◇036◇楽しくない採取
僕は、冒険者ギルドを出て少ししてハッとする。
ナットスさんが来るまで待ってなきゃいけなかったんだった!
「ねえ、イラーノさんがいないよ。戻って呼んでこようよ」
ちょっとわざとらしいけど、僕は冒険者ギルドを指差す。
「いないんだったらいいだろう。さっさと行こうぜ」
「部屋に戻ったんでしょう? さあ、行きましょう」
おたくら冷たくないか?
「三人でも大丈夫だから。森の奥へ行かなければ襲われる事もないはずよ」
いや僕は、怖いから言ってるんじゃないんだけど。
仕方がない。リゼタは、言い出したら聞かないし早く終わらせて戻ろう。
門をくぐり、森へ向かう。
って、歩き?
「歩いて行くの?」
「お前、金ないって言っておいて何か乗り物で行きたいっていうのか?」
エジンに突っ込まれた!
確かにそうだけど、往復だけで二時間かかるけど……。
昼食はなしだな。
◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆
一時間後、無事に森に辿り着く。
「えっと、ビリビリ草とアマイ薬草だったわよね? いくつだったっけ?」
リゼタが聞くので、用紙を出して確認する。
「ビリビリ草が30個、アマイ薬草が50個、それとトゲムシもどき30センチ」
「トゲ……なんだって?」
驚いたようにリゼタは、用紙を覗き込む。エジンも一緒に覗き首を傾げる。
「聞いた事ないな」
「ないわね」
「え?! ないの? 何でそれでこれ、選んだの?」
「それに気付かなかったのよ! 二種類だけだと思って!」
「えー!!」
それマジですか?
どうするんだよ。
「キャンセル料もったいないから探すしかないだろうな」
「キャンセル料って……」
選んだのリゼタなんだけど?
「と、兎に角、その二つを採って帰りましょう」
「うん。僕もそうした方がいいと思う」
こうして僕は不安を抱えながら森に入った。
案の定、エジンは薬草の事が全然わからないらしく、どさくさに紛れてリゼタと二人で組んで薬草を摘んでいた。
僕がビリビリ草で、二人がアマイ薬草を摘む事にして、近場で探していた。
軍手をはめて薬草を摘む。
『戻って来たのか?』
「あ、ジーン!」
ジーンは、尻尾を振り近づいて来る。
「よくわかったね、僕が森に居るって」
『森は俺のテリトリーだからな』
「そうなんだ。でもごめんね。昨日言ったように暫くは無理なんだ。今日は薬草を摘みにきた……」
「おいお前、何やってるんだよ!」
驚いて振り向くと、二人が立っていた。
「僕が森に来たから会いに来てくれたみたい」
「会いにって、何遊んでるんだよ!」
「別に遊んでないし! ちゃんと終わったし!」
「はあ? 終わったならこっち手伝えよ! お前の依頼だろう?!」
本当になんで一々、突っかかってくるかなぁ。リゼタと一緒に薬草摘み出来てるんだから喜んでろよ!
「わかった。やるよ。後何個?」
「あと20個ほどだから10個お願いしていい?」
僕はリゼタに頷いた。
もうこれなら一人で森に来た方がよかった!




