第4章19話 夜襲では無く昼襲だった
「だから11時30分からでも早いって言ったのに」
俺、アデルさん、サキバさん、テリッチさん、トメラさん、ミアさんは館の屋根に並んで座って海老フライとエールを持って座っている。
昨夜の会議で昼からの攻撃で計画を立てた時、もしもの対策で11時からの待機で押し切られたのだ。
「文句を言っても仕方無いでは無いか。戦争は待つのも仕事だ」
アデルさんはテリッチさんと、海老フライとエールを楽しんでいる。
「サキバさん、新型海老フライの方は無かったんですか?」
「店長が新型海老フライは数が少ないからダメですって」
我々、魔法使い組は待機する屋根も決まって俺の指示で攻撃開始で楽なのだが、地上組はする事が多いらしい。
「ミノル様、敵は何人くらいなのですか」
テリッチさんが聞いて来た。
「様は止めましょうよ。ミノルで十分です。僕は1000人以上を考えてます。昨夜までに90人くらい潜入者を捕らえてますから」
「範囲で雷撃で良いのですね」
「雷神連射出来る人は雷神でも構わないです。家に火が付いたら凍らせて下さい」
ミアさんは戦いが初めてなので緊張気味だ。マイヤー商会の在庫で全ての魔法を90台にして来ている。
「坊ちゃん手伝うぞ」
マネさんとセリちゃんが現れた。
「助かります。でも予想数1000人以上ですよ」
「何人でも構わん」
セリちゃんがマネさんの隣で頷いている。
「セリちゃん、おいで」
俺はセリちゃんの魔力を増やした。1.5倍くらい増えた。セリちゃんが驚いている。
「マネさんも」
マネさんも1.3倍くらいになった。
「凄いな! 済まんな、坊ちゃん」
「僕が指示するまで撃たないで下さい。後は好きなように。家に火が付いたら凍らせて下さい」
「マネ。久し振りだな」
「おお、久しいのう」
「アデルさん、マネさんと知り合い?」
「知り合いも何も、こいつ元は騎士団員だ。ピーター隊長とケンカして辞めおった」
「そうだったんですか。ピーター隊長はもう居ませんから。ドロンさんが隊長です」
「それは凄いな。ドロンは良い。あいつは騎士だ」
「皆さん。セリちゃんです。良い娘なので宜しく」
セリちゃんは帽子を脱いで頭を下げた。
「良い娘だな。気に入ったぞ」
アデルさんがセリちゃんを気に入ったようだ。
「2人は僕と。相手の親分を僕がやりますから、その周りをお願いします」
「了解した」
「この8人全員で話せる念話を開きますので、連絡を取りあって攻撃して下さい。10分前ですので配置にお願いします」
全員が散開して個々の守備位置の屋根につく。
面倒なので作戦中だけ、俺と隊長達の念話を開いた。
「ドロン騎士団隊長、ジャン警備隊隊長、コロン騎士団情報隊長、トレル警備隊情報隊長、我々が出来るだけ削りますので、後お願いします」
「「「「了解しました」」」」
昼丁度に敵が大通りに現れた。100人くらいいる。少し間をあけて大軍が現れる。全員何時もの黒のローブだ。まだ親分が来ない。同じくらいの大軍と派手な杖を持ったのが現れた。
俺は一気に上昇して、雷神を撃ちながら言った。
「攻撃開始!」
俺が飛ぶのを見て既に全員、空中に飛び上がっていた。雷神と雷撃の連射が始まった。
俺は親分と思った奴に雷神を連射する。
「ズドドーン!」
強い光と轟音に周囲の動きが止まっているように感じる。お構い無しに雷神を撃ち続けた。
マネさんとセリちゃんがその周りを雷撃で撃ちまくって、倒している。
親分は防戦一方になりバリアーを張った。
俺は構わずに雷神を連射するとセリちゃんとマネさんまで親分に雷撃を撃ち始める。俺が3連射の雷神を撃ったところでバリアーが壊れた。その瞬間にマネさんとセリちゃんの雷撃が当たりバリアーを張り直す余裕が無くなった時、俺の雷神が3発当たった。敵は後ろにバッタリ倒れた。
敵は既に半数を切っている。我々3人は次に強そうな敵2人組に集中攻撃を開始した。
「既に勝ち戦だ! 一気に行くぞ!」
アデルさんが気の早い勝ち宣言をし、凄い勢いで残りを倒し出した。
「弓部隊攻撃開始!」
ドロン騎士団隊長の命令で二階や三階に隠れていた弓部隊が攻撃を開始した。
冒険者ギルドのアーチャー達も弓を撃ち始めた。
我々三人は敵二人に20発近く撃って倒した。警戒で見ると敵は、まばらになり魔法攻撃が効率悪くなっている。何と裏通りに敵がいない。
「敵の作戦ミスだ!裏通りに敵はいない。総攻撃に移って下さい!」
路上の敵から隠れていた騎士団と警備隊が一気に切りかかり、冒険者ギルドからも50人以上飛び出してきた。
敵は総崩れとなった。
「攻撃を緩めないで、魔法を使わせないで!」
俺はファイヤーボールが当たった店舗の消火をする。
その後10分くらいで勝負がついた。
俺は倒した2人組の所に行った。まだ生きている。魔力壁を破壊し警備隊に任せへん親分を見に行った。
40歳代の男で、いかにも魔導士のスタイルをしている。攻撃のチャンスが無かったのが、この人の敗因だ。
首に緑色の石が付いたネックレスを付けている。魔法用の装備だ。俺が見ていると近くの騎士団員がネックレスと派手な杖を取って俺に渡した。
「マネさん、これ」
側にいたマネさんにネックレスをあげた。
「坊ちゃん、良いのか? こんな高価なもの。儂には勿体ないぞ」
「良いんですよ。今日は助けてもらいました」
「セリちゃんは、これ」
派手な杖をあげた。
「そんな……私には良い物過ぎます」
「二人とも貰っておけ。ミノルの感謝だ」
アデルさんが笑って言った。
二人は口々に礼を言って、しげしげと貰った物を見ている。
「この男、見覚えが有る。王宮魔導士の2番目か3番目だったと思った。御屋形様の付き添いで王宮に行った時に見たぞ」
アデルさんが男を見て言う。
「サキバさん、あっちの女の二人は親戚?」
「はい、こっちに逃げていたんですね。ミノルさんが潰した連中の残りが沢山居ました」
魔王の敵と王が手を結んだなら面倒になる。早めに何とかしないと、と思った。




