第4章09話 汚職
なんとか全部終わったのが4時頃だった。トレル警備隊情報隊長の報告では11名の捕獲者の生存。だそうだ。自決が多い。
船を見ていて気が付いた。
「トレルさん、前回捕獲した船はどうなりました?」
「……処分方法をミレン隊長に相談したところ、証拠として保管中でピーター騎士団隊長と相談の上決めるので口出しするなと言う事でした」
「フーン、では船は今どうなったの」
「……行方不明です」
「至急調査の上、報告を下さい」
「了解しました」
「汚職だな」
アデルさんが、ぽつりと言った。
俺はひらめいた。
「お爺さーん」
お爺さんに向かった。
「お爺さん、あそこに並んでいる船で大きいのが2隻有るでしょう。あれカニ漁に使えます?」
「あれなら大丈夫だ」
「もし僕が、あれ2隻買ったら運用出来ます?」
「そりゃ出来るよ。漁師を雇わねーとならんがな」
また、ひらめいた。
「ドロン大隊長、ジャン大隊長をここに呼んで下さい」
トレルさんに頼んだ。
すぐに両大隊長とコロンさんまで現れた。
「二人とも前回の捕り物に参加していたので、お聞きします。今日捕獲した船に、前回の船と似ている船は有りませんか?」
皆さん顔を合わせている。
「確かでは無いが、あそこの中型の船が似ている気がしますな。突入した時から既視感が有りました」
ドロンさんが言った。ジャンさんも頷いて言う。
「私もドロン大隊長と同意見です。既視感が有り変だと思いながら作戦を実行しておりました」
事務官が書類を持って来てトレルさんに渡した。。
「書類によると船は作戦中に破損の為、破棄処分。ヘンドリックス辺境伯領のアイ商会に100デルで引き取られております」
「破損なんて、しました?」
「いや、無傷でしたな」
俺の疑問にドロンさんが応えた。
「書類に特徴欄なんて無いのですか?」
トレルさんが書類を見て言った。
「舳先に海の精霊のマークですね」
船に行くと、舳先に木の板が打ち付けられている。お爺さんに頼んで剥がして貰った。
焼き印みたいな、半裸の女性が出て来た、
「決まりですな」
ドロンさんが言う。
「アイ商会ってアイラス商会の略みたいですね」
ジャン大隊長がぽつりと言った。
「僕から叔父さんに言う? 情報隊から言う?」
「情報隊からに、させていただければ嬉しいのですが」
コロンさんが応えた。
「では、お任せします」
「まだ有るのですが、お時間をいただけますか」
とコロンさん。
「良いですけど疲れたし、お腹も空いたでしょう? 場所変えて食事しながらで如何です? 良かったら大隊長さん達もどうぞ」
結局全員で宿に飛んだ。
まだ夕食には早い時間だったので空いていた。テラス席に座り、お姉さんに夕食とエールをお願いした。
「疲れましたね。風呂が先の方が良かったですかね?」
「いえ、腹ペコです」
トレルさんの返答に全員頷いた。
「何か起きたんですか?」
「先程、捕獲した者の1人がホフマブルグの襲撃の自白をしました」
全員が色めき立った。
「確かに緊急事態ですね。何時と言ってます?」
「2日か3日後らしいです。それもヘルンブルグ、シュテンブルグ同時襲撃だそうです」
「ザマ無いな。裏切っておいて、襲撃されていれば」
「そうだな。馬鹿な貴族だ」
俺が言うとアデルさんがバッサリだった。
食事が来た。お姉さんがエールと熱いおしぼりを先に配って、忙しく厨房と行き来している。俺とアデルさん以外は、鳥の足の塩焼きが山盛りになっている。
「何時も気を使ってくれて、有り難う御座います」
「皆さん何時も沢山食べますからー」
またピョンピョンいなくなった。
「とりあえず、乾杯して暫く食べるのに専念しましょう。作戦成功に乾杯!」
乾杯してから、皆さん無言で鳥を食べている。余程お腹が空いているのだろう。
汗で塩分が無くなっているのか、鳥の塩焼きが凄く美味しく感じる。
「お姉さーん、鳥の追加」
「もうすぐ焼けますので、少しだけお待ちを」
お姉さんがついでにエールを配っていく。
「さて、食べながら聞いて下さい。同時襲撃が本当なら、本格的攻撃では無く夜襲の焼き討ちが確立高そうな気がします。
今日、皆さんが100人くらい狩ってますから、せいぜい100人か200人でファイヤーボール乱射の可能性が高いと考えてます。
正門前に5000人くらいで攻めてくれれば、僕とアデルさんだけで簡単に終わらせられるのですが、既に潜入しているのが焼き討ちだと皆さんの力が必要になります」
お姉さんがエールと鳥を持って来た時、ドロン大隊長が話始めた。
「司令の意見に賛成ですな。儂も焼き討ちの可能性が高いと考えます。先程これから5日間の特別警戒態勢を発令しました。どのような攻撃にも対処しますが、焼き討ちが一番怖いですな」
「私も司令とドロン大隊長を支持します。先程とりあえず一個中隊を潜入者のあぶり出しに出しました。奴らの作戦実行日まで、徹底的に敵の戦力を削る方針を考えております」
ジャン大隊長の発言に皆さん賛成のようだった。
お姉さんがエールとソーセージを運んで来た。本当に気が利く娘だ。でも、このオジサン達どれだけ食べるんだ?




