第4章22話 新しい仲間の装備揃え
昨夜は結局アデルさんを抱えて部屋に帰った。テリッチさんとマネさんは、かろうじて自力で部屋に帰ったので似たようなものだ。
「昨夜はまた迷惑を掛けたな。済まなかった」
「何を言ってるんですか。世話に成りっぱなしなのは僕の方ですから」
露天風呂に並んで浸かっていると心が落ち着く。
ゆっくりとしたいが、今日はセリちゃんにお詣りの作法を教えて、マネさんにも聖樹域が見えるようにする為、お詣りに付き合ってもらう事になっている。
風呂を適度に切り上げて食堂に行った。
テリッチさん、マネさん、セリちゃんは朝食を終えるところだった。
「遅くなって済まなかった」
アデルさんが謝っている。
我々はお茶だけ飲んで鎮樹に行くことにした。
マネさんが見えなかった大木が存在するのに、びっくりしている。
二人に『二礼二拍一礼』を説明してお詣りを済まし、皆で次に行こうとすると山の精霊に呼び止められた。
「ミノル、一寸待て。美人を連れて来て黙って行くのか」
「おはよう御座います、精霊様。こちらはマネさんと言い、私がとても世話になっている方す」
「そうか、もっと近くに寄れ」
マネさんがオドオドしながら、我々と精霊様の近くに行った。
「うん、美人じゃのう。マネと言ったか。ミノルの手伝いをしているのだな」
「は、はい」
「これからもミノルを手伝い、私を守る覚悟は有るかな?」
「命に替えましても!」
「そうかそうか。アデルに負けず美しく意思も強い、だが力が足らんな。少し足してやろう。また、顔を見せに来るが良い」
精霊様は言いたいことを言うと消えてしまった。
我々は一礼して外に出た。
「マネさんプレート見て」
マネさんがプレートを見て驚いている。全ての魔法が100で精霊魔法も貰っていた。
「マネさんツいてますね」
「良かったなマネ! 私も最初はミノルに付いてきて、同じように力を足して貰ったものだ」
アデルさんも喜んでいる。
「なんと礼を言えば良いのか。だが先程精霊様に言ったのは本心だぞ。坊ちゃんを守る為なら命も身体も捨てる覚悟だ。命は坊ちゃんに助けて貰ったものだし、身体は汚れ物で価値は無いが、儂にはこんな物しか無いのだ。許せ」
「何を言ってるんですか。十分過ぎるくらい価値が有りますので、簡単に捨てないで下さい。ところで、そろそろ坊ちゃんは止めませんか。ミノルで十分ですから。アデルさんなんて親しい人の前では、お前ですから」
「そうは言ってもな……」
「公式の場以外ではミノルと呼んでやれ。このままではミノルがやりづらくて、かなわんだろう」
「……わかった」
我々は聖樹詣りを済ましてマイヤー商会に行った。
「ミノルさん、昨日は大活躍でしたね。パトリックと窓から見てましたよ」
「エー、危ないですよ。それにミアさんの活躍を見ていたんでしょう?」
「まあ、そう父をからかわないで下さいよ。テリッチさんとマネさんとセリちゃんの服は用意してあります」
ハリーさんは少し照れくさそうだが、とてもご機嫌だ。
「テリッチさんとセリちゃんはローブ派ですね」
2人が頷くと奥から大量のローブを持って来た。
「防御力増加・対魔法防御力増加・回避能力増加・自動防御・体温自動調節・疲労軽減・自動浄化、ですね。体温自動調節で夏も涼しいですよ。
色は黒、グレー、紫の3種類です1人10着ずつ好きなのを選んで下さい」
「マネさんはアデルさんと同じで良いです?」
「良いも何も、そんな高価な服を……儂にはもったいないぞ」
そう言って俺を見た。
「遠慮ばかりしないで、受け取って下さいよ。仕事でも必要になりますから」
なんとか全員ブーツも含め一揃え手に入れ、セリちゃんとテリッチさんはダガーも貰った。
「マネさんさんは剣も強いから、これも持って行って下さい」
マネさんはハリーさんに中剣と短剣にダガーを貰った。
「ミノルさんには世話になってますし、ミアとは情報隊仲間です。これからミアはマネさんに色々と御迷惑を掛けると思いますので、父親からの挨拶代わりと思って下さい」
親馬鹿丸出しのハリーさんだった。
「ミアさんから昨夜の話は聞きました?」
「いえ、機密事項とのことで、何も聞いてません」
「昨夜、僕達は7艘の大型船を沈めましたから、北の方の魔人国との交易は壊滅状態と思います。大型船を何とか手に入れると最大手になれますよ」
パトリックさんの眼がキラリと光った。
我々はハリーさんとパトリックさんに礼を言って宿に帰って来た。
俺とアデルさんは朝御飯、3人は服を持って自分達の部屋に飛んで行った。
「女の人は服が嬉しいんですね」
「私も初めて貰った時は、こんなに良い服を着て良いのか悩んだものだ。普通の人には縁がない物だからな」
アデルさんはエールを注文した。
「大丈夫だ、後は何も用は無いだろう?」
「聖樹の治療くらいですか」
「なら良いではないか」
お姉さんがエールを持って来た。
そろそろ三人が着替えてきて、ファッションショーを始める頃だ。
今日も9月の末というのに暑い日が続く。聖樹の治療だけでも疲れそうで嫌だなと思った。




