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第3章25話 根が繋がった


 11時に聖樹に戻った。


「ミノル、また伸びている! 今晩中に付くかもしらんぞ」


 後5ミリくらいになっていた。

 他の根の聖水は半分くらいに減っている。アデルさんが聖水を足して歩いている。俺は後5ミリの根にたっぷりと聖水をかけて治療魔法を始めた。


「聖樹も、この根に全力を注いでいるように感じます」


「私も、そう思う。他の根は変化が無いように感じる。まあ、この根より太いのも有るが」


 聖樹からはメリメリ音がしている。聖水を吸っているのだろう。我々も必死で魔法をかけ続ける。

 太さ7センチくらいの根だが、1本生きているのと無いのでは全然違う筈だ。中心の生木色部分も2センチ以上になっている。

 根と根が狭まって来て我々は手を重ねて魔法をかけ続ける。二人分の魔法は強力で青い光が、とても明るい。


「ミノル。付いたような気がする」


「付きましたかね」


「聖樹から煩いくらいの音がし出したぞ」


「手を離してみましょう」


 付いている!


「ヤツター!」


「付いたな」


 俺は仰向けに後ろに倒れ込んだ。


「疲れたー」


 アデルさんも仰向けに寝転んだ。

 聖樹からゴゴッゴゴッと音がし出した。水が流れている音だ。


「バキバキバキッ」


 凄い音がした。枯れた部分が再生し出している音かもしれない。

 アデルさんが横にコロコロ転がって来て、俺の上に乗って止まった。


「ミノル。キスして良いか? 嬉しいのだ」


「此方から御願いしたいくらいです」


 アデルさんは思いきりキスしてきた。疲れが取れる気がした。息苦しくなった頃、唇が離れた。


「嬉しいのだ。嬉しいのだ」


 俺と頬を合わせ耳元で泣き声で言っている。アデルさんは結構涙もろい。


 地面がゴゴッという音をたて響いている。

 11時40分だった。


「宿に戻りますか」


「そうだな。エールは、もう無理だろうな」


 我々は残りの根に聖水を足して宿に帰ろうとすると、中くらいの太さの根の切り口が青く光を帯びている。


「次はこれを治せという意味ですかね」


「そうだろうな」


「太さ15センチくらいは有りますね」


 切られた根までは20センチくらい離れている。


「最低1週間はかかりますね」


「そうだろうな。いや、10日以上はかかると思うぞ」


 我々はお詣りして宿に帰った。


 宿に着くとお姉さんが食堂からヒョコっと顔を出し、ジョッキを見せた。


「良いの?」


 お姉さんは親指と人差し指で丸を作って見せた。


「済まんな!」


 アデルさんは大喜びだ。


「お腹、すいてます? 鳥の串焼きなら出来るそうです」


「お願いします。ペコペコです」


 奥の席でまだ冒険者達が飲んでいる。

 お姉さんがエールと熱いタオルをくれた。有り難い。


「あのー、凄い音と地鳴りがしましたが繋がったんですか?」


 アデルさんが大笑いしている。


「何でも知っているな。1本だけ繋がったぞ」


 アデルさんの答えに、お姉さんが厨房にガッツポーズをした。

 コックさんと支配人さんが出て来て手を取り喜んでいる。冒険者達が立ち上がって拍手をしている。座っているのもナンだから立ち上がってアデルさんと礼をすると、より大きな拍手が帰って来た。

 間が持てないのでミミーと散歩で鍛えた得意技を披露した。


「皆さんに祝福を」


 思いっきり派手な光の粒が舞う。


「オー!」


 皆さんビックリしている。


「皆さんに幸運を」


 アデルさんも悪乗りで光の粒を飛ばした。皆さん大喜びだった。

 コックさんが鳥の串焼き、お姉さんがエールのお代わりを持って来た。


「ごゆっくりどうぞ。冒険者達が来ると長いですから」


 鳥も美味いしエールも美味い。


「喜んで貰えるのは嬉しいものだな。ミノルがミミーと散歩するのが理解できた」


「あれをやると精霊魔法がどんどん上がるんですよ」


「そうなのか。今度からどんどんしよう」


 我々は1時間程で部屋に帰った。食堂にはまだ5人くらい客が残って飲んでいた。


 服を脱ぐとホッとする。下着になって歯を磨いていると全裸のアデルさんが歯を磨き出した。アデルさんは以前から裸族だ。自分の部屋に帰ると必ず裸になっていた。

 田舎の貧しい家の子供は、裸で生活するのが当たり前なのだ。日本も昔はそうだったと聞く。先日アデルさんに聞いた身の上だと15歳近くまで服など要らない生活だったので、生活習慣になっているのだろう。

 俺も裸になって露天風呂で身体を流し洗い始めた。完全日本式露天風呂だ。アデルさんも入って来て身体を洗い始めた。


「背中、流しますですよ」


「おお。済まんな」


 アデルさんの背中を流していると懐かしい。以前は此方に来ると毎日アデルさんと一緒に風呂に入っていた。


「どれ、変わろう」


 アデルさんに背中を流して貰う。耳のチェックも入った、ちゃんと洗えてないとお尻を叩かれる。


「前」


 以前と全く同じだ。前を向くとチェックが入る。


「相変わらず洗うのが下手だ。こんな洗い方では臭い始めるぞ!」


 洗い直しをしながらアデルさんがブツブツ怒っている。何故一緒に入らなくなったかと言うと、これが原因だ。洗い直しが入ると変化するようになったので、一緒に入る訳にいかなくなった。

 爆発寸前に洗い直しが終わった。

 我々は身体を流して湯に入った。


「懐かしいな」


「はい、すごく懐かしいです。でも、これからはまた一緒に入れるので嬉しいです」


「また毎日一緒に入ろう」


「嬉しいです」


「私もだ」


「アデルさん、お願いがあるのですが」


「何だ、言え」


「その…教えて貰えないかなと…」


「何をだ?」


「あのー…どうすれば良いのか…」


 しばらくの沈黙の後、アデルさんが気が付いてくれた。


「お前、初めてか?」


「はい、実は…です…」


「そ、そうか。良いぞ、このアデルに任せるが良い」


 俺はホッとして息を吐いた。アデルさんが笑って俺の肩に右手を回した。


「相変わらず緊張症だな」


 肩に手を回されると俺の左手腕が、アデルさんの余り大きく無い胸に当たる。ドキドキする。


「よし、始めよう」


 夜中の1時なのに目が冴えてきた。




 朝の4時、俺は大人になっていました。


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