◇058◇手慣れた二人
《飛ばした方用》
眷属がいるとわかりクテュールは、無事テイマーとして冒険者となった。その後父親とギルドマスターが知り合いだった事が判明し不信感を抱く。
また、父親から何かを預かっていないかと、怪しい冒険者の二人組が接触してきて、父親の死にも不信感を抱くクテュール。その二人に追われ、ジーンと共に崖へと逃げたが、その冒険者は崖まで追いかけて来たのだった――。
僕は立ち上がり、二人の方を向いた。
この人達、時間的にいってまっすぐ迷わず来たみたい。
「驚いたな。まさかと思ったがテイマーだったとはな」
そう言いつつ、二人は剣を抜いた!
「大人しくすれば、そいつは殺さないでいてやる」
赤茶髪の男がそう言った!
抵抗すれば、ジーンを殺すと言う!
どうすればいいんだ? 僕には、相手の強さがわからない。もしジーンより強ければ、ジーンは殺されるだろう。
でも、二人に対抗できるのはジーンだけ。
大人しく捕まれば、今は殺されないだろうけど、用済みになればわからない。どう見ても、普通の冒険者じゃない!
『やるか?』
「勝てそう? 勝てそうじゃなかったら逃げよう……」
「逃げる? どこへ逃げても追いかけるぜ」
僕が、ジーンに話した声が聞こえたらしく、藍色の髪の男がそう言った。
「……一体何が目的? 父さんからは何も貰ってないけど?」
「いや、預かっているはずだ! カギになるモノを!」
「カギ?」
「まあいい。お前が答えないならあの母親に聞くだけだ!」
母さんに手を出すって事?!
「させない! そんな事!」
彼らの言葉で、逃げる選択肢は消えた!
「ジーン、お願い!」
『了解!』
僕の合図で、ジーンは二人に飛びかかった!
それを二人はひょいと避けた! しかも、左右にそれぞれ分かれた!
まずい! 挟み撃ちだ!
今度は、二人が剣を構えてジーンに斬りかかって行く!
僕はただ、それをハラハラしながら見守るしかない。
あの男達は、強いと言うより手慣れている感じに見える。何でモンスターとの戦い慣れているの?
見た目、モンスター専門の剣士とかに見えないけど?
『ぎゃん!』
「ジーン!」
とうとうジーンが斬られた!
どうしたら……。相手が一人なら何とかなったかもしれないけど、このままだとジーンが殺される!
「ジーン! 逃げて!」
「逃がすかよ!」
『ぎゃん!』
どさ!
「ジーン!」
無情にも赤茶髪の男がジーンを切り裂いた! 倒れたジーンの傷口からは血がどくどくと流れ出していた!
う、うそだ! こんなの……。
「さて、一緒に来てもらおうか?」
藍色の髪の男が、僕をガシッと捕まえる。
「泣いているのかよ、お前……」
呆れた様に赤茶髪の男が言った。
僕がジーンを殺したようなものだ。逃がせばよかった!
預かったモノなんてなかったのに!
「本当に預かってないんだ……」
「いいから来い!」
僕は森へ引っ張られ、トボトボと歩く。
まだ僕は、恩返しどころかジーンにお礼すらしてなかったのに……。
もし、ジェスロさんが来た時に、ジーンが生きていたら手当してくれるだろうか?
モンスターだから無理かな?
――無理だよね?
どうせ僕も殺されるんだ! だったら一矢報いてやる!
僕は、立ち止まった。




