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第3章06話 兵糧攻め


「兵糧攻めの予定は、どのくらい見てます?」


 ピーター隊長が聞いて来た。


「先ずは10日くらい見てみません? 攻めたって犠牲者が出るだけですよ。騎士団に犠牲者なんて出したく無いですよ」


 ピーター隊長は笑って頷いている。


「親父と兄貴に呼び出しくらった。ミノルが司令、アデルさんが副司令、ピーター隊長は軍事顧問ね」


「兄さん、それは無いですよ」


「親父の直接指示だもん。ホフマン家の誰かが責任者ならミノルしか居ないじゃない」


 手をヒラヒラさせてフェン兄さんが消え去った。

 アデルさんとピーター隊長が大笑いしている。


「食事時間だから爆撃して来ます」


 俺は警戒で見える赤い点に雷撃を落とし三往復くらいで帰って来た。

 土魔法で全ての門を封鎖し、ついでに城塞都市全域を明るくして、魔法防壁を張りワープで出入り出来なくした。


「ゆっくり食べさせ無い作戦ですか?」


 ピーター隊長が聞いた。


「そのくらいしか、やりようが無いですよ」


「結構良い街みたいだからな。余り壊さないで手に入れたいな」


 アデルさんが言う。


「ですよね。石造りの建物も多いし再利用可能な可能性が有りますよね」


「500年くらい前はホフマン家のものだったらしいですよ。何かが原因で放置されたらしいです」


 ピーター隊長が教えてくれた。


「隊長さん、家で風呂と食事でもして来たら良いですよ。全員居たって仕方無いですよ」


「良いのですか?」


「構わんぞ。する事が余り無い」


 アデルさんが言う。


「じゃ坊ちゃん何か有ったら呼び出して下さい。2時間以内で帰って来ますけど。家族と食事は久しぶりです」


 ピーター隊長が、ご機嫌良く消えて行った。


「あのまま閉じ込めておくのと、時々攻撃するのと、どっちが良いですかね?」


「面倒だから、暫くはあのままで良いのでは無いか。ワープで出入りされても困る」


「ですね」


 アデルさんも、やる気が無い。

 晩ご飯が館から運ばれて来た。ローストチキンと野菜のスープと黒パン。騎士団中隊長さんがウインクしてエールを置いて行った。

 美味しい晩ご飯だ。


 全員でヒマしているとピーター隊長が帰って来た。今度はアデルさんが風呂に帰った。


「騎士団の皆さん、毎日入れ替えしません? 負担が大きいですよ」


「良いですか?」


「構わないですよ。ピーター隊長の好きなタイミングで入れ替えてください。弓部隊の数さえ一定にして貰えれば問題無いです」


「弓部隊は20人の定数で入れてます。すみませんねミノル坊ちゃん。気を使って貰って」


「いいえ。どうせ長期戦でしょうから」


「何人くらい居ますかね?」


「上から見た感じでは、500~1000は居ますよ最低でも」


「毎日3台の荷馬車と考えると1000人くらいですか」


「ホフマブルグに攻める気だったのでしょうね。だから、うちは兵力を此処に割く訳にいかないと思うのですよ」


「此処に人を集結させる理由は、他に考え辛いですからな」


「でも、1000人や2000人でホフマブルグを落とす気なんですかねー」


「普通は3倍から5倍くらいの兵力で攻めますから間違ってはいないのです。ただし坊ちゃんとアデル殿の実力を知らないだけで」


 アデルさんが帰って来た。ツヤツヤしている。


「もう遅いからミノル君は、帰って風呂に入ってベッドで寝なさい。助っ人が来るとしても明日以降だろう」


「私もそう思います。坊ちゃんは帰って寝てください。何か有ったら呼びますから」


 お言葉に甘えて、帰って寝ることにした。

 風呂に入って明日からのことを考えていると、ノア兄さんが部屋に入って来た。


「済まん、音がしたので。少し話して良いか?」


「構わないですよ」


「ミノルはどう考えている?」


「明日以降、三日以内くらいの間に援軍が来る可能性を考えてます。それがアイラス教団の兵でも国王軍であろうと殲滅するつもりです。

 失敗すればホフマブルグが攻められますから。

 城塞都市の敵は餓死して貰う予定です。生かして捕虜にするには人数が多過ぎですし、追放などと甘い処理をすれば敵として戻って来るだけです。

 覚悟しておいてください」


「勝算は有るのか?」


「有ります。2000人が一斉に現れる力は無いでしょうから。また、それくらいなら簡単に殲滅する方法は有ります。

 でも、あの城塞都市を出来るだけ無傷で手に入れるのが目標ですので、派手な方法は避けたいのです」


「分かった。全て任せる。責任は親父と俺がとる。好きにやってくれ」


 ノア兄さんが部屋から出て行った。


 兄さんと叔父さんが大変だろうに。貴族相手の脅し合い、化かし合いはすでに始まっている筈だ。

 早く寝よう。明日から大変だ。昼まではヒマで困っていたのが懐かしく感じる。


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