第2章13話 実験農場
俺とサキバさんは、現場を抜け出して街道に向かった。
二人で森を警戒しながら0.5メートルくらいの高さを飛んでいく。
並んで立った状態で前方に風避けにシールドを張った。
「これ、楽で良いですね。好きですこういうの」
俺も朝からデートみたいで楽しい。
時々二人のコントロールがバラバラになって、離れたりするのでサキバさんが手をつないで来た。
なんか凄く嬉しい。
街道は穏やかだった。森の中も街道側には魔獸がほとんどいない。
「街道は取り返したみたいですね」
「みたいですね。農場建設が、はかどります」
「ハリーさんが喜びますね」
「大喜びですよ。魔獸に相当イライラしてましたから。もう7月ですからね」
そうか、7月になったんだ。
我々は実験農場予定地に着いた。
森から出てすぐの場所だ。
広い!
街道の左側は水田のようだ。まだ水は張られて無いが、日本人ならすぐわかる。右手は豚舎だろう。
「だいぶ出来ていますね。あの先に見える右手の集落は?」
「今は現場作業員が住んでますが、出来てからは農場職員の住居になります。店なんかも有るし村みたいなものです」
「凄い規模ですね」
「ハリーさんが気合い入ってますから」
サキバさんが笑ってた。
サキバさんは事務所に寄ると言ってワープして行った。
俺は正門に戻った。
正門前広場はまだ解体作業で忙しい。
最後の貧困層向けの肉配布なので、人で混乱状態だ。
「ご苦労様。今日は大量の肉とメイジとティーマーまで大活躍だったね」
ノア兄さんが声をかけてきた。
「いいえ。強い助っ人が二人居ましたので、そんなに大変では無かったです。それより最後に出て来た巨大魔獸で今回の大作戦は黒字の可能性が大きいですよ」
「ホント! そうだったら嬉しいな」
「僕の時は角と皮がオークション行きで、凄い金額で売れましたよ」
フェン兄さんも黒字と聞いて嬉しそうにしている。
「それより、帰ったら気をつけろよ。親父と寄子が朝食会だから。皆、ミノルに会いたがっているから捕まると時間喰うぞ」
「そういえば、今晩はヘンドリックス辺境伯とシュナイダー辺境伯が来るぞ面倒を避けたいなら逃げろよ」
「そうそう。二人ともミノルが領地に来ているのに館に寄らないと、不満タラタラだった」
「良い情報助かります。ところで、街道は取り戻したみたいですよ。さっき見て来たけど、問題無く森を抜けれます」
「魔獸を片付けて貰って良い事ばかりだ。これで孤立から解放だ。ミノル、本当に感謝するぞ」
ノア兄さんがまじめな顔で言った。
朝飯はギルドで食べることにした。
ギルドには治療待ちもいない。
「坊ちゃん、大作戦ご苦労様でした。治療は役所から各ギルドに、医療資格問題が正常化するまで下位のランクは無料で病院が見てくれることになったんですよ」
「それは良かったですね!」
「はい。各ギルドがとても喜んでます」
ジグロさんと少し話してから朝食にした。ギルド御飯は久しぶりだ。
街が孤立していたというのに、野菜などは豊富に入っている。
近辺で栽培しているのかもしれない。
4人組が鹿のデブになったような魔獸を持って帰って来た。
今日はドジを踏まなかったようだ。4人とも俺に手を振っている。
平和が戻ったようだ。
「ボチャン、トレタヨ」
「良かったね、朝飯食べる?」
4人がガッツポーズで喜んでいる。
朝飯定食とエールとソーセージを頼んだ。
食べながら、話しをする。
「森の魔獸はどんな状態?」
日本語が上手なダークエルフの娘が答える。
「変なのいない。普通の。まだ数少ない」
「大きいのは、いないんだ」
「奥まで行けば、いる。強い人、言ってた」
「スライムとかウサギの魔獸とかは?」
「いるけど数少ない。増えるまで、あまり狩れない」
「他にもいるの?」
「奥にゴブリンいる。鳥とかオオカミとかイノシシとか」
だいぶ種類が戻ったようだ。
ノレルさんが大型のニワトリみたいのを持って帰って来た。
「坊ちゃん、お久しぶりでした」
「お久しぶりです。定食とエールでも如何です?」
「有り難いです」
定食とエールとソーセージを取ってあげた。
「薬草なんかは採れます?」
「皆、森に入れなかったので豊富ですよ。森に入る時、薬草依頼も持って行った方が得ですね」
どうやら巨額のアルバイトの時は終わったようだ。
全員にエールのおかわりを頼んであげてから、俺は館に帰った。10時を過ぎている。
風呂にゆっくり入って、歯を磨いてサッパリする。
今日は食堂に行かないのが良さそうなので、夕飯は外食にしようかな。
外は爽やかな7月の朝だ。
疲れがひどいので、寝ることにした。




