◆079◆僕の勝利
リゼタは、僕にニッコリ微笑む。
それ、エジンにしてやって!
「私さ、女なのに冒険者でしょ? かわいげもないし。よく考えれば、こういう事もしていて、女がやるような事もやっているのよ! だったら文句ないでしょ! って言えるでしょう?」
うん。そうだね。僕もその意見には賛成だよ。
でもね。それ、女性にお願いしたらどうかな?
「僕は、先生には向かないよ。誰か他あたってよ」
「冷た~い! いいじゃん。ほらここならば、いつでもこれるし教えて貰えるでしょ!」
いつでも来る気なの?!
それ、大迷惑!
「僕は一人で黙々としたいから……」
「そう言わずに、教えてよ!」
はぁ……。どうやったら諦めてくれるんだ。
リゼタは、いつも思いつきで動く。やめてほしい!
そうだ!
「だったら手間賃くれる?」
「お前、金取るつもりかよ!」
「だって、僕の貴重な時間を割くんだよ? タダで教わりたいのなら他にいけばいいじゃん」
「じゃ、お昼おごるのは?」
「いや、それは結構!」
それじゃ、昼からずっと一緒って事になるじゃないか! 依頼だってきっと一緒になってしまう!」
「手ごわいわね……」
「だから僕じゃなくてもいいだろう?」
「わかったわ! 私が稽古つけてあげる!」
「どうやって!?」
リゼタの名案という感じで言った言葉に驚いた。
魔法は出来るだろうけど、剣は無理だとしてナイフ扱えるの?
「っぷ。必死だね」
イラーノさんが思わず笑ったらリゼタに睨まれた。ついでに、エジンも睨んでいた。
はぁ……。もう出てってくれないかな。裁縫が進まない!
「もう、取りあえず、雑貨屋に行こう。それ見て一式揃えて材料も買う気になったら考えてあげるよ」
「え? 本当?」
リゼタは嬉しそうだ。僕はうんと頷いた。
エジンが、ムッとしているが、反論があるなら言えよな!
きっと、最初から揃えるとなると、お金がかかるから諦めてくれる! 名案だ!
僕達は、雑貨屋に向かった。何故かイラーノさんもついて来た。話を聞いて興味が湧いたのだろうか?
お願いだから一緒に習うなんて言い出すなよ!
リゼタを断れなくなるから!
「……これ、全部必要?」
「あった方がいいよ。僕は一切貸し出しはしないからね」
「うーん……」
僕の狙い通りリゼタは、悩んでいる。
材料だってなければ買わなくてはならない。多分余った布なんて持っていないだろうからね。
「なるほど。クテュールって、結構賢いね。って、何を持っているの?」
「あ、これ? さっき作っていた裏の生地にしようかと思って」
「へえ。で、何を作っていたの?」
「ハンチング帽」
「あぁ。なるほど」
今回、髪を隠す物がなかったからあってもいいかなぁって、ふと思った。変更して帽子を作る事にした。黒系統の布を使っているから裏地は黒。
「やっぱり今回は諦めるかな……」
リゼタは、狙い通り諦めてくれた!




