◆019◆薬草を摘みながら
たぶん、矢が飛んでこなければ、エジンは大怪我をしていただろう。
なんで、ギルドマスターであるロドリゴさんが、ここにいたかはわからないけど、ジーンを何とかしなくてはいけない!
ジーンは、僕の眷属にはなっていない!
ステータスに眷属二体になっていたから、もう一体はジーンだと思っているんだろうけど、このまま街に行けばジーンが弾かれる。
エジンを襲っているし、眷属じゃないとバレれば殺される!
どうしたら……。
「あの! お願いが!」
前を歩くロドリゴさんに僕は声を掛けた。
「何だ? 見逃す気はない」
そう一言返って来ただけだった。
って、思いっきり疑われているんだけど!
何とかジーンを眷属にする時間をつくらないと!
「だから! リリンの怪我の手当てをする時間を五分でいいから下さい!」
「怪我だと?」
僕は、ロドリゴさんの言葉に頷く。
「エジンに斬られた傷を癒したいんです。街に行ってもモンスターは手当てしてくれないでしょう? そこら辺にある薬草で手当てする時間が欲しいです」
僕の言葉に、ロドリゴさんは僕の腕に大人しく抱かれているリリンを見た。
「いいだろう。五分ですませろ!」
僕は、薬草が生えている場所に行き屈んだ。
薬屋でも働ける様にと、薬草の知識は身に着けていた。だからどれが薬草かわかる。
リリンをそっと地面に置いた。何故かリリンは、ぐったりしている。斬られただけにしては、ぐったりだ。
斬られたけど血はそんなにでていない。まさかと思うけど、剣に毒が塗ってあったって事はないよね?
いやエジンならやりかねない!
「ジーン。何も言わず聞いて」
僕はボソッと呟く。
ぐったりしているリリンを心配してか、ぺろぺろとジーンがリリンをなめている。
僕は、薬草を摘みながら小声で話す。
「僕達は街に連れて行かれる。ジーンも。このままだとジーンが僕の眷属ではないとバレてしまう。そうしたら殺されるかもしれない! だから一時期でいいから僕のお友達になって欲しいんだ。お願いできる?」
そう話すと突然、ぺろんとほっぺをなめられた!
危うく驚いて、叫ぶところだった!
OKらしい。僕もそっと、ジーンの頬にチュッとした。ジーンの尻尾が大きく揺れる。
これでジーンは、何とかなった!
後はリリンだ。
僕は摘んだ薬草を結って行く。毒消し草もあったので、一応ねじ込んでおく。
それをリリンの傷口にぐるぐるとまいた。先っぽは、結った草の間に差し込んで留めた。
「お時間を頂いてありがとうございます」
僕はリリンを抱きかかえ、軽くお辞儀をする。
こうなったら低姿勢で行くしかない!
街からリリンとジーンを森に帰さないといけないからね!




