第2章23話 Aランクになった
我々はワープで一気にギルドに帰った。
ゼンダさんがジグロさんに犠牲者の報告をし、オークの鼻を渡す。
「坊ちゃん、均等割りして良いのかい?」
「チームで行ったら全員で均等割りが原則じゃないですか。端数はチームの予備金にして下さい」」
「なんか何時も済まねーな。俺達全員Aクラスだから、もうポイントは必要無いんだ。坊ちゃん全部取ってくれよ。34体分有るから」
「良いんですか。有り難とう御座います。じゃ4体分はセリちゃんに」
ジグロさんが笑って魔道具を操作して配分した。
「34体で1体30万ですので、1020万。一人145万デル残りはチーム予備金口座に入れました。ポイントは30体分坊ちゃんで4体分セリさんです。セリさん1日でDランクですね」
セリちゃんが全員から拍手を貰って、真っ赤になっていた。
「坊ちゃんもプレートを返されたら、見る癖を付けましょう」
ジグロさんに言われてプレートを見ると、Aランクになっていた。
「坊ちゃんがAランクになっても、当たり前過ぎだよな」
「Bランクにいられると、他の連中が迷惑だよ」
誰も拍手はしてくれなかった。
「まあ、食堂でエールでも奢りますよ」
皆で焼き肉とソーセージを食べながらエールを飲んでいると、先に森に入ったチームのリーダーと他の二人だけ入って来た。
ジグロさんと少し話をして出て行った。
ジグロさんが俺達の所に来て言った。
「二人死亡、一人連れ去られです。あの人達はオーク2体分のお金を3人で分けて出て行きました。仲間を見捨てたようですね」
「連れ去られは?」
「女性魔術師です」
館の夕飯は相変わらず報告会だった。
「領内の村長に事情を伝え村民と農家などの徹底的な再調査を依頼してます。村から外れた農家を乗っ取りしていた事例も出ており、各村長も真剣に最近来た開拓民などを調べ始めております」
ピーター騎士団隊長の声にも疲れが出ている。
叔父さんも今日は一日中、寄子との打ち合わせで大変だったようだ。
「あのー、オークの件なんですが…」
「報告して。気になってたんだ」
ノア兄さんが俺に言った。
「今日は魔獸の森が、冒険者ギルド判断で立ち入り禁止となりました。強制力は無いので外部から来たAクラスチームが強硬に森に入ったのと、僕と地元のAクラスチームで昨日の行方不明チームの探索チームの2チームのみ魔獸の森に入りました」
「立ち入り禁止か……長引くと、また肉不足になるな」
「街道の心配も必要かと思われます」
ノア兄さんとピーター隊長の二人が懸念する。
「それだけなら良いのですが、連れ去られが発生したのです。それも女性魔術一名が確実、もう一名の女性魔術が行方不明です。僕は行方不明も連れ去られじゃないかと疑ぐってます」
「連れ去られですか!」
ミレン警備隊隊長が驚いている。
「昨日の女性魔術連れ去られは、強硬に森に入ったチームがオークに襲われて三人逃亡、二名死亡でした。僕達の行方不明探索チームは1時間半くらいの場所でオークメイジ数体を含むオークから攻撃を受け20体くらい倒しました、その場所で昨日の犠牲者5名の死体を発見したのですが女性魔術一名の死体が発見できませんでした。さらに1時間くらいの距離を奥に進んだのですが女性魔術の死体は発見できませんでした」
「まずい状況だな。何か手を打たないと騒ぎになる」
とフェン兄さん。
「人手不足を理由に放置は無理だよな。死人が多いし女性の行方不明と連れ去られが出ては無視は出来ないぞ」
ノア兄さんが諦めたように言った。
「辺境地域を数日放っておく? やっと目処が立って来たのに」
フェン兄さんが言う。
全員が沈黙状態になった。
天井を見てたり、目をつぶってたり、誰も提案が無い。
「あのー、素人考えなんですけど……」
俺が長い沈黙に耐えられず言った。
「ミノル、遠慮せず話せ」
叔父さんが発言を即した。
「行方不明が出たのでは、明日行動に出ないと評判悪いと思うのです。僕とギルド員で50体くらいは倒してますので、少し敵も薄めになっていますし」
皆さん、唸っているか俺を見ている。反対意見はない。
「明日、無理を承知の1日限りの大作戦しません?」
全員が俺を見た。
「明日1日だけ騎士団200人魔獸の森に投入して、辺境は警備隊の皆さんに任せます。警察活動ですから村長や村民と協力すれば何とか1日出来ると思います。騎士団の皆さんは魔獸の森で横列でオークを押して行き、僕とアデルさんが警戒でオークを空から攻撃します。どこかにオークの中継地か村が有ると思うのです。そこを叩けばしばらくは大人しくなるのではと思うのですが」
「休み時間があれば魔力も補充出来るな。二人では辛いな。サキバも頼めば良いな」
アデルさんが乗り気だ。
「山狩り型で行くには少し人数が足りません。冒険者ギルドに50人程頼めれば何とか。後、暗くなったた時とキャンプをするかが問題ですな」
ピーター隊長が否定はしなかった。
「立ち入り調査や捕り物なら警備隊で何とか出来ます。明日一日なら100人くらい辺境地域に出せますが」
ミレン警備隊隊長が乗って来た。
「暗くなったら精霊魔法で明るくします。キャンプはしないでワープで全員脱出です。250人なら騎士団にもワープ使える人達がいたと思いますし冒険者にも居るので2~3往復で撤収可能と思ってます」
「騎士団は確か50人くらいはワープ使える筈だ。全員脱出出来る体制は有る。ギルド員の能力しだいでせいぜい2往復だ。サキバは協力するそうだ」
アデルさんはサキバさんと連絡済みのようだ。
「冒険者ギルドは早い決定を求めてます。時間的にAランクとBランクで50人ギリギリ集められるかどうかだそうです」
「中継地か村は森の中心辺りと思ってます。何故なら森の反対側に魔獸の時も被害が無かったからです。一日で無理やり発見出来る可能性は有ります。失敗しても相当間引けると思うのですが」
俺は一応自分の予測を言っておいた。
発言は止まった。
皆、叔父さんを見ている。
「ミノル、魔力は持つのか?」
叔父さんが聞いて来た。
「1回1時間飛んで攻撃すると休み時間を30分くらいは取らないと3人が最後まで活動は難しいと思います。6時間の連続行進で森の中心辺りを越えてる筈ですので、最初から飛ばなくても1時間半くらいの地点から飛んで休めば8~9時間の作戦と考えてます。そこまでに中継地かオーク村が在れば成功です」
「なるほど……アデル、どう思う?」
「ミノル君の作戦で可能と思います。休みと食事を含めて10時間は超えないでいけると思われます」
叔父さんはしばらく考えて言った。
「作戦を実行する! 各員要請と準備を行い、明朝可能な時間から実行する」
皆で作戦の打ち合わせとなった。




