第4章16話 鎮樹様
「遅くなって申し訳ありません」
我々がマイヤー商会の事務所に着くと、ハリーさん、パトリックさん、ミアさんが待っていた。
「魔王様の王宮に行ってられたそうで」
ハリーさんが真剣な顔をしている。
「はい、逃げそびれまして。その変わりラルドさんと仲良くなりました」
俺が魔王さんを名前で呼ぶと、ハリーさんは暫く黙ってしまった。
「……ミノルさん、実は私達3人は魔人なのです……」
「知ってますよ。何時言って貰えるか待っていました」
「知ってたのですか……」
「だいぶ前から知ってますよ。叔父さんも何年も前から知っていて、何故言って来ないのか不思議だと先日言ってましたよ」
「そうでしたか……」
「私が司令になった時、部下からも言って来ましたので面倒だから全員分、正規書類にしてあります。ミアさんのが少し複雑になってたので、パトリックさんと同じように、ホフマブルグで生まれたことにしましたけど」
「有り難う御座います。私が若い頃ホフマブルグに来て商売を始めた時、営業許可を引退する魔人から買ったのが始まりでした。
当時は当たり前のように行われていたのですが、前の宰相の時から駄目になり商売しているから人族と勝手に決め付けられまして……我々は魔人と言う訳にもいかず今に至りました」
「ミアさんは魔人の国生まれなんですか?」
「ミアはホフマブルグで生まれたのですが、一度魔国人にしないと登録させないとか嫌がらせをされ、あんな密入国みたいな証明書類になってしまって……ミアは他で仕事をしたくても出来ない状態でした」
「ミアさん、他の仕事をしたいのですか?」
「はい、ここだけの人生ではつまらないです」
ミアさん、今日は茶褐色の髪の毛だな。これが元の色かもしれない。綺麗な人だけど服や化粧とかで印象が変わる人だ。
「ミアさん警備隊の情報隊に入りません?」
「嬉しいですけど、良いのですか? 私なんかで」
トレル警備隊情報隊長を呼ぶとすぐ来たので事情を説明する。
「是非とも警備隊の情報隊に来てください! コロンには渡しません!」
「じゃ決まりで良いですね?」
ハリーさんが泣きながら頷き、ミアさんは大喜びして、パトリックさんはニコニコしている。俺はミアさんの魔力を増やして任務が遂行し易くした。
「では、ミアさんを今から警備隊情報隊員として任命します。トレル隊長は直ちに書類を整え任命書類を発行のこと」
トレル隊長がゴキゲンでミアさんを連れて警備隊本部に行った。
サキバさんが帰って来たので事情を説明すると、とても喜んでくれた。
「トメラの獲物は売れたんですか?」
サキバさんが聞く。
「はい、大きな獲物で傷も無かったので高くて2億7000万デルくらいです。すでに海老フライ屋の3件隣の店で開店準備中ですよ」
パトリックさんが話しながら俺に大型マジックバックを新品に替えて返してくれた。
「サキバさん、お父さんに僕とアデルさんからと言って、新型海老フライとカレーを少し多めに届けて貰えます?」
「父が喜びます!」
パトリックさんがすぐに用意を始めた。
「パトリックさんスミマセン僕の勝手で、ラルドさんが来たそうだったので」
「いえ、こちらこそ色々申し訳有りません。父もあのように喜んでおります」
ハリーさんは下を向いて両手で顔を覆い、まだ泣いていた。
俺とアデルさんは宿に帰って風呂に入ることにした。
アデルさんに怒られながら身体をマジメに洗い、二人で湯に浸かる。
「気持ち良いですね。朝から色々有り過ぎました」
「そうだな。洗っていてホコリだらけだった」
「空中に爆裂出したりするからですよ」
「それはミノルだけ良い思いをしようとするからだ」
二人で少しジャレて残念ながら早い夕食を食べてから、聖樹の治療をすることにした。
食堂に行きテラスに向かうと、テリッチさんが大きい箱を抱えてヨチヨチ歩いているのが見えた。
食事を後回しにして手伝いに行く。
「ポーションですか? 手伝いますよ」
「お願いします、もう二箱有るもので。それは聖樹に運んでください、次のが山の精霊の樹です」
「アデルさん一緒に行って運んであげてください。僕は聖樹にこれ置いて、山の精霊に行きますから」
「うん、そうする」
俺が聖樹に箱を持って行くと既に二箱運ばれていた、ポーションと聖水のようだ。凄く重い箱なのに。
聖樹のポーションは既に新しいものに替えてあり、聖水も足してある。
聖樹の根は残り7センチくらいにまで伸びている。ポーションの威力は凄いものだ。
山の精霊に行くとテリッチさんとアデルさんが箱を持ってワープして来た。
「ポーションと聖水です。明日聖水の追加をしなければ」
「テリッチさん、無理をしては駄目ですよ。普通の身体になったばかりなんですから」
「大丈夫です。呪われたまま一人でやっていた時に比べれば、楽ですしはかどりますし」
「聖樹を見ましたが、ポーションの力は凄いですね。後7センチくらいで驚きました」
「それは凄いな。後3日もあれば繋がるな」
アデルさんも驚いている。
「問題は、この山の精霊の樹なんです。とても危ない状態に近づいているような気がして、ポーションを作って来たのです」
「鎮樹様は危ないか……」
「鎮樹ですか?」
「スミマセン。僕が勝手に呼んでいる樹の名前です。日本では、山の精霊とか森の精霊を詣る為に『鎮守』という社を作っておくので、もじって『鎮樹』と勝手に呼んでいるんですよ」
「それ良いですね。私も鎮樹様と呼ばせて貰います」
「良いな。私もそうしよう」
我々は三人で鎮樹様を見上げていた。




