第2章08話 サキバさん絶好調
魔獸の数は昨夜と同じということで、今晩も大作戦実行となった。
皮チョッキを着て、矢入れに矢を補充して準備完了。
0時になったので、早めに正門に行く。
サキバさんが本当に手伝いに来ていた。
嬉しいな。この人の温和な感じが大好きだ。
今日は濃い青のローブに魔石の付いた魔法杖。ポニーテールの魔族のお姉さんは素敵だな。
なんで俺の周りに同世代でこういう人が出てこないんだろう。
「頑張りますわ。魔力が先に無くなるでしょうけど」
「サキバさんの方が強いですよ」
「精霊の守護者に勝てる訳無いですよ」
笑って言う。
「なんで判りました?」
「この国では、そのメダルを見れば子供でも判りますよ。絵本とか昔話の主人公ですよ」
「そうだったんだ」
今日の作戦を話しあう。
魔獸の密度が昨晩と同じくらいあるので、密度の高い所は俺が範囲魔法連射で片付けるので、残ったのを一緒に片付けるということになった。
「新型魔法を使ってみたいんですよ。日本の本からヒントを得た、真空切りというかカマイタチというか。魔法消費が少なく大量に叩けると思うのですが」
サキバさんが、同意を求めて言う。カワイイ! 何んでも使って下さい。
「サキバさん、壁の上からやります? 見やすいかも」
「いえ、一緒に出ます。周りに注意出来るし追えますから、数を稼げますよ」
作戦をピーター隊長に伝え、正門に行く。警戒で見ると門の7メートルくらいに4頭いて10メートルくらいから沢山いる。
「あの4頭私にください」
嬉しそうに杖を用意した。
俺も弓を用意して準備完了。
深夜大作戦の始まりだ!
「行きます!」
俺が言うと人用の門が開いた。
俺達は同時に飛び出し、サキバさんが杖を横に振ると大型クマがザクッと4頭連続で切れて倒れた。
カッコいい! 俺も今度真似しょう。
俺は密度の高い所を狙って雷撃を範囲で4発連射した。だいぶ数を稼いだ。
サキバさんが残ったのを、サクサクまとめて刈っている。
なる程、1度の魔法発動で沢山刈れる。狩ると言うより本当に刈る感じだ。
俺は矢を連射して残りを狩る。
落ち着いてから明るくしてないことに気がついた。
半径100メートルくらいが薄い青の光に包まれた。
「精霊魔法だー! 初めて見ました。いいなー」
サキバさんは俺に微笑んで言う。
相当年上の人に言ったら失礼かもしれないけど、カワイイ!
俺達は少し先に進んで魔獸が寄って来るのを待つ。20メートルくらいまで引きつけ、範囲で雷撃をまた4発。サキバさんが余りをサクサク。
「全部、私にください」
「どうぞ」
サキバさんが杖を横に振るとバタバタと大型クマさんが倒れる。
「見ていて清々しいですね」
「有り難う。私も気持ちイイです!」
あっさりと70メートル近辺に獲物がいなくなった。
正門が開き馬車と騎士団と警備隊の皆さんが飛び出して来て、素早く回収作業を始めた。
まだ2時だった。
「相当狩りましたから、回収作業に時間が掛かると思います。サキバさんは帰りませんか」
「私、朝までやりますよ! ハリーさんにも明日は来ないで良いから手伝うように言われてます。明晩もするなら来ます!」
サキバさんは相当気分がのっている。
俺達は回収作業の警備をして、作業の終わるのを待つ。
「一時撤収」
ミレン隊長の号令で、全員正門内に戻った。
「ミノル坊ちゃん。作業が全然追いつかないので3時30分に再開にせざるを得ない状態です。人数は増やしたのですが、獲物の数が現在で73頭ですので」
ピーター隊長が言って来た。
「構わないですよ。サキバさんが後半も手伝ってくれますし」
ピーター隊長は嬉しそうにサキバさんに礼を言って仕事に戻った。
正門前広場を明るくして、正門の外の明かりを消した。
「しばらく暗くしておくと、寄って来てまた魔獸密度が上がるんですよ」
サキバさんがフーンという顔で俺の説明を聞いている。
広場は解体作業に大忙しだ。猟師さんも何人か手伝いに来ていた。
「お茶とサンドイッチが、正門詰め所に用意してあります」
ミレン隊長が呼びに来てくれた。
サキバさんと一緒にお茶に行った。
サンドイッチは鳥と香辛料を利かせた肉の薄切りを挟んだもので、全部昨晩の戦利品だそうだ。
「美味しいですね。この薄切り肉好き。クマと思えない。兵隊さん料理上手」
サキバさんはニコニコしてサンドイッチを食べる。
警備隊の人も綺麗なお姉さんに誉められ、嬉しそうだ。
確かに臭みが感じられなく美味しい。
サキバさんと真空切りの話しをしているうちに時間が過ぎた。
小さな薄い真空の層をイメージしてサンドイッチを切ってみる。
確かにスパっと綺麗に切れる。使えるかも。
「今のどうやったんです?」
サキバさんが聞いてくる。
「刃自体を薄い真空の層にしてみたんです。刃の長さを自由に変えられますし」
「それ、良いかもしれない!」
サキバさんもやってみる。2~3回サンドイッチで練習して上手くいきだした。
「これ、私も使って良いです?」
「どうぞ。好きに使って下さい」
すごく喜んでくれた。
サキバさんは空気の密度を、刃を意識した場所の上下で変えていたそうだ。
それも良い考えだなと思った。
後で余裕があったらクマさんでも切ってみよう。




