第2章04話 精霊の守護者
夜、早めに寝ようとベッドに入って意識が無くなりかかった時、地震を感じた。
この世界では地震はとても珍しい。
ベッドから出て、ベランダから外を見ると森の中央辺りがぼーっと青く光を放っている。
聖樹に何か有ったのか心配になり、行ってみることにする。
服を着て剣帯とマントを身に付けワープした。
聖樹は自ら淡い光を放ち、周囲に白い光の粉のようなものを降らせている。
俺は呆然と聖樹をしばらく見ていた。
レナ叔母さんが言っていたように、地脈に根が繋がったのかもしれない。
俺は柏手を打ち、拝んだ。
「地脈に根が届いてますように」
「届きましたよ」
何と返事があった!
念話とは違い、心の中に響くように聞こえる。
じっと聖樹を見ていると、光の粉が集まって女性の形になって見えた。
「先ほど本脈に届きました。長く良く見守ってくれましたね。もう聖水の助けは無用です」
女性が俺に微笑んだ。
「この樹が復活したことも、これで邪悪なるものにも知られました」
「私の力は、まだまだ足りません。貴方は力を貸してくれますか?」
「はい喜んで!」
「では働けるよう力を授けましょう」
青い光が俺を包み、ゆっくりと渦を巻いたように光が動く。
「これで貴方は『精霊の守護者』となりました。貴方は地脈の本流からも魔力を得られ、精霊魔法の使い手となります」
「近くに」
俺は精霊様に近づいた。
「精霊の守護者の証です。無くすことはありません。証から帰ってくるでしょう」
精霊様はメダルを首にかけてくれた。
「有り難う御座います。頑張ります!」
精霊様が微笑むと精霊様を形づくっていた光の粉が拡散し精霊様が消えた。
青く淡い光と白い光の粉はそのまま漂っていた。
部屋に帰ってメダルを見る。鎖は顎と鼻にかかり外すのに苦労する長さになっていた。
首から外すと、鎖は次かけ易い長さになっている。
メダルは直径3センチ超えるかな? 厚さは3ミリも無いくらい。すごく軽い。
金色と銅色の中間みたいな色で金属のような樹脂のような変わった素材でできている、内側は透けて葉が浮いている。
じっと見ると、葉の大きさがメダルの大きさを超え立体的に見えてくる。
不思議なメダルだ。
首に戻しておく。
個人プレートを見ると、全てのスキルが200になっていた。
一番下に別枠で『精霊の願い』と表示されている。
これが精霊魔法のようだ。
名前の上に『精霊の守護者』の表示が出来ていた。
ナンカ責任重大なものを引き受けたようだ。
窓の外に青い光のドームが急に現れた。バリアーだ。
森全体にバリアーがかかった!
表から獸のような吠えと人の大声が聞こえる。
もう襲って来たのか?
ベランダから飛び出し、音の方向へ飛ぶと館の近くの広場に、ローブを着て魔法杖を持ったのとオーク三体にアデルさんと騎士団員5人が駆けつけているのが見えた。
俺は騎士団の前に降り、いきなり氷弾を前方に連射し中剣を抜き正面のオークを切りつけた。
オークの首と剣を振り上げた右手をまとめて切り落とし、ローブを着たのとオーク二体に雷撃を叩き込む。
オークは倒れたがローブを着た奴はバリアーを張ったので、すかさず雷神を落とすとバリアーに割れが入った。
割れ目に思い切り剣を振り下ろすと、バリアーが壊れ相手の左側肩口に当たった。
バリアーで剣筋がそれたようだ。そのまま剣を引き心臓を狙い踏み出して体重をかけて剣を突いた。
俺の剣が敵の心臓に刺さる前に、視界の端に何か杖から打ち上げたのが見えた。
敵を突き飛ばし、剣を相手の胸から引き抜き空を見上げると黒紫の丸い光体が上っていた。
「呪いだ!」
アデルさんが叫んだ!
俺は対抗に呪い除けを撃ったが、先に黒紫の光球が炸裂した。
アデルさんは館にバリアーを張る。
黒紫の光粒が落ち始めたところに俺の呪い除けが炸裂し、黒紫の光粒を消してゆく。
マズい。消しきれない! 遅れた!
マイヤー商会の方からも、広範囲の呪い除けが撃たれた。サキバさんだ。
俺は低い高度で呪い除けを三発連射しできる限り対抗する努力をしたが遅かった。
少量が街に降ったようだ。
「少し食らったな」
アデルさんが顔をしかめて言った。
サキバさんが現れた。
「何の呪いでしょう?」
ノア兄さんが現れ、俺の足元の死体を見て言った。
「アイラス教団みたいだな。ローブの色が黒だが」
死体は黒のローブに赤い八芒星が左胸に刺繍したのを着た老人一歩手前の男だ。
「アイラス教団の呪術師ですね。凄く強い人です。一人だけで街を簡単に火の海にできるくらい。まさかアッサリと殺されるとは思ってなかったのでしょう。証拠を残し放題ですね。ホフマブルグを滅ぼす予定だったのかも……」
とサキバさんが言った。
「雷好きの坊やに瞬殺されるとはな」
アデルさんが笑って言った。
俺以外の全員が笑っていた。
瞬殺では無かったし雷が好きな訳では無い。
ピーター騎士団隊長が現れ騎士団員に、街の被害を確認するよう命令した。




