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第3章16話 ヘフナドルフの魚


 お爺さんは、息子さんと孫達に海老を穫りに行かせコックさんに専念しだした。酒屋からエールを取り寄せ、魚と海老で盛り上がる。


「美味いなぁ、ホフマブルグでも、もっと魚貝類を食べないと」


 ノア兄さんが真剣な顔で呟く。


「兄さん達は偉い人なんだろう。何とかしてくれると皆が助かるよ」


「お爺さん、俺達はそんなに偉くは無いのよ。でもあの石畳の街道を使って何とかならないかな」


 フェン兄さんが食べながら考えている。


「捨てられた街が中継点になってくれれば、可能性は飛躍的に拡大するのですが」


 パトリックさんがエールをノア兄さんにつぎながら言う。


「この海老美味いです。リリアドルフのより美味い」


「そりゃ当たり前だ、リリアドルフはここから買って行っているだけだ」


 お爺さんが俺に教えてくれた。

 パトリックさんがキレそうになっている。


「魚類の取引は全部こっちに変える!」


 パトリックさんの決断を聞いて気になった。


「リリアドルフの業者がここに買いに来ていたのですか?」


「そうだよ。アンタらが、さっき捕まえたあの船で」


「あの船は、きっと私の所に海老を売っていた業者だと思います」


 パトリックさんが言う。ノア兄さんが念話で何か指示している。


「パトリックさんの所で、その業者のリリアドルフでの仕事引き継ぎなよ。そこどうせ無くなるから」


 フェン兄さんが呑気な事を言っている。


「昔はリリアドルフなんかより、この港の方が重要だったのじゃよ。海は豊かだし、魔人の大陸も見える距離じゃしな」


「なるほど、だから石畳の街道か、なおさら捨てられた街の再興が鍵になるな」


「魚と魔人の国と街の裏の森で何とかなるんじゃないですか」


 俺がノア兄さんに応える。


「僕の個人的な意見ですが500年くらい前から、誰かがホフマン辺境伯領が発展しないように工作していたと思えます」


 俺の意見に皆、黙ってしまった。


 息子さん達の船が帰って来た。2艘の船から魚箱が下ろされてゆく。子供達も手伝って仕事は速い。パトリックさんが船に向かって歩いて行った。


「今日は学校が休みになってしまったから、手伝いが多いのじゃよ」


「あの騒ぎで学校が休みになったのですか?」


 俺が聞くと、お爺さんが笑って答えた。


「だって校長が村長で先生の半分が村役場の人だからな。前の校長と先生の半分がアイラス教団関係だったんじゃよ」


「来週から新しい先生と校長が来るところだったのですよ」


 フェン兄さんが申し訳無さそうに言った。



 ホフマン辺境伯領の学校は、初等部と中等部があり無料教育となっている。学校は午前と午後に別れ、1日3時間どちらかに通う。

 施設と教員の使い回しだ。

 初等部が、数え年8歳の3月から11歳の2月末日まで。中等部が、数え年11歳の3月から14歳の2月末日まで。

 どちらも教材の都合上授業は日本語で行われ、学校が有る地域では初等部が義務教育となっている。

 義務教育と言っても特に農業地域や開発地域の子供は結局除外となり、日本語ができない人となる。


 中等部を卒業すると役所や警備隊、ギルドなどの安定した職業に就ける。

 ホフマブルグには魔法学校と武道学校があり、数え年11歳の3月から15歳の2月末日まで、1日6時間授業で入学できれば無料だ。

 冒険者ギルドのセリちゃんなんかが魔法学校の卒業生だと思う。



「さて後片付けが大変だ。ミノル今日はありがとな」


 兄さん達は桟橋に向かってブラブラ歩いて行った。


「今日は御馳走様でした。これで足りますか?」


 俺は5000デルお爺さんに渡した。


「兄さん、こんなに要らないよ。多過ぎる」


「今日の迷惑料と、お近づきで取っておいて下さい。また来ますので、料理お願いしますよ」


「済まねーな。助かるよ。儂はここら辺りで毎日作業しているから、声をかけてくれ」


 立ち上がって数歩でトレル警備隊中隊長がワープした来た。


「司令。現在、容疑者全員確保し、協力者の捜査中です。明日以降に判明した事を報告しますので、お帰りになって結構です」


「有り難う御座います。後をよろしくお願いします」


 トレル中隊長は挨拶をして去って行った。


「兄さんは偉い人なのかい?」


「こんな若いのが偉い訳が無いでしょう」


 俺が笑って言うと、お爺さんも笑っていた。



 ヘフナドルフに残って居ても相手にされないので、パトリックさんの海老運びを手伝ってホフマブルグに帰った。

 やはり冒険者ギルドに行ってみる。

 今日はジグロさんがいない。

 食堂の入口にノレルさんと4人娘に魔術師のセリちゃんがいた。


「坊ちゃん、お久しぶりです」


 ノレルさんが声をかけてくれた。


「こんにちは」


 セリちゃんも大分慣れたようだ。


「セリちゃん、魔法は強くなった?」


「まだまだです」


「坊ちゃん、セリちゃんばっかり名前で呼ぶ」


「私達の名前なんて覚えてない」


 4人娘が口々に文句を言っている。


「そんなこと無いよ。エーと、ダークエルフのリレさん、魔人のリスラさん、犬耳さんのタタさん足を治したよね、ネコ耳さんはまだ名前を教えてくれてないよ」


「ワタシ、イッテナイカ?」


「聞いてない」


「イリアだよ、その娘」


 リスラさんが教えてくれた。


「ボチャン、オボエテタ、ナマエ!」


「当たり前だよ。それより魔法は上手くなった? 火と水と風が使えるだけでも旅館なんかの仕事が有るからね」


 皆、首を縦に降っている。一応全員の魔力を上げてある。


「じゃ昼飯でも食べようか。おごるよ」


 大歓声と共に食堂に入った。

 色々注文してエールで乾杯して雑談が始まった。

 皆同年代で気楽に話せるのだけれど、なんか俺の期待と違う。こっちの娘は生きるのが大変なんで、日本の高校生とは違うんだなぁと思った。


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