第1章04話 魔力がー
サキバさんの鑑定結果をドキドキしながら待つ。そのくせサンドイッチに手を出しているけど。
サキバさんは腕を組んで右手の人差し指でアゴをポリポリして考えている。
「そうですね……日本に住んでいたので魔力を使う機会が無かったのが原因でしょうか…魔力が全般的に弱っているみたいですね」
「それ、どうにかなるの?」
ハリーさんが聞くと
「なりますよ。まだ若いですから」
「じゃ、体調が悪くなったりしないなら出来る事は全部やってしまって」
俺がサンドイッチを食べているうちに、ハリーさんとサキバさんで勝手に話が進んでいく。
「能力ステータスとレベルポイントの在庫ありました?」
ミアさんにサキバさんが聞く
「有りますよ。冒険者ギルドに頼まれて仕入れたのが大量に」
「使っていいです? 少し注入してみないと鑑定しづらいんですよ」
「好きに使って。在庫全部だって構わないから。ミアさん転移装置持ってきて」
ハリーさんが指示するとミアさんが装置を手配した。
「最初に総魔力量を増やしますね。使わなかったんで少し総魔力量がしぼんでいるみたいですので」
サキバさんは俺を向かいあいに立たせて、両手をつないだ。
手が柔らかく暖かい。これだけで今日ここに来た価値があったと思った。
サキバさんの手から何か流れてくるような感触がする。
「抵抗無く広がりますね。柔軟性があるので、けっこういけるかも」
サキバさんと俺の間を何かが環流しているような感触が続く。
「初日にしては相当広がりますね。安全見て今日はこのくらいかな。魔力総量は二倍くらいになったかも。やはり魔族と日本人は相性がいいのかも、次回来たら忘れずにまたやりましょう」
「次は魔法の適正力を見ます。全種類調べますね」
サキバさんは持ち込まれた装置に座り、俺に装置の二つある水晶玉に両手をかざすように言った。
水晶玉が少し光りだし、俺の手に放電しているみたいに見える。
サキバさんは忙しそうに魔道具を操作する。
「あら,凄いですね…全種類入るかも」
サキバさんは楽しそうに言う
「本当に全種類入ってしまいました。レベルを少しずつ上げていきます」
「問題がなければ、剣とか弓なんかのレベルも上げておいて」
ハリーさんが指示を出す。
「わかりました。気分が悪くなってませんか?」
「全然。大丈夫です」
「じゃ、どんどんいきますね。気分が悪くなったら言ってください」
「ハーイ」
ハリーさんはミアさんの持って来た書類にサインしたり何か指示を出したりしている。
「ハリーさん、僕が仕事の邪魔になってませんか?」
「いえいえ、普段はそんなに仕事は無いのですよ。今日は例の大混乱で後始末の書類なんか来てますけど。これからは暇な時なんか、どんどん遊びに来てください」
ハリーさんは大きな商談の時や面倒事を持ってくる貴族達の相手くらいしか仕事が無いのだそうだ。
「時々は冒険者ギルドに行って討伐ミッションなんかもしますので、今度ご一緒しませんか?」
思いがけない誘いを受けてしまい驚いたが、大喜びで受けさせて貰った。
「終わりましたよ。凄いですー」
ハリーさんが俺の鑑定プレートを覗き込んで喜んでいる。
「これは良いな。次回でフルになるかな?」
「なると思いますよ。是非やってしまいましょう」
サキバさんが俺にプレートを渡してくれた。
見ると殆どのスキルがレベル99になっていた。
「これでまともな武器や防具が選べます。さあ行きましょう」
ただひたすらボーゼンとしてしまった。スキルレベル99に、こんなに簡単になるなんて…
廊下を歩きながらサキバさんが説明してくれた。
「滅多に無いことなんですよ。いきなり99までいくなんて。大抵途中で、その人の限界がきて止まるんですよね。そうですねー普通は最高でも60いくかいかないかですねー」
「日本の方だからかもしれないね。遺伝子や体質の関係も有るだろうし」
とハリーさんが考えながら言った。
「そうですね。種族による適正も違うし個人差も凄く影響しますから」
「国家的記録なのは確かだよ。まあ転生勇者さんみたいに、いきなりレベル999なんていうのも居るからね」
初めてレベルが99を超えられるものだということを知った。99で浮かれていると簡単に殺されるということだ。
長い廊下の突き当たりに武器・防具の部屋があった。俺にとっては宝の部屋だった。