第4章05話 瘴気の沼
昨夜は司令の仕事で9時までかかって、聖樹の修復は1時間くらいしか出来なかった。アデルさんとの勉強時間も1時間くらいで俺が意識を無くし、結局早寝早起き健康的なのです。
「今朝は鳥のコンソメスープと山鳥の卵のオムレツ、木の実のパンです」
朝のお姉さんは、落ち着いたエルフさんだ。朝ご飯と、お勧めのエルフ茶をお願いした。
「アデルさん、ホルンの森と魔獸の森の間に余り使われて無い街道が有りますけど、あれは何処に繋がっているんです?」
「あれか、広大な荒れ地に繋がっている。荒れ地の辺りで街道は埋まって終わりだった筈だ。一応ホフマン家の領地だかな」
「荒れ地に繋がっている石畳の街道ですか?」
「良くは知らんが500年くらい前には、街が有ったという話しも有る」
また500年。捨てられた街も確か500年前に駄目になった筈だ。
「間には村も無いのですか?」
「以前は村が二つくらい有ったらしいが、今は集落とは言えないようなのが一つ有るくらいだ」
お姉さんが料理と茶を持って来た。
「ごゆっくり」
「ここは良い娘ばかりだな」
アデルさんが言いながらお茶を飲んだ。俺は朝食を
食べ始めた。オムレツもスープも美味い。
「あとは何も無いのですか?」
「街道の話しか? 無い。瘴気の沼が有るので、どうにもならん」
「瘴気の沼って?」
「ホルンの森から街道を進むと大きな沼が有ってな、瘴気に覆われているのだ。200年くらい前は森だったそうだ」
「200年前なら聖樹の森かも知れませんよ」
「無理だな。沼から発生しているのか、ものすごい瘴気だ。誰も近づけ無い」
「そんなに凄いのですか」
「凄いぞ、本当に近づけ無い。例え聖樹域が有ったとしても行けないし、行って種を植えても根が腐るだろう」
「見たいか? 近くには行けるが、治療魔法漬けになっても3日くらいは気持ち悪いぞ」
駄目か、少し期待したのに。
「聖樹が復活してから少し変化が有ったとか、情報があれば良いのに」
「情報か……情報隊長に聞け」
凄い短絡的な意見。でも採用する事にした。
連絡したらコロンさんがすぐ来た。
「昨夜の後すぐで申し訳ないのです」
「何時でもお呼び下さい!」
話す前にトレルさんも来た。
アデルさんが朝食を頼んでいる。
「スミマセン、そんなに大騒ぎな話しじゃ無いのです」
「何でもどうぞ!」
トレルさんがキリッと言った。
「瘴気の沼って知ってます?」
「「はい」」
「あそこの瘴気が館の森の聖樹が復活してから減ったか、変わらないのか調べて欲しいのです。
昨夜、忘れられた森の聖樹が地脈に繋がったので、その影響も知りたいので定期的な調査をお願いします」
お姉さんが二人に朝食を持って来た。
「美味いから冷めんうちに食べろ」
アデルさーん。他人事モードは止めよう。
「美味いですね」
「ここの料理は本当に美味しいです」
二人とも喜んでいるから良いか。
「情報は入ってます。聖樹と影響している可能性は有ります。最近、瘴気が減りうっすらと街道が見えるとの情報が入っております」
コロンさんが答えた。
「ホルンの森から少し外れた小さな集落からの話しで、最近立ち入り不可能地域が10メートルくらい後退したと聞いてます」
とトレルさんの情報。
「凄いですね。既に情報が入ってますか」
「続けて調査します!」
二人とも凄い!
「これは修復を速めねばな」
アデルさんが言った時、歌声が聞こえだした。
「お母さん?」
「私が行く! 話しをしておれ」
アデルさんが飛んで行った。
「ピーター隊長達が帰って来る前に、もう少し変化させたいのですが大隊長さん達に余裕が有ります?」
「呼びます」
新大隊長達はすぐに来た。
朝食をお姉さんに頼んでから話しを始めた。
「今の体制は歪と思います。上も下も動き辛いような気がします。あくまでも提案ですが、班長を小隊長に格上げしてしまうのは如何でしょう。例えば騎士団なら25人の隊を作り、8人小隊長を作ります。25人が小さな作戦の単位と勝手に決めてますが。
1小隊を2つに割り12人か13人で1班として班長を置きます。これで中隊長は2人の小隊長を使えるし、小隊長は2人の班長を使えます。」
「良いのですか? 隊としては、とても嬉しい提案ですが」
ドロンさんが真剣な顔で答えた。真剣な顔をされると怖い。
「警備隊としても、夢見たいな話しです」
ジャンさんも信じられないという雰囲気だ。
「実は、何回も似たような事をお願いして来たのですが、ミレン隊長で止まって無視されてた案なんです」
トレルさんが教えてくれた。
「騎士団は司令が今言ったのとほぼ同じ案を10年以上前から要望していたのですが、ピーター隊長が全て無視で、権力の隊長集中ばかり進んでおりました」
コロンさんが言った。叔父さんが聞いたらキレそうな話しだ。
お母さんとアデルさんがテカテカした顔で入って来て、俺に手を振ってから後ろの席に座った。
「エールとオムレツだけとソーセージを」
「お風呂の後は良いわね」
お姉さんが後ろの注文を聞いてから、中隊長達に食事を持って来た。
「遠慮無く食べて下さい。話しは出来ますから」
俺が言うと大隊長達はすぐ食べ始めた。空腹だったようだ。
「僕が言ったのは素案ですから、騎士団も警備隊も自分達に合った隊編成を考えて提案してください」
「騎士団は全くそのままで良いです」
ドロンさんが即座に答え、コロンさんも頷いた。
「ここのエールは美味しいわ、露天風呂も素晴らしかったし、嬉しいわ」
後ろの声がうるさい。
「警備隊も変える必要が無いと思います。班も小隊も25人を超えて管理は難しいと考えます」
ジャンさんが答えると、トレルさんも同意した。
「では、すぐに人選を進め任命してください。両隊長が帰って来る前に既成事実を作ります」
「「「「了解しました」」」」
「ソーセージもオムレツも素敵。エールに合うわ」
「奥様に気に入って頂けると思っておりました。エールのおかわりを」
自分が飲みたいだけだろう!
「情報隊ですが次は5名ずつにしますので、三名の教育を急いで下さい。最終的には騎士団情報隊が10名、警備隊情報隊が10名の規模にします。
警備隊情報隊が領内と騎士団情報隊が領外が目的です。我が領の情報活動は商人にも劣ってると考えてますので、何とか改善を急がないと」
全員が頷いた。
お母さんが俺の横に来た。騎士団と警備隊の皆さんは起立している。
「ミノル、大変ね。立派でお母さんは誇らしいわ」
「皆さん、ミノルを助けてあげてね」
「「「「了解しました!」」」」
お母さんは、手をヒラヒラ振ってアデルさんといなくなった。
頭が痛くなった。




