第2章05話 肉集め大作戦
被害が判明したのは1時間後の夜の11時頃だった。
「肉が腐っているという報告が多数入っています」
ピーター騎士団隊長によると、家庭や食堂・宿などから在庫の肉が腐っているという報告が多数上がって来ているらしい。
館の周囲はアデルさんがバリアーを張ったので逃れた。
俺とサキバさんが呪い除けを連射した周囲も無事らしい。
新任のミレン警備隊隊長によると、中央近辺は被害が少ないという。
館の食堂を使って、緊急会議が招集された。
何故か俺も呼ばれる。
辺境伯・ノア兄さん・フェン兄さん・ピーター騎士団隊長・アデル魔導剣士・ミレン警備隊隊長・俺が夜の12時近くに集まった。
夜食にサンドイッチが出てたので、俺だけ食べている。
「住宅区域は全滅と考えるべきでしょう」
ノア兄さんが真剣な顔で言った。
「商業地区も中央から少し離れた所は駄目みたいです」
ミレン警備隊隊長が言う。
「簡単に予想して、最低でもホフマブルグの70%の人達が朝に肉が無いと言って大騒ぎになると考えられるね」
フェン兄さんが言った。
「館の在庫や周囲の村から集めるとしても、とても足りません。70%の人達に1キロの肉を配っるとすると14000キロの肉です。街の周囲は現在魔獸に囲まれている状態で、肉を運べるとは思えません」
とアデルさん。
俺はそっと次のサンドイッチに手を出す。
「14000キロだけでは無く、明日の肉を確保しないと」
ノア兄さんが悩む。
「少なくとも朝の14000キロを確保し、無料配布するくらいしないとな」
とフレードリッヒ叔父さん。
皆、真剣な顔で沈黙する。
「狩りしません? 朝まで」
「囲まれている状態なんだぞ」
とフレードリッヒ叔父さん。
「だから楽なんですよ。1頭200キロとして70頭でしょう。僕はいつも朝10頭は最低でも狩りますもの、1時間くらいで。密集しているなら、いけると思いますよ。僕が狩ればお金掛からないし。無料配布するんでしょう。毛皮売れば経費も出るかも」
次のサンドイッチを手に取る。
「その代わり、騎士団と警備隊で獲物を回収して解体して下さいね」
「警備隊には元冒険者や猟師の息子もいるから、出来ないことは無いです」
「じゃ、やってみません? 失敗しても何もしないより良いですよ」
「どんな風にやる?」
フェン兄さんが聞いてきた。
サンドイッチを飲み込んでから答えた。
「そうですね。壁の上からの方が安全ですけど、壁の周りに魔獸が溜まると思うんですよ。だから僕が飛び出して、正門の周りから片付けます。正門の周り半径60メートルぐらい片付いたら、獲物を正門の近くに集積して馬車を入れるタイミングを見ましょう」
サンドイッチに手を伸ばすと、全員俺の手を見ているので手を引いた。
「集めている間僕が監視しますので、離れた所で危険を感じたら大声出して下さい」
「見えるのか?」
叔父さんが聞いてきた。
「僕は見えますけど。光、出します?」
結局、他に案も無かったのでそれで行こうということになった。
準備の関係から夜中の2時からの大作戦となった。
ポケットにサンドイッチを入れると、ミレン警備隊隊長に正門に用意させますと言われてしまった。
正門前でピーター隊長から作戦説明。
騎士団と警備隊で100人以上いる。
残りの人員は街の警備だそうだ。
俺は人間用の小さい門の前に行き、警戒で外を調べる。けっこうな密度でいるが門から10メートルぐらいには居ない。
弓を念のため左手に持って
「行きます!」
開いたゲートから飛び出し光が欲しいと念じると、半径100メートルぐらいまで薄い青の光に包まれた。
魔獸は驚いたようにキョロキョロしている。
近くで密度の高いところに範囲で雷撃を飛ばしていく。
4発雷撃を連射して、残ったのを弓で片付けていく。光が怖いのか余り寄って来ない。
70メートル辺りに残ったのが8頭くらいバラバラに突進してきた。
出来るだけ引き付け矢で倒してゆく。最後の二頭は間に合わなかったので、俺が飛び上がって空中から矢で仕留めた。
「皆さん、お願いしまーす」
正門が開き騎士団と警備隊の混成隊と馬車が飛び出してきた。
6人チームで片端から大型クマさんや、大きなオオカミモドキを集めてくる。でかい黄色の太ったニワトリみたいのもいた。
さすがに手際が良い。
どんどん馬車に載せていく。集積はしないようだ。次の馬車が出てきて、最初のが中に戻った。
「いろいろ混ざって50匹くらい。もう少しだな」
アデルさんが教えてくれた。
「明るいから余り寄って来ないですよ。暗くして少し休み時間取って集めてから再開した方が効率的と思います」
「そうだな。ピーター隊長と話すよ」
と言いながら歩いていった。
集め終わったようだ。正門の周り以外に人は居ない。魔獸もチラチラ程度。
「休息! 全員中に入れ」
俺も中に入り、外を暗くした。
正門前の広場は魔法で明かりを入れていたが、解体している人達には暗そうだったので明るくした。
ミレン隊長がサンドイッチに呼びに来てくれた。




