第3章12話 城塞都市の後片付け終了
今日は朝から順調だ。
目覚めは水風呂の中で、聖樹詣りもキチンとやった。
朝食を食べて部隊の交代儀式の後、中隊長さん達と本日の打ち合わせ。午前9時からの作戦開始となった。
「ナンカ皆さん気合い入ってますね」
「体制が新しくなって、頭の重石が取れたからな。若手は能力を見せるチャンスだ」
「今日中に最低4分の1、出来れば3分の1するなんて言ってましたよ」
「普通は司令が尻を叩いて仕事をさせるのだが、此処は逆だな」
アデルさんがニヤニヤしている。
我々は9時前にバリアーを外し空気を何回か送り込み、城塞内全域に浄化魔法を掛ける。
部隊が入って来て散開し作業が始まった。俺とアデルさんは正門の見張り櫓で直射日光を避け、時々風を送る。
ファイヤーボールが打ち上げられると、俺かアデルさんが行って浄化する。大きな家の浄化は我々の役目だ。
1時間の作業で、コロン騎士団中隊長の笛で撤収した。
「現在、予定通りに進んでおります」
コロン中隊長の報告と11時作業再開を確認して休憩時間となった。
「彼等に任せておけば良い。早く終わらせて通常に戻ろう」
「そうですね。掃除ばかりじゃ気分が重くなります」
こんな感じで、城塞都市浄化が終わったのは3日後だった。
全部遺体だった。暑さによる熱射病と水不足で衰弱し、食事も取れなかったらしい。食糧は残っていた。
結局1200体くらいの処理となった。腐敗も始まっており、気が付くのが遅かったら伝染病発生だった確率が高かったと、治療院の人が言っていた。
ホフマブルグを攻めに来た侵入者達に、もう少しで疫病の大惨事を食らうところだった。
「コロン中隊長さん、トレル中隊長さん、本当にお世話になりました。犠牲者も無く無事終われたのも皆さんのおかげです」
「我々は下働きをしただけで、司令と副司令の早い動きで疫病も防げたと思っております」
「とんでもない、僕は飾りに過ぎません。ただの魔術師ですから。ここの体制も変わるでしょうから、館に行って作業終了の報告と今後の相談して来ますね。後を御願いします」
「御苦労様です。お任せ下さい」
という訳で俺とアデルさんは、館のフレードリッヒ叔父さんに報告に行って司令役を解任してもらうことにした。
叔父さんは、満面の笑みで迎えてくれた。
「ミノル、アデル、大変御苦労だった。2人の働きでホフマブルグは戦いに巻き込まれずに済んだ上、王室は『捨てられた街』周辺を辺境伯領編入を認めざるを得なくなり、今週中に決着予定だ」
「それは大変おめでとう御座います。叔父さん、ところで司令役をそろそろクビにして貰えませんか?」
「なに、もう辞職か、このまま軍司令でも良いのだぞ」
「御願いですから、それだけは勘弁して下さい…」
「儂もな、ミノルの頼みなら何でも聞いてやりたいのだ。だがな、ここでミノルとアデルを解任すると、ホフマン家は利用し終えて2人から地位を取り上げたと見られてしまうのだ」
確かに叔父さんの言う事にも一理ある。
「それも理解出来ますが、アデルさんと違い僕は軍人なんてやった事も無いですし……」
アデルさんが俺の足を思い切り踏んだ。
『裏切りは許さんぞ!』
念話で脅しをかけて来た。
『裏切りじゃ無くて本当の事ですよ……』
より体重をかけて踏んできた。
「ミノル、アデル、どうだろう名前だけ司令と副司令を暫くやっていてくれないだろうか?
ピーター騎士団隊長とミレン警備隊隊長が仕事はするし、ノアとフェンも間に入る。
コロン騎士団中隊長とトレル警備隊中隊長はそのまま、お前達の連絡将校としておくのでお前達は重大な事が起きない限り自由だ。
年寄りの顔を立てて、そうしてくれんか?」
『断れる雰囲気では無いですね……』
『そうだな……』
結局、叔父さんに押し切られた。
「引き受けて貰えて助かった。『捨てられた街』の後始末は他の者にさせるので、安心してゆっくり休んでくれ。御苦労だったな」
俺達は挨拶をして部屋を出た。
「押し切られました……」
「……」
「部屋に帰って風呂と着替えします」
「私もそうしよう」
まだ昼食前だが汗で気持ち悪い。風呂にゆっくり浸かり、身体と頭を念入りに洗い歯を磨く。サッパリとした。日本人だなと思う。
身体を拭いてバスローブを着る。久しぶりに風呂上がりにゆっくりした。
ベッドの上でベランダからの緩やかな風に吹かれていると心地良い。疲れがどっと出て、知らないうちに寝てしまった。




