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第3章24話 怒りのアデル


 館の夕飯はアデルさんが先に行き、俺が少し遅れて入ることにした。その時間を利用してパトリックさんに聖水を貰って来た。

 食堂に入るとアデルさんがピーター隊長とミレン隊長を怒っている。珍しい光景だ。


「何処に行くか私が両隊長に伝えながら動かねばならぬのか? 司令と私は今、面倒な仕事をしている最中だ。聞くと用事はなかった、だが居場所は常に両隊長に伝えろだと? 何故、中隊長達に聞かない?」


 俺が中隊長達に連絡すると、すぐに飛んで来た。


「司令、御用でしょうか」


「そこの席に座って下さい」


 俺は、ついでに俺とアデルさんの食事を両中隊長に出すように指示した。


「お聞きします。今日僕とアデルさんが何処に居たか把握してますか?」


 トレル警備隊中隊長が答える。


「はい、朝にマイヤー商会に寄り、後パトリックさんとマインズドルフに行き旅館『妖精の宿』を起点とし、忙しく動かれていたと把握しております」


 マズい、こいつ等は優秀過ぎる。


「両隊長、居場所は把握されてますよ。あ、両中隊長さんは遠慮せずに食事をして下さい」


 俺が言うと、両隊長は困った顔をし、両中隊長は礼を言って食事を始めた」


「先程から聞いておる。何故、両副隊長に連絡し自分から把握する努力をせぬ。職務怠慢ではないか!

 そもそも副司令を何だと思っているのだ。おぬし等の上司だぞ。分かっているのか? 何か勘違いをしておらぬか?」


 アデルさんの剣幕に圧倒され、両隊長は黙っている。

 叔父さんが話し始めた。


「両中隊長に情報将校の役を与え、司令と副司令の直属にした理由の中には、両隊長に騎士団と警備隊の隊員を把握して貰いたいという思いも有ったのだ。

 中隊長達を情報将校にすると言った時、君達は反対したな。次の中隊長候補が居ないという理由だった。中隊長達に聞くと両名共、候補は何人も居ると言う。

 両隊長は何を見ているのだ?」


 叔父さんの問にも黙ったままだった。


「ミノル、アデル、何かする事が有るのだろう、行って良いぞ。 忙しい時は無理に戻って来なくとも良いからな」


 叔父さんが言ってくれたので、退室した。


 我々は聖水と服の予備を持って宿に飛んだ。

 夕食は鳥の塩焼きと野菜の煮物にエルフのパンだった。エールと夕食はすぐに来た。


「美味いですね。それとエルフのパンは始めてです」


「ここの料理は良いな。エールも良いぞ」


「館の御飯を抜いても良い許可は嬉しいですね。ここに泊まれば効率が上がります」


「うん、ゆっくり飲めるし二人で風呂にも入れる」


「はい、期待している事は沢山有ります。でもあの根を付けてしまえば、ゆっくり他のが出来ると思うので少し頑張らないと」


「全てが楽しみだ。幸せだ」


 アデルさんが村の明かりを見て言った。


「僕もです」


 我々は食事を済ませ、聖樹に行った。


「ミノル伸びている!」


 確かに根が自力で伸びている。俺は聖域を明るくし、土魔法でまだ手を付けてない根の切り口に受け口を付けて聖水を注いだ。

 聖樹からパキパキと音がする。


「良い手だな。ミノルは頭が良いな」


 聖水は2箱貰って来ている。たっぷり飲んでくれ。

 俺は根の治療を始めた。聖水をたっぷりかけてから治療をする。アデルさんは地から伸びて来ている方を治療している。


「後2.5センチくらいですね」


 1時間以上治療を連続していると、さすがに疲れる。他の根の受け口に聖水を足してから休み時間だ。


「3分の1くらい減っているぞ!」


 聖水を足して歩いているアデルさんが嬉そうに言った。

 手を洗って食堂に行くと、客が結構入っている。テラス席が空いているので行こうとすると、エルフのお姉さんがジョッキを持ち上げ指差したので指で丸を作るとエールを持って来てくれた。


「今日は鹿の串焼きが出来まーす」


 エールを飲んでいると串焼きが来た。香草焼きだ。


「柔らかいし、良い香りだ」


「どうやったら鹿がこんなに柔らかくなるんでしょうね」


「エルフの魔法じゃないか。このテラス席も虫が来ない」


 アデルさんは、お姉さんにジョッキを指差した。


「もう飲んじゃったんですか!」


「良いではないか。楽しいのだ」


 こう言われると文句も言いづらい。

 アデルさんがグビグビやっていると1時間が経つた。


「気になる。行くぞ」


 聖樹の根はまた自分で伸びていた。他の根の聖水も半分くらいに減っている。


「聖水の効果が大きいですね」


 もう2センチを切っている。頑張ろう。全部の根に聖水を足してから作業を始めた。

 なんとか今晩に1本繋がらないかなと思って、一生懸命に治療魔法をかける。だが後1センチを切っている状態で我々の体力が無くなって来た。


「もう10時です。体力を使い切る前に休みましょう」


 食堂は客が沢山居た。商人風の人と冒険者だ。お姉さんが我々にジョッキを見せるとアデルさんが指を2本立てた。

 お姉さんがエールと濡れタオルを我々に配った。


「顔に泥が付いてまーす。コックが今度はキノコのチーズオムレツは如何ですかと言ってますが?」


「ありがたい、デカイのを頼む」


 アデルさんは空腹のようだ。確かに魔法の連続使用は喉が乾くし腹が減る。

 すごく大きく美味そうなオムレツが運ばれて来た。エールをまた頼んでオムレツを食べた。


「美味しいですねー。コックさんが良いんですね」


「そうだな、腕が良いコックだ」


 次の作業が終わった時は、ここは閉まっているだろうとか話しながら、アデルさんは3杯目のエールを注文した。


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