第3章10話 有能な部下
「こんなの片付けている時に敵襲なんて嫌ですね」
「何時やっても同じだろう。伝染病の方が怖いぞ」
「生きていて動けないのはどうします?」
「余りやりたくは無いが、そのまま粒状化しか無いぞ。ここで治療は出来ないし、運び出して伝染病が出たら大惨事になる」
「そうですね。出来るだけ手早くやりましょう」
「とりあえず路上の片付けだ」
早速バリアーを外し風魔法で換気をし、街全体に浄化魔法をかける。
二人で手分けして、目に付いた遺体を粒状化していく。余り気持ちの良い仕事では無い。
暑さと水不足の為か外で倒れている人が多い。
人の声も物音も聞こえ無い。
余りの多さに休憩時間を取って指令テントに帰った。互いに浄化魔法をかけ合う。
「我々にも手伝わせて下さい」
中隊長さんが言って来た。
「到着したばかりですし、午後からで良いですよ」
「司令と副司令を働かせて見ている兵など聞いた事が有りません。御命令を」
申し訳無いが頼むことにした。
「粒状化と浄化が使える者が必要です。伝染病を避ける為に放置された路上の遺体を粒状化するのが目的です。
生存していても動けない人は粒状化してください。伝染病の危険が有りますので、絶対触れたりしないように。
まだ危険が有るので生存者は放置して戦闘は避けてください。この人数では何も出来ません。」
「了解しました」
騎士団が15人くらい集まったので、ワープで中に入り、風魔法でまた換気した。
残して来た兵も自分達でワープで中に運び、効率良く仕事が進んで行く。
「有能ですね」
「ミノルが兵士達の信頼を得たのだよ」
「そうですか……」
「そういうものだ」
1時間くらいで街の3分の1くらいの通りが片づけられた。
全員ワープで外に出て正門前に集合し、キャンプに帰る前に俺とアデルさんで浄化と治療魔法をかける。
キャンプに帰り魔力回復と休憩で1時間取るように命令した。
指令テントに戻るとミレン警備隊隊長がいた。
「ピーター隊長から要請が有りましたので警備隊から魔法と魔力の強いのを20人連れて来ました。司令の合流許可を御願いします」
「それは助かります。宜しくお願いします」
「私はまだヘフナドルフから離れられないので、申し訳有りませんが指示は警備隊中隊長がおりますので、何でも命令してください」
「忙しいのに済みません。仕事にお戻り下さい」
「中隊長、中へ。では失礼します」
ミレン警備隊隊長がワープで消えて中隊長さんが入って来た。
「トレル警備隊中隊長と申します。何なりと御命令を」
ホフマブルグ正門前の魔獸大作戦の時もお世話になった中隊長さんだ。
アデルさんが状況説明と仕事説明をしてくれた。騎士団中隊長さんが入って来て、警備隊用のテントが出来た報告をした。
騎士団中隊長さんにピーター隊長への応援要請の礼と、警備隊との打ち合わせを御願いしておく。
「少しは早く終わりそうですね」
「そうだな、応援は助かった。思ったより酷い状況だ」
「中が予想しない程、暑いですね」
「城壁が熱を貯めてしまっているようだ。高過ぎる。ホフマブルグの倍は有る」
休み時間が終わる前に飛び、風魔法で換気をして少しでも温度を下げ臭いを抜く。
騎士団と警備隊の人達がワープで入って来て、騎士団中隊長さんの笛で別れて街路に向かった。混成部隊にしたようだ。
皆さん手慣れているかのように、効率良く動いている。混成部隊とは思えない程だ。
俺とアデルさんで、先々に浄化魔法で部隊の安全を確保する。
魔力が半分くらいになった人は休んで俺かアデルさんが入り作業を続け、少し早めに休憩を取る事にした。
正門前で治療と浄化をしてキャンプで休んでもらい、食事を含め2時間の休憩とした。
「このままでは、司令と副司令の仕事を増やすばかりですので、一部隊員の入れ替えを許可してください」
警備隊・騎士団の両中隊長さんが進言して来た。
「計画外の状況が発生してしまい、皆さんに迷惑をかけている状況です。そう気に為さらないで。皆さんの安全が優先ですので」
「司令! 御言葉有り難くいただきますが、現在3分の2弱終わった時点で350人近い処理です。司令と副司令が我々の代わりに働いて今日通路がやっと終わって500人の処理と予想されます。
ですが屋内が同数かそれ以上の場合、手間から考え3日は最低でもかかります。これ以上腐る前に動く為には魔力が少ない者も使い回復効率を上げる方法しか在りません!」
「お二人の意見は正しいと思いますが、私が仕事を増やせば何とかなると……」
「なりません! 昨日も司令と副司令ばかり働かせ、今日は警備隊の方々に来て頂いても司令と副司令ばかり働かせるようでは情けなさすぎであります。
騎士団と警備隊の隊員、午後10人ずつの入れ替えの許可を是非とも御願いします!」
「あの……許可します」
アデルさんが笑いながら、帰還する人に再度浄化魔法をかけてので準備が出来たら伝えるように言っている。
「下が一生懸命だ。幸せな司令だな」
アデルさんが笑いをこらえながら言った。




