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番外編 科学者は魔王と打者と人形に遭遇する3

複合氏の作品、「科学者は21世紀初頭に憧れる」https://ncode.syosetu.com/n5073bk/とのクロスです。

「ココカラダシテモラエナイデショウカ。ゴシュジンサマ」

 丁寧で無機質な声に、どこか恐怖を与える冷たいニッコリとした笑みの身長150センチに満たないメイドが、声をかけてくる。

またしても、急に現れた。

あの青い女とも黒人とも共通点を見出せない。

一体何が起きているのだろうか?

 バサ、と妹たちの手から片付けていた同人誌が乱雑に落ちた。

「殺さなきゃ。殺さなきゃ。お兄ちゃんに近づく害虫は。駆除駆除駆除駆除駆除駆除駆除駆除駆除駆除駆除駆除くじょくじょくじょくじょくじょくじょくじょくじょくじょくじょくじょくじょくじょくじょくじょくじょ」

 超高速で京ぽん型装置を操作する…………、ヤンデレモードが切れない?

あ、今まで一度も使った事がなかったんだ。

だから不具合に気づかなかった……。

 黒人にさえも殺意を向ける位だから、あのメイドは言うまでもない。

あれ? そういえばさっき、どこから対戦車ライフル持ってきたんだろ?

 すると妹たちは、上着やスカートの下から、銃器を取り出した。

ちょ、明らかにサイズが間違っている。

なんでミニスカートから銃剣を付けた状態のアサルトライフルとか出せるの?

 ……胸次郎の能力が転用されてる?

「死んで」

「ハシタナイデゴザイマス。ゴシュジンサマ――――――……ォォォオオオォォォ……」

するとメイドが、巨大なゴーレムに変化した。

だから何が一体どうなっている!

どうか科学をこれ以上無視しないでくれ!!!


死んで、とハイライトの消えた虚ろな瞳で妹たちは壊れたロボットの様に引き金を引き続ける。

ゴーレムには全く効果がないのに。

対物ライフルまで使ってもか……、装甲車以上の頑丈さだ。

 何人かの妹の銃の弾がなくなりだす。

弾倉交換で撃つのが幾分収まった時だった。

「……ォォォオオオオォォォ……」

ゆっくりと両腕を高く上げ、地面に叩き下ろした。

みんなその振動で転ぶ。私に至っては顔面から落ちた。ああ、100均の眼鏡が……。

 痛くてすぐ立ち上がれない私に、物凄い速度で金属片を踏み割る音が近づいてきた。

「ヨロシイデゴザイマスカ。ゴシュジンサマ」

あのメイドだ。

 立ち上がり、メイドの後ろをうかがうと、踏み壊された銃器が散乱していた。

このメイド、相当速いぞ。

「オキキシタイコトガゴザイマス――――――このキャプテン・レッドに我が同士! ルノール・クラウディアとニック・ワイズの行方をもし知っているのならば! ぜひとも教えて欲しい! 一刻も早い合流が必須なのだ!」

 今度は赤い特撮ヒーロー的な奴になった。

だから、どうなっているんだ……。


「説明しよう! 我が名はキャプテン・レッド! その正体は正義の心を持つ少年、鈴木均! 少年、鈴木均を拉致した女神に素肌に触れた人形の設定通りの姿を持つ能力を持たされた! その際二人と出会い、聖剣を抜ける勇者を探すがため、様々な世界を渡り歩いている! ルノール・クラウデウディアは青い髪を持つ女性、ニック・ワイズはその聖剣を背負う黒人ベースボーラーだ! もし見かけたのであれば! ぜひとも教えてほしい!!」

 あの二人か!

つまりこいつらは何度も時空移動している。

それでいきなり現れたのも理解できる。

でも目の前のコイツがメイドとゴーレムとヒーローになれるのは意味わからんが。


「しまった! 止め給え!」

ヒーローが何かに反応した。

おにいちゃん、と何も見えていない、見ようとしていない瞳で大きな鉈を妹の一人が振り下ろしてきた。

「レッド・ソード! この斬撃を受け止めても次々に殺意をキャプテン・レッドに向けてくるか! 傷つけたくはないが止む終えん! レッド・エレクトロニック!」

 妹たちが崩れ落ちる。スタンガンか。広範囲に効果がある特異な仕様の。

私は素早くこのヒーローを排除すべく京ぽんを手にした。

その時だった。

「君たちはメイドのアリムか! 破損した人工の心の、その衝動のまま集団で人を襲う、ロボメイドのアリムそのものだ!―――――コノスガタガ、アリムデゴザイマス。ゴシュジンサマ――――――我が同士、ルノールとニックから学びし事は! どこか! どこかに! 全うと言える心を持つ事!

たとえ人に作られしアイアンゴーレムであっても!―――――――……ォォォオオオォォォ……――――――今のがアイアンゴーレム! テレビゲームの中の召喚獣だが、正義なる心は持っていた!

人間である君たちも、どこかに! わずかでも! 正義の心を持つのだ! このキャプテン・レッドも偉そうには言えないが! それでも歩む価値はあるのだ!」

 思わず、操作の手が止まった。


「このような事を言ったのは二度目だが! このキャプテン・レッドと共に歩むことを! 約束してほしい!」

二度目?

まさか、イレミの所で言ったんじゃ?

あいつはあいつで逆ハーレムを作ってそうだし。

 だが、今はもう色々限界だ。

ここは退場してくれ。

……昔の私なら、何も感じなかったのだろうな。

京ぽんのボタンを押した。

空間が歪む……って部屋全体の空間が歪んでいく?

うわぁぁぁ、と私とヒーローの声と妹たちの黄色い声が入り混じってどこかに落ちていく。

それに聞き覚えのある声と、さっき聞いた野太い声も混ざってくる。あと、少年や青年と言える男たちの声も。


「うわぁぁぁ!」

「きゃぁぁぁ!」

「って、イレミ?」

「あら、緑太郎?」

「なあ、私の横にいるヒーロー的な奴、そっち行かなかった?」

「ねえ、あたしの横に黒人がいるんだけど。知らないかしら?」

「行ったのか。正直ちょっと考える事ができた」

「知ってるのね。正直少し思う所ができたわ」

そして、そのヒーローと黒人。

「同士よ! 無事か!」

「ヒトシ! そいつのところに行ってたのかよ」

やっぱり、仲間か。

「でよ、ここにも倉庫にあったようなモンが転がっているんだけどよ」

なんで私の秘蔵品がここにあるのだ。

ヤオイ系統のものもあるから、イレミの奴の物も混ざっているな。

二人して空間の操作を間違えて入り交ざったか。

「このキャプテン・レッドもこれらが置かれた倉庫に行った! ……まさか!」

山と積まれたオタグッズ。

それに似合わない呪詛が聞こえてくる。

「……ついとらん……」

「やはりだ! 同士ルノがこの下にいる!」

「マジか! そんなんばっかじゃねぇか!」

「ついとらん! 『吹き飛べ』」

突如として発生したグッズを吹き飛ばす暴風と共に、青い髪の女性が這い出てきた。

「一日に三度も這い出るハメになるとは! 毎度ながら本当についておらん!」

「お前、だからどんだけついてねぇんだよ」

「同士よ、よくぞ魔王をやれているな」

イレミの所でも床の下に転移したのだろうか……。


「さて、ヒトシ、ニック。状況は悪いぞ」

青い髪の女が、出てくるなりそう言った。

「女、おにいちゃんに近寄ってくる害虫がいる。殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ」

「男、姫に近寄る、害悪がいる。殺そう殺そう殺そう殺そう殺そう殺そう殺そう殺そう」

……ヤンデレモードがまだ切れていない!

でもってイレミ、お前の方もか!

「だっていままでヤンデレモードなんかやったことなかったし!」

やっぱり私と同じ状況かい!

「同士たちよ! 上を見るのだ!」

「このタイミングで来やがった」

「……三方と戦う事になるのか」

見ると、上の空間に物凄くあからさまに禍々しい渦巻く闇が存在していた。

 四巴の戦いですか?

最悪の戦いが幕を開けようとしていた。

どうなんだ、これ……。


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