第3章08話 キレました
1時間くらい様子を見ていると、ピーター隊長が帰って来た。
「ここ、これは!」
「うん。また来た。まだ数えておらん」
「か、数えますか?」
「そろそろ良いかの?」
「もう良いような気はしますが、品切れだと思いますよ」
「そうだな」
「総員、敵兵の数を数えろ。指令官のプレートは脱がし、所持品検査」
騎士団の皆さんがピーター隊長の命令で動き出した。
「僕は人間相手に慌てて相当無駄撃ちをしてしまいました。次からは、もう少し冷静になります」
「ミノルだけでない。私も相当やらかしておる。私の方が魔力が少ないのにな」
「いかに高度を取るかですね」
「そうだな。高い位置からだと圧倒的に効果が違う」
「コーヒーモドキ飲みに行きたいですね」
「うん、行きたい。ミノルとのんびり出来て楽しかったな」
ピーター隊長が青い顔をして戻って来た。
「全部で500人です! 指令官は所持品と服装から王国騎士団と思われます。このメダルを所持してました」
銀色のメダルで剣がクロスしたデザインだ。
「騎士団の中隊長だな。なら、あれは全部王国騎士団員か?」
「今、調査中です」
俺は不快感でイライラし出した。王国騎士団がホフマブルグを襲いに来たのか。
ポケットから中型の獲物袋を出し、ピーター隊長に渡した。
「指令官のプレートはもう一度全て着せ、この袋に部下のプレート頭部分499を入れて来て頂けますか?」
「はい! すぐに」
「ミノル、キレたか?」
「はい、キレました」
暫くしてピーター隊長が戻って来た。
「全員、王国騎士団員と思われます。こちらが部下のプレート頭部分全てです」
「ピーター隊長。指令官の遺体入りプレートとこれを持って館に戻り状況説明の上、御屋形様にこう伝えてください。
ミノルは王宮前に即刻この指令官遺体と袋を置いてくることを強く進言しますと」
「はい! 命令確かに承りました」
「二名こっちに来てその白のフルプレートを担げ」
騎士団員が二人で白のフルプレートを担いでピーター隊長と飛んで行った。
「ピーター隊長はビビっておったぞ」
アデルさんは大笑いしている。
「脅し返さないでどうします。不愉快ですよ」
「そうだな。ミノルの言う通りだ」
「まあ、叔父さんの決断次第ですがね」
「私はやっても良いと思うがな。500人の王国騎士団となれば、王国騎士団の最低でも4分の1は瞬時に失ったわけだ。
奴らもビビる。知ればもう怖くて送れないだろう」
「それが狙いなんですけどね」
騎士団の人達が遺体をまとめたようだ。
「さて、臭くなる前に粒状化しますか」
「そうだな」
アデルさんと俺は作業にかかった。
全く罪悪感は無かった。
殺さなきゃ殺されるんだよ、この世界は。
作業が終わった時、ピーター隊長と飛んだ二人の騎士団員が帰って来た。
「報告であります。御屋形様からミノル司令およびアデル副司令に大変御苦労であったとの御言葉です。
またミノル司令の進言は即座に実行されました。実行者は我々二名ですので確実であります。
ピーター隊長は館で会議の後に戻る予定であります」
「王宮前から無事帰還、大変御苦労様でした。感謝します。ゆっくり休まれてください」
二名の騎士団員はニッコリ笑ってキャンプに戻った。
「叔父さんでもキレたみたいですね」
「そうだな。御屋形様としては珍しい」
昼食は鹿のステーキと野菜シチューに黒パン。また中隊長さんがエールを付けてくれた。
余程飲兵衛と思われているらしい。
アデルさんはエールにゴキゲンだ。
「ここは戦場なんだがな」
「なんかアデルさんと食事していると、マッタリしてしまいます」
「そうか。ありがとう。ミノルくらいのものだ、そう言ってくれるのは」
騎士団員が入って来て、風呂と便所が出来た事を報告してきた。
アデルさんに食事を続けるように言って見に行った。
とても綺麗で立派な風呂と便所だった。
「皆さん御苦労様でした。暑くて汗もかきますので希望者は順に利用してください。さすがに今日は敵も来ないでしょう」
皆さん礼を言って、早速風呂の用意を始めた。
「立派な物が出来ました」
アデルさんに報告する。
「ミノルはやさしいな。司令とは、もっと理不尽なものだ」
俺は椅子に座って、食事を再開した。暑いのでエールが旨い。アデルさんにエールのおかわりを注いであげた。
「エビフライが食いたいな」
「この作戦が終わるまで無理でしょう」
「そういえば、サキバさんが精霊様の所に行きたいが宗教が違うと残念がっていたぞ」
「残念ですよね。僕も誘いたかったのですが、宗教で無理だろうと止めていたのですよ」
ダラダラ話をしているうちに俺は寝てしまった。




