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第3章13話 髪留め


「何時見ても良い剣だな。兄さん用になってしまっている」


 シュテンブルグのドワーフさんに、剣の手入れをして貰いに来ている。

 疫病騒ぎから2週間くらいかかって、やっとヒマができた。


「僕用ですか?」


「そうだ、こっちに来い」


 少し薄暗い所で俺に剣を渡した。


「光を剣に少し当たるようにして、じっと見るのだ」


 ドワーフさんの言うようにしていると、剣が反射する光が青く見える。


「光が青く見えます」


「そうだ。精霊が兄さんの剣に力を与えた。竜でも切れるだろう。三本全部同じだ。弓も見せろ」


 弓をドワーフさんに渡す。


「これもそうだ。叔父が喜ぶ」


 弓を受け取り光を当てる。弓が青く反射している。


「毎回お世話になります。是非お代を取って下さいよ」


「要らん。良い酒も貰った」


 ドワーフさんと弓屋さんに向かう。


「御屋形が、兄さんが館に来てくれないと儂に文句を言ってた」


「スミマセン。巻き込んで」


 ドワーフさんが鼻でフンと笑った。


「連れて来たぞ」


「来たな。弓を出せ」


 俺は弓と酒を一緒に出した。


「良い酒だ。弓が変わったな。精霊の加護か。でもズレている」


 ドワーフの叔父さんはグリップの下に有る板を

叩いて調整する。


「引いてみろ」


 俺は弓を力いっぱい弓を引いて見せる。

 ドワーフさんがもう一度調整して俺に引かせる。


「こんなものだろう」


 とても引きやすくなった。


「また来い」


 二人のドワーフさんが見送ってくれる。

 何回も来ているのだが未だに二人の名前を知らない。二人も俺を兄さんと呼ぶ。互いに名乗らない習慣でも有るのかもしれない。

 通りを進んで、魔族さんの衣装屋さんに行く。

 店主のトメラさんがにこやかに迎えてくれた。


「いらっしゃい。何時もありがとうございます」


「今日は、何か面白い品物でも入りました?」


「殿方向けには大した物は無いですね」


 確かに目新しい品物が見当たらない。


「最新入荷はこれですね。女性用ですけど」


 トメラさんが奥のケースから青い石を持って来た。

 透き通った青い石で金の枠が付いた楕円形の10センチ無いくらいの物だ。


「すごーく綺麗な物ですね」


「髪留めなんですよ。貴族や大商人の娘さんや若い嫁なんかにと思って仕入れたのですが、高価なのと付いている能力が効果が出ているのか判り辛い物ばかりなので」


「でも、これ程美しい品物なら効果なんか……どんな効果です?」


「若い女性に欠けがちな、幸運・融和・正直・愛情・加護・行動という珍しい効果なんです。

 それも付けているうちに所有者に融和し、周囲の人も幸福にするという珍しい品物で盗難除けまで付いてます」


「面白い効果ですね。呪いみたいな物と勘違いされ易いかもしれないですね」


「そうみたいですね。600年くらい前に錬金術師が精霊魔法を溶かし込んで作った珍しい物で、悪い効果なんて精霊魔法で作れ無いですよ」


 手に取って見る。青い美しい石をじっと見てると光の粉が動いている。確かに精霊魔法だ。心が落ち着いてくる感じがする。

 周りの金属からは安心感を感じさせる。


「確かに精霊魔法です。精霊魔法でこんな効果を出せるのを知りませんでした。とても強く上手に使ってますね。呪いは全く感じません」


「ミノルさんの保証書でも付けて貰いたいですよ。今、精霊魔法を使える人なんて殆ど存在してないですから」


 トメラさんの憤慨が面白かった。


「これのお値段は?」


「それが異常に高いのが売れない原因で……1億デルなんでです。昔、世話になった人に頼まれまして……売っても私の利益なんて100万デルなんですよ」


「それはつらいですね」


「本人も売りたく無いみたいですが、何か急に必要になったようで」


 それにしても美しい品物だ。上品だし。


「僕が買いますよ」


「エーッ。女性用ですよ!」


「僕に魔法を教えてくれた先生にプレゼントしようかと思って」


「アデル様ですよね。あの方なら似合いますよ。完璧ですね! ちょっとキツイけど。でも、あの方も精霊魔法使いですから効果倍増なんですよ」


「そう思います? ところでアデルさんを知っているんですか?」


「サキバと一度来たんです。サキバと私、友達なんで」


「サキバさんには内緒ですよ」


「絶対に言いません。アデル様は美しいから最高に映えますよ。ちょっと男っぽいけど。でも、あのエメラルドブルーの眼にぴったり。エルフの血が入っている女性は羨ましいです」


「アデルさんエルフが入っているんだ」


「ミノルさんは判り辛いかな。白人系の人族は顔がゴツゴツしてるけど、エルフが入るとツルンとした感じで、肌も艶やかになって、眼の色も綺麗なんですよ」


「だから僕が子供の時から見た目が変わらないんだ!」


「ずっとあの容姿ですよ。美人はイイなー」


「トメラさんもサキバさんも美人じゃないですか。長生きも同じだし。僕はお二人のファンですよ」


「ウレシイッ! 魔族を誉めてくれる人なんて少ないです」


「エー、魔族もエルフもヒトも同じですよ」


「そーゆー人は少ないですよ」


「さて、短命な僕は早くお金を払わないと。陸奥銀行何処です?」


「一緒に行きます」


 トメラさんは髪留めを俺に渡し店を閉めてしまい、良い臭いをポッポとさせて俺と腕を組んで銀行に向かった。ちょっと嬉しかった。

 銀行に入ると山形支店長がいた。


「お久しぶりです。今日は?」


「お金を下ろしに。1億デル御願いします」


 山形支店長が銀貨を並べる。


「はい、1億デル。例のが売れました?」


「はい! そうなんですー」


 俺は銀行プレートをしまい、トメラさんは大量の銀貨を数えて財布に入れた。


「こんな大金なくしたら大変なんで渡しに行きます。また来て下さいね」


 トメラさんがワープして行った。

 俺は山形支店長と雑談してからホフマブルグに帰った。


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