◆053◆狙われたクテュール
もしかしてこの人達が、僕を訪ねて来た冒険者とか?
父さんの知り合い?
一人は赤茶髪。もう一人は藍色の髪。格好は、二人共同じよな感じだ。黒の冒険者の服を着ている。剣を持っているけど、ロドリゴさんみたいに剣士の様な格好ではない。
「君、こんな所で山菜を採っていたら危ないよ。ゆっくりこっちへおいで」
男たちは、剣を構えそう言った。
そうだった! あの二人から見れば、ジーンはモンスターだった!
「ジーン、ごめん。逃げて……」
僕がボソッと言うと、ジーンは森の奥へ走り出す。
『そいつらは、後ろに忍び寄っていた。気を付けろ』
え?! 忍び寄っていた?
言われればそうだ。声が聞こえ振り向けば凄く近くに居た。音を立てずに僕に近づいていた? 何の為に?
「君、ドドイの息子だよな?」
僕は声を掛けられビクッとした。向けられた目が怖い。
母さんが言っていた冒険者だと思うけど、何かヤバいかもしれない!
「な、何か用?」
「お父さんから何か預かってないかな?」
「預かる?」
父さんから預かった物などない。って、何で五年も経ってそんな事言ってくるんだ?
「ない!」
僕は、キノコが入った袋を男たちに投げつけて走り出した。
「ジーン!」
叫べば、待機していたかジーンは直ぐに現れた!
「待て!」
男たちは、僕を追いかけて来た! 僕がジーンにまたがり掴まると、ジーンは全速力で森を駆け抜ける!
勿論、ジーンに追いつけるわけもなく、男たちは追いかけるのを諦めた。
あの男たちは、ジーンがいなくなった後も剣を鞘に納める事もなく、僕に話しかけてきていた。そうだ。だから違和感があったんだ!
ジーンはずっと走り続け、気が付けばキュイの寝床に到着していた!
『クテュール!』
「キュイ!」
僕は、ジーンから飛び降りるヒシッとキュイに抱き着いた。
『話は聞いたぞ。冒険者になれたのだろう? よかったな』
「うん。まあ。なれたのはいいんだけど、色々制約がついちゃって……」
『クテュール!』
「あ、リリン!」
振り向くとリリンが、ジャンプして僕の胸に飛び込んで来た。
「そうだ。怪我は大丈夫? ごめんね。取れって言われて従うしかなかったんだ」
『大丈夫よ。あれを付けたら、痺れもなくなって傷も塞がったみたいだし。あなたすごいのね。ちょっと見直したわ』
「それは、ありがとう」
『そうだった。リリンを助けてもらったんだったな。ありがとう』
僕は首を横に振った。
「僕のせいで襲われたんだし、無事でよかったです」
『そう言えば、さっきの奴らは何だったんだ?』
ジーンに問われるも僕にもわからない。
何かを探していたのは確かだ。もう少し詳しく聞いてから逃げればよかった!




