第4章08話 ヘフナドルフにまた来た
「アデルさんも座って一緒に食べましょうよ、前回食べてないでしょう、美味しいですよ」
アデルさんはブツブツ言いながら座った。
「今日も捕り物かい、物々しいな」
「今日以外にも来てなかったですか?」
「来てたよ。昨日も10人かな。儂の知っているだけで30人は上がっているぞ」
アデルさんが慌てて念話している。
「孫から連絡が来た、沖にまだ3隻いるぞ」
「有り難う、お爺さん。助かるよ」
2隻目の確保が終わったようで、黒服の集団が警備隊に連れられて来た。見ると見覚えの有る顔の女がいた。
「その女は別にしておいて下さい」
警備隊の人が了解して女を連れて行った。
「先日から見ていると必ずアベックで来ていたぞ」
お爺さんが教えてくれた。アデルさんが念話で伝える。
「僕の後方、左の家にいる」
「司令がやると騒音で船に気付かれるし、殺してしまうので絶対に手を出さないでくれとドロン大隊長が言っておる」
「兄さん警戒されておるのう」
お爺さんが、おろした魚をフライパンに入れると良い音と匂いがした。
「姉さんがアデルさんかい。夫婦で司令と副司令なんて珍しいな」
「でしょ、でも怖いんですよ」
「勝手に夫婦になるな!」
アデルさんが俺の頭をひっぱたいた。
「良いじゃないですかー。どうせバレバレですよ」
「お前さん達は仲が良過ぎて、隠していることになっとらんのじゃよ」
お爺さんが笑いながら言った。
「ほれ魚、沖にもう2隻追加だと」
アデルさんは魚を受け取って、口にした。
「これは美味い! エールはまだか?」
アデルさんがエールモードになりかかっている。
「ジャン大隊長が応援を呼んで良いか聞いて来ているぞ」
「大隊長は自分で判断しろと返答して下さい」
「お爺さん、今日の魚は美味いです。前回と違いますよね」
「うん、種類が違う。あまり採れない魚じゃよ」
エールをくれた。魚と合って美味い。
「僕の右の倉庫の後ろにいる」
「もう伝えてある」
アデルさんが魚を食べながら答えた。
「また倉庫側に4人」
「人数が足りてない! 警備隊から後50人、騎士団に50人要請しろと言ってください」
「騎士団は100人既に手配しているとドロン大隊長が返答して来たぞ」
「さすがドロンさん。面倒だから直接念話開けないの?」
「規定で駄目なんだそうだ。あきらめろ司令は直属の連絡将校以外は認められない。騎士団や警備隊が直訴を始める」
「兄さん、また1隻追加だそうだ」
「今3隻目確保だ。あと6隻だな」
「凄い数ですね、9隻は半端な数だけど、そろそろ止めてくれないかな」
「大丈夫だ、ここの桟橋に繋げられなくなる」
お爺さんが笑って言った。
「そう言えば、海老は3000尾以上は捕れないんですって?」
「無理じゃな、枯渇してしまう」
「そうか……北の海の方に行ったら捕れます?」
「捕れるぞ。だが大きい船じゃないと無理だ。うちのは小さい」
「大きい船を買えば解決じゃないですか」
「1億はかかる」
「僕が買って貸せば良い?」
「そりゃ有り難いが、これから作るから暫くかかるぞ。儂も年じゃし」
「お爺さんが作るんだ」
「船大工が本職じゃよ。孫を育てるのに有り難い。作らないと腕が上がらん」
「4隻目確保」
3隻目の逮捕者が連れられていく。ひらめいた。
「逮捕者の顔を調べて下さい。同じ顔の者がいませんか?」
「お爺さん、エールと魚を頼むぞ」
アデルさんが怪しくなっていく。
「お爺さん、北の海でカニ捕れません? ミルレドルフ辺りで捕れるデカい奴」
「ああ、あれか、誰も捕らんから海にゴロゴロいる。だが、それなら更にデカい船がいる」
「5隻目、入港」
「作るのに幾らかかります?」
「最低3億じゃな」
「じゃ、それ造りましょうよ。それで海老も捕れるんでしょう」
「良いけど……じゃそれで行くか」
「すぐに始めて下さい。必要なお金はパトリックさんに言ってくれれば払いに来ますよ」
「5隻目確保。先は長いな。ところでお爺さん、これは先程のと違う魚か? 味が違って美味いな」
「本当に美味しいですね。僕にもエール下さい」
「同じ顔のがいたぞ。三組いた」
「奴ら顔を作っている」
コロンさんが現れた。
「ポニー魔導剣士が1週間程前に辞職したようです」
「理由は分かります?」
「話しによるとヘンドリックス辺境伯と口論の末、辞職のようです。またヘンドリックス辺境伯夫人も子供を連れて実家に帰ったとか。これは1ヶ月程前らしいです」
「すぐに叔父さんに教えてあげて下さい」
「了解しました」
どうなっているんだ?
「アデルさん、何であんなに生け捕りに拘っているんです?」
「あれか、前回捕獲者の8割が自決してな、だから出来るだけ多く捕獲して情報を取れる生存者を増やしたいのだ」
「なる程ね」
コロンさんが忙しそうにワープして消えていった。
何もさせて貰えないので食事に専念する事にした。




