表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/223

第1章02話 アフリカの破産国並み


 陸奥銀行はガラすきで、広い空間に一人だけカウンターに男性職員がいた。

 箕輪さんだ。以前、父の部下だった人で三十五歳くらい、痩せた眼鏡をかけたインテリ風の異世界では数少ない日本人で、ナント日本のビジネススーツまで着ている。


「来ましたね。それも最高の日に」


「父の葬式には、わざわざ列席していただいて、すみませんでした」


「いえいえ。デル通貨に日本人が交換できるのも、今日の5時までという最高のタイミングですよ」


「で、今いくらくらいです?」


「1円が87000デル。少し前にここまで落ちて、現在は膠着状態ですね」


「そこまで落ちたんですか!」


 と、ノア兄さん。

 いつの間にかノア兄さんが来ていた。箕輪さんがPCのような魔道具を見ながら、念話で誰かと話している。


「今、98500くらいまで下がりましたねー。市場一時閉鎖の噂が流れています」


「じゃ、すぐに1億円換金してください」


 俺が銀行プレートを箕輪さんに渡しながら言うと、箕輪さんは俺のプレートを見ながら笑いながら言う。


「相場師だねー。今、1億を市場で換金すると王立銀行から睨まれるから、うちの銀行の決済でいい?」


「いいですよ。とにかく今日中にデルが必要ですから」


 箕輪さんは俺の銀行プレートを銀行用魔道具に乗せ、操作した。


「はい、9兆8千752億デル。ちょっとした国家予算だね」


「ノア兄さん預金プレート有ります?」


 箕輪さんがノア兄さんに陸奥銀行のプレートを要求する。王立銀行に入れると金の流れが見えてしまうし、急に課税とか言いかねない状況だそうだ。

 ノア兄さんは箕輪さんに陸奥銀行の銀行プレートを渡した。


「ミノル君、いくら振り込む?」


「1兆デルお願いします」


 箕輪さんは魔道具を操作してから、カウンターにそれぞれの銀行プレートを置いて言った。

「御確認ください」

 プレートを見ると、いちばん左端の数字が9から8に変わってた。


「ミノル君済まないな、弟に1兆デルもタカルなんて……」


 ノア兄さんが銀行プレートを見て、本当に済まなそうに言った。


「本当に気にしないでください。父も生きていたら必ず同じことすると思いますから。それよりノア兄さん、フェン兄さんに返済交渉の話し聞きました?」


「うん、さっき聞いたけど、ミノルが兄弟の中で一番貴族向けだよ。俺なんか考えてもいなかった」


 箕輪さんが『?』という顔をしてたので、借金値引き交渉の説明をする。


「いい方法だと思いますよ。私も30%はいけると思います。強気で、絶対に弱気になってはいけません!」


 箕輪さんのアドバイスにノア兄さんは強く頷いた。


「借金取りは何人くらい来ているんです?」


 と俺が聞くと、ノア兄さんはウンザリした顔で言う。


「マイヤー商会除いて全員さ。20人くらいかな。返済は何時でもいいですとか言っていたくせにね…食堂に居座っているよ」


「マイヤー商会さんも今日でお仕舞いリストに入ってますね。未確定ですか3兆近い負債という情報が載ってますね」


 箕輪さんが銀行用魔道具を覗きながら言う。


「あそこに破産されると辺境伯領の経済がガタガタになるんだよね……困った……」


 ノア兄さんが真剣な顔で言う。


「3兆なら俺、助けますよ。辺境伯領がガタガタになったら困るもの。すぐ、ここに呼んでもらえます?」


 ノア兄さんは俺に頷いて連絡をしている。


「陸奥銀行のプレート持ってすぐ来るって……済まないなミノル」


「じゃ、ノア兄さんは帰って借金返済交渉ね。俺はミノルの相談役でここに残るから」


 とフェン兄さんが言うと、ノア兄さんはフェン兄さんを睨みつけてから、ため息をついてから俺を見て真剣な顔で言った。


「マイヤー商会と話しを進める時、不動産を担保とか買い取りみたいになった時、辺境伯領以外の物件を受け取ったら駄目だよ。領内の事ならどうにでもなるからね」


 俺が頷くとノア兄さんは『じゃ、後で』と言うとスッと消えた。


 ノア兄さんと入れ違いでマイヤー商会の人が3人現れた。


「ミノルさん、お久しぶりです」


 太り気味だけど背が高い、いかにも商人という感じのロングジャケットを着た50歳くらいの頭の良さそうなオジサンが挨拶をした。


「ハリーさん、お久しぶりです。お呼びして申し訳ございません」


「とんでもない。そうそう、息子のパトリックと番頭のレオンです」


 お互いに軽く会釈してから3人はダニエルがカウンター周りから集めてきた椅子に、ダニエルに恐縮しながら座った。


「こんな時なのでさっそく用件になってしまいますが、辺境伯の借り入れはどのくらいになります?」


 ハリーさんが番頭さんから書類を受け取って、確認してから俺に渡した。

 俺が箕輪さんを助けを求めるように見ると、笑いながら書類を受け取ってパラパラと見て


「1500億デルですね」


「じゃ、とりあえず、それ払います」


 と俺が言うとハリーさんが陸奥銀行のプレートを箕輪さんに渡した。


「1500億デル移動しました。御確認ください」


 と言ってハリーさんにプレート、俺にハリーさんが持ってきた書類を渡した。

 借用書だったようだ。

 俺は書類をフェン兄さんに渡すと、済まなそうに受け取った。


「有り難う御座います。期限前なのに気を使っていただいて」


 とハリーさんは銀行プレートをしまい始めた。


「待ってください。今日来ていただいたのは、もっと違う用件なんです」


 と俺が言うと、ハリーさんは『?』という顔をする。

 ノア兄さんは何も説明して無いようだ。


「失礼ですが、マイヤー商会さんが本日というか、返済しなければいけない金額はどのくらいなんですか?」


 箕輪さんが聞いてくれた。助かった~

 ハリーさんは箕輪さんを、しばらく見てから


「2兆6000億を少し切るくらいですかね」


「マイヤー商会さんに、どこからか資金が入ったとして、それを返済して商売の資金は有るのですか?」


 箕輪さんの突っ込みにハリーさんは笑いながら返答した。


「厳しいですな。無いのです。辺境伯様から返済いただいたのを考慮しても、あと6000億は必要でしょう」


「3兆2000億デルですね」


 と箕輪さんは言うと、俺に向かって『どうする?』という顔をする。


「3兆2000億払ってください」


 と俺が言うと、箕輪さんはハリーさんにプレートを要求するように手を差し出す。


「条件や細かい話しは後にして、今はこの状況を乗り切ってしまう方が良いと私は思いますが」


 箕輪さんの迫力満点の説得にハリーさんは黙って銀行プレートを出した。


「3兆2000億デル移動しました。マイヤー商会さんの大逆転ですね」


 箕輪さんはニッコリとしてハリーさんにプレートを渡した。


「王立銀行さんがコソコソ何かやっているとの噂もあります。すぐに動いた方がいいですよ」


 箕輪さんイケメンだわー。俺は惚れ惚れと箕輪さんを見ていた。

 ハリーさんはパトリックさんに銀行プレートを渡すと、パトリックさんと番頭さんのレオンさんは深々と俺に礼をして、何処かへとテレポートで飛んで行った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ