表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/223

第2章02話 リリアドルフでコーヒーモドキ

 俺が最近凝っているのが重力魔法で身体を浮かすことだ。

 3週間程頑張って、館の屋根に飛び乗ったり飛び降りたりできるようになった。

 館を飛んで一周するくらいは出来るのだが、重力コントロールが下手で魔力消費が大きく実用的ではない。

 この1週間くらいでだいぶ改善されて、魔力消費量は半分くらいにはなったのだが、まだまだだ。

 飛ぶ人が周りにいないので、試行錯誤中。

 夕食前の30分くらいは、この練習ばかりしている。


 今日の朝食は異変があった。

 ダニエルの席が無くなった。

 そのことに関して誰も言及しない。

 なんか聞くのもタブーみたいな感じで、黙っているしかなかった。

 皆、普通に会話をしながら朝食をしていた。


 ダニエルはこの二ヶ月くらいずっと病気で帰れないままだったし、念話にも返答がなかった。

 レナ叔母さんにも、ノア兄さんやフェン兄さんにも返答しなかったようだ。

 あのオバチャンと駆け落ちでもしたのだろうか?

 食卓に席が無くなってみると、来る時が来たような何とも言えない気分だ。

 俺達は、そろそろ17歳。

 日本の高校生気分でいるが、こっちでは成人して2年も経った大人だ。

 そのように扱われる。

 ダニエルがそれに気付いていたのだろうか?

 自分で解決するしか無いよな。



 気分が悪いまま聖樹に向かった。

 深呼吸を数回して気分を変える。

 聖樹に聖水を撒き、柏手を打って神様・精霊様にお祈りしていると気分も晴れてきた。

 早く地脈に根が届くといいな。


 俺は一礼してギルドに飛んだ。

 今日は4人しか怪我人がいなかったので、治療はすぐに終わった。


 ジグロさんと話すと


「やはり下のレベルの娘達に、まともな武器が行き渡ったのが大きいと思いますよ。皆感謝してます」


「それより、あの大型角と毛皮のオークション結果が出ました。3頭分で2400万デルですね。ギルド手数料10%とオークション税10%引いて1920万デルです。ギルドプレートをお願いします」


 高くてびっくりした。

 こっちに来て、自分で稼いだお金が増えている。

 やはり、こっちだと大人なんだなと思った。


 今日は狩りをする気が何となく起きないので、リリアドルフに行くことにした。

 リリアドルフは、フェン兄さんに頼まれて捜査のために騎士団の人達の運び役で連れてきてもらった。

 ホフマン辺境伯領内唯一の港町だ。

 魔人の国が隣に有り、交易も盛んなので魔人の人が結構多い。

 異国情緒に溢れる港町で、坂道の突き当たりに港が在り道の両側に役所や商店が立ち並ぶ。


 桟橋に面した所に食堂が在り、カフェテラスがついている。

 何と、ここでコーヒーモドキが飲めるのだ。

 輸入されている豆で出すのだが、コーヒーの味に似ている。

 俺は1ヶ月くらい前に見つけ、時折飲みに来ている。

 店には商人が多く、商談してたり食事をして書類を見ている人が多い。


 コーヒーモドキを飲みながら海を眺めぼーっとする。何か気が休まる感じがいい。桟橋に帆船が停泊している。

 あの船は何処から来たのかな? 海老塩焼きでも食べようかな、などと取り留めの無いことを考えて時間を潰す。


 肩を叩かれた。振り返るとパトリックさんだ。


「ミノルさん、妙な所で会いましたね」


「パトリックさん、こんにちは。座りません?」


 パトリックさんはニコニコとして、隣りに座った。


「今日は商談で、商品の確認もあったので」


「僕はコーヒーモドキを飲んでぼーっとする為に」


「それは面白い。こっちでは、そういう時間潰しをする人が少ないです。暇なら食事でもいかがです? 私は予定が終わりましたから」


「良いですね。今日は有るかな……カニ好きです? 駄目でも海老の美味いのが食べられます」


「どっちも好きです! 行きましょー」


 俺は即座にパトリックさんを連れて、ヘルンブルグの『海の妖精』に飛んだ。

 店主さんが俺の顔を見た途端に


「良くいらっしゃいました。今日入ったのが、あります!」


 早速注文して奥の席に座った。まだ昼前なので空いている。


「ニセタラバが食べられるんですよ。それも浜ゆでが」


 話しているうちにカニの足の山盛りとカニミソが来た。

 カニミソとタラバガニに二人でかぶりついた。


「美味い! 日本以来です!」


 エールを冷やしてカニを流し込む。幸せそうにしていたパトリックさんが真剣な顔でつぶやいた。


「父も呼ばないと殺されるかも……」


「誘ってみましょうか?」


 すぐ迎えに来いという返答に、パトリックさんがすぐ迎えに飛んだ。

 ハリーさんとサキバさんを連れて来るのに二分くらいだった。


「ミノルさんお呼び頂きありがとうございます。ところで、此処は何処です?」


「ヘルンブルグです。まあカニでも」


 ハリーさんは、とっくにカニを手にしていた。


「美味い!カニの汁味が豊富で、焼いたのは食べられませんね」


 カニを食べると世界共通で寡黙になる。

 何故かただひたすら食べる。

 この世界でも同じようだ。

 満足した辺りでやっと4人で食べ物や世間話をした。

 帰りにパトリックさんが、此処の港町ミルレドルフに連れて行ってくれることになった。

 これで自分でテレポートで行ける。

 港町は好きなのです。


 昼前から始まったカニ会が終わったのが3時過ぎだった。

 秘書のミアさんにお土産で、多めにカニを包んで貰いハリーさんに渡した。


「では近日中にでも」


 我々はミルレドルフで別れた。

 今日は大人しく帰ることにする。

 夕食は入らないだろうな……

 今日は、ただひたすらダラダラする日でした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ