第2章10話 アデルさん魔力増加
夕方の4時30分頃目が覚めた。歯を磨いて聖樹に行く。昨日と比べてより植生が豊かになった。
聖樹の周りを飛んでいる妖精の数も少し増えている。
「妖精さんこんにちは」
返答が無くても挨拶をしておく。
聖樹に向かって精霊様にお詣りして森に出ると、豊かになっている。
芝生みたいだった下生えが色々な植物に変わってウサギの数も増えた。
小鳥がさえずり木々の葉も増えてスカスカでは無い。
聖樹が地脈の本流と繋がるということは、こんなに変化をもたらすものなのかと感心してしまった。
明日が楽しみだ。
部屋に帰り食堂に行く。
顔ぶれが揃っている。
叔父さんが話しかけてきた。
「ご苦労様。疲れたろう。儂は他用で手伝えなく済まない。さっきまでヘンドリックス辺境伯が来ていてな、ミノルに直接挨拶が出来なく残念と言っておった。昨日の感謝もしておったぞ。昨日、ミノルが勧めたという、ホフマン家とヘンドリックス家の共同歩調を取ることに決定した。ヘンドリックス辺境伯は、今シュナイダー辺境伯と話しに行ったところだ」
「それと先程、アイラス教団のホフマン辺境伯領からの追放が決定した。寄子も同じ状況なので反対をして来る貴族も今のところ居ない。別に一緒にやれと言っている訳でも無いしな」
「少し、胸がスッキリしたよ」
ノア兄さんが笑って言った。
「寝ている間に随分話しが進んだものですね。でも、この共同歩調で王家も軍を出せなくなるし、上手く行きましたね」
歴史の本などに書いてある典型的パターンだ。ただでさえ地方に軍を出す金なんか無いのに、分散なんて出来る筈が無い。
「かえって安全になったよ。ミノルお手柄だよ」
フェン兄さんがご機嫌だ。
「ところでミノル、今晩も余程獲物が無い状況でなければ実行したいんだが……後少しで失われた肉の在庫が戻せるんだよ」
ノア兄さんが困ったような顔をして言う。
「良いですよ。今日も魔獸が出てくるなら、オークティーマーとメイジが現れる可能性が高いですし、奴らの魔獸モドキの在庫を無くすチャンスだと思います」
皆さん頷いて同意している。
「済まんな。魔力が少ないので役にたたん」
隣りでアデルさんが言う。
「両手出してください」
両手をつないでいると魔力が流れ始める。確かに魔術師としては少し少ない。魔力を流し込んで行くと少し膨らんだような感じがしだした。
どんどん流し込んでいくと順調に膨らみ始める。アデルさんが驚いた顔をしている。1.5倍くらいになった感じがする。
「最初ですからこれくらいですかね。何回か空にして、またやってみましょう」
「凄く増えた気がするぞ!これなら相当使える!」
「魔力をケチって使えば相当使えますよ。例えば僕は警戒で相手の範囲を決めて、雷撃を範囲魔法として使います。1発分の魔力で済みますよ」
「そんな方法が有るのか!始めて聞いた。ありがとう。使ってみる」
「あと、初級魔法を連射するとイイですよ。詠唱を短く出来るし。ファイヤーボールなんかじゃ無く氷弾がお薦めです。連射されると相手が守勢になりますから。風を面にして相手にぶつけて吹き飛ばすのもイイです。どれも魔力消費が少ないです」
「さすが精霊の守護者だわ」
叔母さんが嬉しそうにしている。
「知っているのですか?」
「気が付かない筈が無いでしょう。お母さん誇りに思うわ。こんな騒ぎでなければ、大御披露目パーティーするところよ」
「お母さん披露目ないでください。また襲ってくるのが増えます」
「ミノル、隠せると思ってるの? 街の半分くらいは、もう知っていると思うよ」
フェン兄さんが笑って言った。
夕飯を取りながら珍しく歓談となり御開きとなった。
「魔力を増やしてみたい方は、いつでも言ってください」
と最後に声を掛けたら、ピーター隊長とミレン隊長が立候補してきた。
職業柄、当然増やしたいだろう。
「年だが増えるかな?」
ピーター隊長が心配そうに言う。
「とりあえず、やってみましょう」
なんと増えた! 1.3倍以上にはなった。まだ増える可能性があるので、またやることにした。
嬉しそうにしている隊長を見るのは久し振りだ。何時も怒っている印象が強い。
ミレン隊長は1.7倍くらいになった。まだ増える可能性を伝えると喜んでいた。
殖やしてあげる側の魔力が大きいと、増える率が高くなるみたい。
部屋に帰ると8時くらいだった。魔力増加作業で疲れた感じがしたので、ブーツを脱いでベッドに寝ころんでいたら寝てしまった。
11時にミリーさんが起こしてくれた。フェン兄さんの伝言で、1時に開始、サキバさんには連絡済みだそうだ。
「坊ちゃん、お気をつけて」
ミリーさんが一声かけて出て行った。
何時もありがとう御座います。
風呂に入って歯を磨く。ゆっくり温まる。サッパリした。魔力は完全に戻っている。
服は汚れを考え黒。装備を整えて丁度0時。正門に飛んだ。




