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第4章21話 『北の国』消滅


「後1時間くらいで襲撃地から全員戻ってくると思うんですよね」


「集めておいて片付けるのか?」


 アデルさんが聞いて来た。


「また攻められたら大変ですよ、街の人達に死人が出ます。ツキが有るうちに動かないと」


「そうですね。私は賛成です」


 テリッチさんが言った。


「セリちゃんは来なくて良いよ」


「私は参加します! 誰かがやらないと仲間が死んでしまいますから」


 結局、全員参加になった。


「僕だけで出来るのですが、全員でやった方が時間がかからないと思うのです。町全体を流状化してから、瘴気予防に土化するつもりです。他所の領ですから派手な音や光は避けませんと」


「相手にも脅しになって良いと思うぞ。早く終わらせて逃げよう」


 マネさんが応えた。


「まだ時間も早いですし、早く終わらせて気持ち良く飲まないと。このまま、ヤラレっぱなしじゃ気が済みません!」


「うちの国の残党が多過ぎで腹が立って気が済まないです。私だけでもやるつもりでした!」


 ミアさんとサキバさんが怒っている。


「そう怒らないで。僕とアデルさんで広範囲の流状化を掛けますから、皆さんも重なって構いませんのでどんどん流状化していって下さい」


「そうだな、流状化は時間のかかる魔法だから、その手は利くな」


 マネさんが追認してくれるが、話し方のせいかアデルさんが2人いるみたいな感じがする。


「そろそろ行きますか」


 アデルさんとテリッチさん、マネさんが残りのエールを一気に飲み干して立ち上がった。


 コロン隊長とトレル隊長が『北の国』近くまで連れて行ってくれた。

 我々は町から少し離れた丘の中腹に着いた。目の前にある中くらいの港町が『北の国』だ。

 町は新しい頑丈な壁に囲まれ、街道側と港側に門が有るようだ。

 警戒で見ると町の中は赤い点で溢れている。


「凄い数ですね」


「凄いな。やりがいがある」


 アデルさんが町に詰め込まれた敵の数に驚いている。


「港の外に3隻大型船がいますので、町の次に片付けましょう」


「町の上までワープして、上空から流状化した方が効率的ですね」


 テリッチさんのプランに皆、賛成した。ワープしようとした時、また赤い点が急に増えた。攻撃隊がまだ帰りきっていないのかもしれない。


「あと10分くらい待ちます?」


「いや、すぐやる方が良いぞ。気が付かれると面倒だ」


「ミノル、私もそう思う」


 アデルさんとマネさん達、軍人の意見に従うことにした。


「同時念話を開きましたので、連絡を取りながら攻撃しましょう」


 我々は一気にワープで飛び、町の上空に出現し流状化を放った。

 アイラス教団の教会の尖塔が斜めに倒れ出し、庁舎と思われる大きめの建物もゆっくりと溶けるように崩れてゆく。

 構わずに皆で流状化を重ねて放ってゆく。


『見づらいから明るくするぞ』


 アデルさんが精霊魔法で町を明るくした。町に有る物も人も黒っぽく溶けてゆく。町の壁に囲まれた泥のプールに見える。

 突然、数百人の軍勢がワープで町の中に出現したが、流状化の集中攻撃を受け泥に沈むように消えてゆく。


『船の始末に行きます』


 ミアさんが言って来た。


『私も行きます』


 セリちゃんがミアさんに続いて港の外に飛んだ。


 流状化の泥状の中に警戒の赤い点が4つ程見える。


『自動再生能力を持った魔人軍の幹部ですよ』


 サキバさんがウンザリしながら、流状化を追加で放った。

 俺は港に行き係留されている4艘の大型船と桟橋を含む港湾施設全部を流状化した。


『ミノル、土化を始めるぞ』


 アデルさんが言って来た。


『お願いします』


 俺も港湾施設を土化し始めた。大型船7艘を沈めたので、魔人との交易も少なくなるだろう。ヘンドリックス辺境伯の青い顔が目に浮かぶ。

 セリちゃんとミアさんが帰って、来て町の土化に参加しだした。

 俺が戻ると土化は、ほぼ終わっていた。壁に囲まれた平地だった。マネさんが浄化を始めた。アデルさんとテリッチさんも浄化をし出す。


『悪霊にでもなられると面倒だからな』


 マネさんが教えてくれた。頼りになる人だ。皆で浄化を終えたので、俺はついでに祝福をしておいた。アデルさんとテリッチさんも祝福をする。

 セリちゃんはまだ精霊魔法の使い方が慣れていないのか、ただ見ていた。


『終わりました。帰りましょう』


 皆で宿に帰った。

 支配人さんに言って、テリッチさんと同じような部屋、二部屋を年間契約してマネさんとセリちゃんに渡した。


「坊ちゃん、良いのか? こんな事まで。儂には立派過ぎだ。一番小さい部屋で良いぞ」


 セリちゃんもモジモジしている。


「二人とも受け取っておけ。ミノルからの感謝だ。それに給料日は来月だぞ」


 アデルさんが言ってくれた。


「ここは森の精霊の樹と聖樹がある拠点ですから、いて欲しいのです。飲食も全て僕が払いますので遠慮なく」


 テラスで魔術師の慰労会となった。

 アデルさんマネさんとテリッチさんで飲みまくっている。アデルさんも仲良しが出来て嬉しそうだ。

 相当酔ったアデルさんとマネさんは騎士団の時の話や子供の時の話までしている。

 サキバさんミアさんセリちゃんが盛り上がっている。テリッチさんは人との話が楽しくて仕方ないみたいだ。

 隊長さん達もやって来て、大宴会となった。

 皆の笑顔を見ていると勝って良かったと、つくづく思えてきた。

 大好きな人達の悲しい顔など見たくない。


 明日からは平穏な日常が戻りますように。

 心の中で柏手を打ってしまった。


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