第4章11話 聖樹の真相
朝に聖樹をお詣りするのをサボると、お詣り出来なくなりそうな日ができそうな状況なので無理でも早起きしてお詣りする事にした。
「少し眠いな、早く襲撃が終わってくれないと聖樹の治療も進まん」
「朝ご飯の前にチョット付き合って貰えません?」
「良いに決まっておる。一緒に行くぞ」
アデルさんと鍛冶屋さんに行った。
「兄さんか、今日は早いな」
「ドタバタしていて朝しか時間が無いのですよ」
「兄さんなら、何時でも良いぞ」
「今日は剣を打ってもらいたくて」
「良いぞ。誰のだ?」
「アデルさん、剣を全部出して」
「わ、私のか? 勿体ないことをするな!」
「馬鹿言ってないで早く」
アデルさんはブツブツ言いながら剣を出した。
剣鍛冶さんは剣を手に取って見ている。
奥に剣を取りに行き、大量の剣を持って帰ってきた。
「まず、これだ」
アデルさんが手に取って軽く振っている。
「素晴らしい剣だ! バランスも良いし軽い!」
鍛冶さんは次々と剣を試させる。
勧められた剣の中から3本3種類の剣が選ばれた。
「この3本か、大体思った通りだ。どうする?」
「ミスリルで打ってくれます?」
「やはりな、言うと思った。奥さんの剣だからな」
「そうなんですよ、お願いします」
アデルさんが俺の足を踏みつけてくる。
「ミスリルを掘るだけで3ヶ月はかかる。行くだけで2週間の距離だ」
「鍛冶さんワープ使えないの?」
「使えん。使っても魔力が無い」
「両手出して」
鍛冶さんの魔力は通常の人の半分も無かった。魔力を送り出してみるとどんどん入ってゆく。精霊の守護主になると、多く増やせるのかもしれない。
「凄いな。こんなに増えるのか」
「4倍くらいですか。王都まで3往復くらい軽いですよ」
弓鍛冶さんもやはり同じくらいだ。送り込んでみると剣鍛冶さんと同じくらいになった。
「済まんな、兄さん」
「これで午前は掘って、午後はここで仕事とか出来るでしょう」
「ああ、早く作れる」
「騎士団の人達にも宣伝しておきますよ」
「もう、デカい髭の騎士が夜に来た。リリに儂等が兄さんが連れて来た鍛冶と聞いたと言って来てた」
「何か買った?」
「今日、金を持って来る」
ドロンさんらしく売春宿から聞いたのか。
我々は礼を言って宿に帰った。
食堂のテラスに座り何気なく景色を見ると、村はずれの宿に近い所に人が立つている。白っぽい灰色のローブを着た白髪の女性だ。
「ついに現れた。アデルさん行こう」
アデルさんは状況を理解していないようだ。俺がテラスから飛ぶと後ろを付いて来た。
女性の前に降りると、白髪だが中年前の顔をして黒いような色のメダルを首に付けていることが分かった。
「やっと会えましたね」
「もう身体が動かなかったのですが、先日の地震以来少し回復したので来ました」
「動けますか?」
「もう、無理のようです」
「誰なのだ?」
アデルさんが聞いた。
「あの聖樹の精霊の守護者か守護人だと思います」
「私は守護人のテリッチと申します、精霊の守護主様」
アデルさんが驚いている。
「動けないなら立ったまま、その呪いを解きます。よろしいですね」
「はい、是非とも」
「呪われているのか?」
「はい、僕にはそう見えます。一緒に精霊魔法の浄化を」
アデルさんが頷いた。二人でテリッチさんに浄化を始めると青い光と光の粒がテリッチさんを包み、光の粒が渦巻きだす。
5分くらいその状態が続いた時テリッチさんの身体から黒っぽい紫色の煙りのようなものが出て彼女の頭の上で渦巻きだした。
テリッチさんの身体からどんどん黒紫の濃い煙りが出て来ている。
2分くらいで全て出きった。更に1分くらいで頭の上の渦巻き丸く固まった黒紫色のものが消滅した。
アデルさんが解毒と治療をテリッチさんにかけて終わった。
俺がテリッチさんの手を取りで魔力を送り出すと彼女の顔色が良くなり始めた。ついでに魔力を増やしてあげる。通常の魔術師程度だったのを2倍くらいに増やした。
我々はテラスにワープした。
お茶と朝食、テリッチさんには、お姉さんオススメのエルフ風の卵粥にした。
「本当に有り難う御座います。こんなに身体が楽なのは200年ぶりでしょうか」
「あんな凄いのを身体に入れて200年か、苦しかったであろう」
「魔法で隅に閉じこめておりました。聖樹を生かす為ポーションを毎日作らねばならなかったので、除去する力も無く」
「200年前、何が起きたのです?」
「地脈に先程の呪いを流されたのです。クレマドルフの聖樹に入れられ、『大いなる森』の森の精霊様が浄化を試みたのですが負けてしまいました。
その後ホフマブルグの館の森の聖樹、忘れられた森の聖樹と枯れて、最後にマインズドルフの聖樹となりました。
私が根を断ち切り呪いからはほぼ逃れたのですが、私の決断が遅れたので聖樹が少量の呪いを受けてしまいましたので、私の身体に吸い取ったので御座います。私の失態です」
「テリッチさんの失態では無いですよ。取りあえずメダルをどうにかしましょう」
俺はテリッチさんのメダルに触れ、心で『精霊様、このメダルに力を取り戻させてください』と願ってみた。
俺から魔力が流れ始める。魔力が3分の1くらい減ったところで終わった。メダルは透き通ったような銀色の美しい姿を取り戻していた。
「何とお礼を言ったら良いのか」
「気にしないでください。それより聖樹用のポーションが有るなら譲って頂けませんか? 修復に役立つと思いますので」
テリッチさんは、頷くとワープして行った。




