのやり取りも目に入り
次第に会話も聞こえてきだした。
窓口には素材/アイテム/魔道具を鑑定できる魔道具があるらしく
それを使用して確認しているようだ。
そして、集団で並んでいたのにも理由があったらしく
一緒に迷宮に潜ったグループが
その場で買い取り金額を分割して入金する為だったようだ。
と、いう事は先ほど騒いでいた隣の列の集団は
恐らく買い取り価格が不満だったのか
配当の分配で揉めていたかの何れかなのだろう。
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順番が回ってきた。
買い取り係はいかにもと言うような感じのおじさんで、
迷宮パスの提出を求められたので即提出。
そして、あらかじめリュックサックに移しておいた
【炎龍の鱗(欠片)】を取り出し窓口の鑑定の魔道具の上に載せた。
出したときにおじさんは俺の後ろを眺めていたが
俺以外には誰もいない。
1人で売りに来るのはそんなに不思議なのだろうか?
そして、魔道具を操作して表示されたであろう【炎龍の鱗(欠片)】の名前を見て
俺の顔と交互に見比べて驚いた顔をする。
でも、さすがはプロ。
これくらいの物なら時々持ち込まれるみたいで騒いだりしない。
そして、パソコンを操作した後に買い取り金額はこちらでよろしいでしょうかと
口にせずに電卓表示で俺だけに見えるようにしてくれた。
価格は¥2,000,000-
驚きのゼロ6個で200万円。
予想以上の価格で内心大喜び。
今の生活なら1年半は余裕で暮らせる金額。
【炎龍の爪】や【炎龍の鱗(小)】を売ったら
幾らになるだろうかという邪念を振り払い
それでお願いしますと返事をして
一部を現金で受け取り残りは迷宮パスに入金してもらった。
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そして、その日の業務を終えた迷宮管理局志部谷支部内では
8年ぶりに迷宮管理局に持ち込まれた【炎龍の鱗(欠片)】の話題で盛り上がっていた。
有望なダイバーグループが新たに誕生したのだとか。
ベテランのダイバーグループが炎龍を討伐したのだとか。
今、話題の自衛隊のダイバー組織が本格的な活動を始めたのだとか等々。
当然、個人情報保護法により誰が持ち込んだのかは
守秘義務契約に基づき担当者以外誰も知らない。
そして、実は冴えないおっさんが会社を辞める決心をして
今後の生活費の為に換金していったのだという事も知られていない。
出来れば、進むにつれ評価を頂ければ、
書き続ける自信になりますので、よろしくお願いいたします。




