第2章03話 7月
朝に聖樹に行って聖水を撒き、拝んでからあお向けに寝転んだ。
青空が広がり、白い雲が泳ぎ綺麗だ。
つい考え事にふける。
この世界に来て3ヶ月、アニメみたいな美少女の魔法使いにも会わないし、美少女の貴族の娘にも縁がない。
ギルドに居るのはだいぶ雰囲気が違うし、貴族の娘は何か温かみに欠け……ナンカ違う。
もう嫁に行く年齢だから、貴族の娘などは打算的に感じるのも仕方ないんだけど。
でも周りに女の子いないよな。
まあ日本でも中等部に行ってからは男子校だったから女の子とは無縁だったし。
女性というと、幸代ねえちゃんくらいだったな。幸代ねえちゃんは、隣りに住んでいる6歳年上のチヨットだけ美人。
タマゴ型の顔に肩まで伸ばしたサラサラ髪が良く似合っていた。
子供の頃からイジメられると相手を殴って来てくれたり、頭が良いので勉強を教えてくれたり、ダニエルが相当世話になった。
ダニエルのお嫁さん候補ナンバーワンだったが、俺達が高等部に入った時に我が家が引っ越したので会わなくなってしまった。
こっちでは、美人魔術師のマネさんがギルドで声をかけてくれる。
「おう、坊ちゃん。する気になったら言え。服を剥いで胸も見せた仲ではないか」
やはり、チヨット違うと思う。
起き上がり、聖樹に良い日が来るよう願ってギルドに飛んだ。
今日のノルマは魔人とダークエルフの娘二人だけだった。
二人とも礼を言って、狩りに出て行った。
まあまあ良い装備を買ったようだ。
今日は歩いて正門まで行った。本当にのどかな日だ。
門の警備隊の人と挨拶して外に出てみる。
魔獸は森から出て来て無いようで、皆おびき出して狩りをしていた。
顔見知りが数人、俺に手を降って挨拶してくれる。
森から正門につながる道を白い馬に乗ったアデルさんと、やはり騎乗した5人くらいの騎士団の人達が走って来た。
アデルさんが俺を見て笑って片手で挨拶する。騎士団の人達も片手を上げる。
騎乗スピードからして随分余裕だなと思いながら俺も笑って挨拶を返していると、警戒に20以上の敵反応が…
森の出口から大型のオオカミの群れが、アデルさん達を追っていた。
あのアデルさんの微笑みはこれだったのかよ。
俺はワンドを出して、警戒能力を使って範囲を決め、少し溜めてから『雷撃』を打った。
「ドドドドーン!」
20本以上の雷が凄い光を放ち、でかい音をたてて落ちた。
オオカミ達は全滅させたようだ。まだ煙りのようなのがオオカミ達から上がっている。
アデルさんが馬に乗って俺の側に来て
「ミノル君、良いところに居た。今日も良い雷だ。助かったぞ。良い子だ。愛しているぞ!」
笑って騎士団の人達の方に戻った。
騎士団の人達も手を振ってくれた。
愛して貰うのは嬉しいがナンカ違う。
「ボチャン、スゴイ、ツヨイ!」
獸人の娘が三人見物に来て、誉めてくれる。
ジグロさんが馬車で走って来た。
「凄い音がしたのでミノル坊ちゃんと思いまして。片付けておきますから」
獸人の娘が獲物無しみたいだ。
「獲物は?」
全員で首を横に振っている。
「弱そうなのがいないの?」
首を縦に振る。
「ナンカ引っ張っておいで」
と言うと大喜びでクマを引きに行った。
大きいのを引き連れて走って来たので倒してあげた。
「全部あげるよ」
三人は尻尾を振って歓声をあげ大喜びしている。
正門から街に入ると警備隊の人達が拍手をしてくれた。ナンカ恥ずかしい。
大通りを歩いてギルドに向かう途中、屋台で梨と桃の雑種みたいのをジュースにして売っていたので買う。
「もうこんな季節なんですね」
「すぐに7月ですぜ、坊ちゃん」
「そうなんだ。相変わらず美味しいです」
「毎年、買ってくれてアリガトよ」
子供の頃から夏休みに買っていたのを覚えていてくれた。
途中でギルドの馬車に追い越されたら獸人の娘達もクマさんと一緒に乗せて貰っている。調子の良い奴らだ。
フラフラ店を覗きながらギルドに着くと、計算が終わっていた。
「大型オオカミ24頭でした。大きくて傷無しですので毛皮が高いですね。経費を抜いて全部で714万デルです。プレートをお願いします」
凄い金額が狩るたびに入ってくる。
金銭感覚が狂ってしまう。気をつけないと。
まだ昼頃なのに、する事が無くなった。
館に帰ってミリーさんにサンドイッチを作ってもらい、部屋で食べた。とても美味しい。
満腹になり椅子に座って空を見ているうちに寝てしまった。




