第3章09話 後片付け開始
涼しい風を感じて心地良さで起きた。
俺はアデルさんに寄りかかって寝てしまったようだ。
「す、済みません。寄りかかってしまいました」
「謝ることなど無いぞ。私も少し寝ていた」
「一緒に昼寝は久し振りですね」
「本当だ。懐かしさと心地良さで、私もつい寝てしまったようだ」
夕陽が赤く射して来ている。ピーター隊長はまだ帰って来て無いようだ。
「ピーター隊長は相当忙しいようですね」
「御屋形様が我々への経過説明と連絡に置いているのだろう。彼がここに居ると、我々が動き辛いのを御屋形様は知っているのだ」
「確かに扱いに困りますよね」
「今も館は大騒ぎの最中だろう。何せ王国騎士団500人相手に戦争を始めてしまったのだからな。
現状、王国騎士団の一敗だ、それも瞬殺の完敗だ。王宮前に騎士団中隊長の遺体を放り出されてな。
国中の貴族へなんと説明する? 王はもう一度兵を派遣するしか無いのだ。そして勝つ。
だが王国は残り1500人以下の騎士団しか持って無い。1000人を派遣すると500程度の守りになる。大貴族二人も手を繋げば王都は火の海だ。動くに動けまい」
「どうするんでしょうね?」
「知らん。腹芸は貴族に任せて、昼寝だ」
二人で暫く笑ってた。
風呂から兵士達の楽しそうな声が聞こえる。のどかな夕方だ。
暗くなって来たので正門前と城塞内を明るくする。
食事とエールの時間にピーター隊長が帰って来た。
予想通りの展開で王宮側が沈黙中らしい。数日で解決する問題でも無いので、叔父さん達に任せておくのが良いだろう。
食事が終わったのでアデルさんに帰って風呂と睡眠を勧めると、風呂と着替えだけで良いと言って消えた。
ピーター隊長にも帰宅を勧めるが、途中で着替えで帰っていると言って固辞された。
ピーター隊長とエールを飲んでいると、アデルさんが帰って来て、風呂に入り館で寝るように言われた。
ピーター隊長もノア兄さんが今晩も話が有る可能性が有るので館で寝るように勧める。
なんでも知っている人だ。
結局、館で寝ることになった。
自分の部屋に帰って来ると、思ったより凄く疲れていた。
ゆっくり風呂に入って疲れを取ろうとしたが、湯船で寝てしまいそうなので早めに済ませた。
這うようにベッドに行ってすぐに寝てしまった。
朝は突然来た感じだった。
それだけ良く寝ていたのだろう。アデルさんの声が聞こえたような気がしたのだが、意識がハッキリしない。
柔らかく温かい手が俺を持ち上げ、心地良いような気がした途端、俺は水の中にいた。
「何度起こされたら目が覚めるのだ。朝だ、起きろ!」
また裸で水風呂だった。
身体を拭いて用意を調え、アデルさんの所に行く。
「毎朝ゴメンなさい。済みませんでした」
「良い。気にするな。疲れているからな。それより行くぞ!」
我々は昨日と同じお詣りコースをたどり、忘れられた森に到着した。
聖樹は1.5メートルくらい、太さが10センチ根元は15センチくらいに育っていた。
「見ろミノル。また大きくなっている!」
聖水を渡してあげると、すごく嬉しそうな顔をして受け取った。根元にしゃがんで聖水をかけて行く。半分かけたところで、俺に聖水の瓶を渡した。
俺も残りを聖樹にかけて、二人で拝んだ。
日課を終わらせ、捨てられた街に行った。ピーター隊長と朝の挨拶をして、指令テントに入る。
「ピーター隊長。今朝も館の朝食会議に行っていただけませんか? 色々と面倒な時ですので情報収集を兼ねてお願いします」
「よろしいのですか?」
「是非とも」
という訳でピーター隊長は館に行って貰った。
そんな事をしていると朝食が出て来た。肉と野菜たっぷりのスープと黒パン。とても美味しい。
「ミノルは今日、また攻めて来ると思うか?」
「来ないと思いますが……来ても夜襲じゃないですか。前日に500人で簡単に負けていて、次1000人以内しか兵を出せないなら普通は夜襲を考えますよ」
「そうだな。出す気が有るなら夜襲を考えるな」
話しているうちに食事が終わった。
しばらくして指令テントの前で騎士団の交代セレモニーが行われた。
今日が始まった。
「昨日は暑かったので、城塞内が気になりますから偵察して来ます」
「私も行こう」
空から見ると、道路に倒れている人が片付けられて無い。偵察で見ても赤い点が明らかに減っている。
「思ったより早いですね」
「暑かったし水が無いのかもしれない。とても古い井戸だからな」
「余り放って置いて伝染病でも出たら大変ですし、困りましたね」
「毎日バリアーを外して浄化するか?」
「そうですね、明らかに放置された遺体は粒状化しないと片付けの兵士達も入れられなくなりますしね」
路上に倒れている人数だけで、ウンザリしてきた。




