◇010◇足止め
はぁ……。
これは、リゼタのため息。何となく呆れているっぽい。
「とにかく街の中に入りましょう」
「あぁ。かわいそうになぁ、その兎! よく塗ったくったもんだ!」
どうやらリリンをただの兎だと思っている様子。青紫に塗った兎を連れて来たと思ったみたいだ。モンスターを本当に連れて来れるわけがないと思ったんだ。
リゼタがそういう態度だからエジンもそういう事かと思ったみたい。
考えもしなかったけど、もしリリンが無事ここを通り抜けてもそう捉えられる事もあるんだよね? いや、そう思うよね?
それに、ここをリリンが通れなくてモンスターだってバレても、僕がテイマーだって示せないとだめだよね?
じゃ、この作戦大失敗じゃない!?
も、戻ろう。色々厄介な事になる前に、一旦森に逃げよう!
ガシッ!
踵を返そうとした時に、エジンに腕を掴まれた!
僕がギョッとして彼を見ると、ニヤッとしている。
「どこへ行く気だ? それモンスターなんだよな? ギルドに連れて行ってやるよ!」
「いた!」
痛い程ギュッと腕を握られた!
「その手を離しなさい! かじるわよ!」
エジンが驚いて、手を離す。
エジンなら襲っても……いや、そこの門番にリリンが殺されるかも!
「心配してくれてありがとう。リリン。でもかじったらダメだから」
「お前やめろよ。気持ち悪い!」
僕がリリンに話しかけると、嫌そうにエジンが言った。
それには、僕もムッとする。
「気持ち悪いって何さ! それより僕に何かいう事ないの!」
「ふん。ないね!」
何それ! 謝るでも言い訳をするでもないって! どういうつもりなんだ!
「ほら、喧嘩していないで行くわよ!」
たぶん事情を知らないリゼタは、僕達に振り向いて言った。
エジンに対抗する為に冒険者になる予定だったのにどうしよう。テイマーじゃなきゃ意味がないよ。
よし、隙を見て森へ逃げよう。
ドキドキしながら門へ向かう。
二人が門をくぐったら猛ダッシュだ!
「ちょっと待て!」
だが、二人が門をくぐる前に門番に止められた!
「それは何だ?」
門番が、僕が抱きかかえているリリンを見て言った。
あぁ、二人はリリンが話すまで気づかなかったのに、門番は気づいちゃったよ! 流石だ。
「モンスターだってよ。テイマーに目覚めたとかふざけた事ぬかしやがる」
「ほ、本当にモンスターだってば!」
「じゃ、街の中に入ってみれよ!」
モンスターじゃないと思っているエジンは、睨みながら言う。弾かれずに入れるはずだと言いたいのだろう。
でもリリンが話したのを聞いているはずなのに、それはどう思っているんだろう? 兎は鳴かないだろう。
「待て! モンスターかもしれないものは、入れられない。君は、まだテイマーではないんだろう?」
門番に聞かれ僕は頷いた。
「では、確認の為、鑑定師を呼んでくるので、ここで待つように!」
「あぁ、知らねぇからな。大事にしちゃってよ」
「やめなさいよ。エジン」
やっぱり二人は、僕が嘘をついて冒険者になろうとしていると思っている。いや、あってはいるんだけど、リリンは本物のモンスターなんだけどなぁ……。
でも、上手くいけばテイマーとして認めてもらえるかもしれない!
で、テイマーじゃなかったらリリンを連れて森へ逃げよう。




