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第1章25話 カツカレー


 朝起きると今日は曇り空。

 起き上がるのも面倒な雰囲気を日だ。

 こんな日は朝風呂が良いだろうと、手早くお湯を張り風呂に浸かる。

 体温が上がってくると、やっと動く気になってきた。

 服を着て食堂に行くと、叔母さん以外は疲れた顔で食べていた。

 皆忙しいのだから当たり前なんだけど。


 朝食を食べて胃が温まると動く気が出てきた。

 聖樹に行くと2メートル以上の高さまで育っていた。

 やはり聖樹だけあって成育が速い。

 毎日あげている聖水も利いているのだろうか。無事に大きくなってくれれば、それに不満はない。


「一日も早く聖樹らしい姿に育ちますように」


 手を合わせてお願いして、森をあとにした。


 ハリーさんから昼食に誘われ早めに来てほしいと念話で言われていたので、朝の仕事は手早く済ませ11時頃には事務所に行った。

 着くとハリーさんとパトリックさんが待っていた。


「すみません。お忙しいところ。実は話にあった農業高校出身の技術者と話がつきまして、6月くらいから来て貰えることになりました」


「トリルさんと言う方で王都で、農業技師として閑職を与えられておりました」


「それは嬉しい話ですね。やはり専門家が居ると全然違いますから」


「先日、王都で会って話をしたのですが、ミノルさんの話を全面肯定してました。私もだいぶ理解が進みまして、食料供給と都市発展と文化と経済が、どんなに密接な関係にあるか解りました」


 ハリーさんはいつもより、真剣な雰囲気だ。やはり専門家は俺なんかより説明が上手なようで歴史的相関関係の理解も進んでいる。


「そこを理解して貰うと話が速いです」


「私も少しでも早くミノルさんやパトリックの話を理解しませんとね」


「マイヤー商会は魔獸の森を越えた辺りに、結構広い土地を所有してまして、そこに実験農場を造ろうと話が進んでいるのですよ」


 パトリックさんが嬉しそうに話した。


「話しが急に進んでいるようですね」


「はい、現在10ヘクタールくらいの水田と200頭くらいの養豚場を造ろうかと」


「いきなり大農場じゃないですか!」


「そのくらい無いとカレースタンド1店維持出来ないそうです。」


「トリル農業技師によると1ヘクタールから新種の米だと5000キロの収穫が見込め、1食75グラムの消費とすれば66000食。カレー店が1店で1日800食売れば82日で無くなるので1ヘクタールだと販売実験も大規模農業の実験も出来ないと言われました」


 パトリックさんの説明を聞いているだけで、トリルさんが王都で閑職に回された理由が解ったような気がする。


 まあ日本の感覚だと1キロメートル四方は大きいけど、ここだと土地も余っているしね。


「何とか7月くらいまでに水田を造ろうかと。土地整備は畑を買った場所なんで、ある程度済んでいますから」


 ハリーさんまで今年中に最初の収穫を考えているのにびっくりした。

 やはり商売の上手い人は決断も早い。


「実は今日、お昼に来ていただいたのはカレーを有り合わせで作ってみたのですよ。米はまだ生産している地域があったので仕入れ、スパイスも似た物を選んでカレー粉らしい物を作ってみました。是非ミノルさんの意見を聞きたくて。何せカレーを食べた経験者は私とミノルさんだけですから」


 パトリックさんが笑いながら言った。


「もう作ったのですか。凄いですね!」


「トリルさんからの情報が大きかったですね」


 ミアさんとサキバさん番頭さんのレオンさんが、大きな鍋などと一緒に入ってきた。


「スパイス候補はまだ数種類有りますので、今日のは第一弾ですね」


「豚がまだ手に入らないので鳥カレーと鳥カツです。イノシシだと匂いますので」


「パトリックさんが昨日作って一晩寝かせてあるのですよ」


 ミアさんにパトリックさんの気合いをバラされる。


「いや、カレー作りは結構気合いが入るんですよ。作る人によって味も見ためも変わりますし、パトリックさん風が楽しみです」


 カツカレーが配られた。カレーらしい匂いが部屋に広がる。色は濃い茶色に赤を混ぜた感じで現代風。


「「「「「「頂きます」」」」」」


「美味いですね。カレーらしくて良いです。ご飯はチヨット固めだけどカレーには合いますね」


「辛いけど美味しいですね!」


 ミアさんが喜んで食べている。

 サキバさんとレオンさんは意見を言うヒマがあったら食べるという態度。

 様子から相当気に入ったようだ。


「鳥カツもカレーも初めてですが美味しいですね! こんな食べ物が安価に労働者に売られるとは…絶対技術革新はしなければ」


 ハリーさんがしみじみ言った。

 皆さん、おかわりをししている。


「パトリック、この鳥カツとカレーにエールがあっても良い気はしないか?」


 思わず笑ってしまった。

 パトリックさんも大笑いして


「言うと思って用意して有ります」


 グラスとエールの入ったピッチャーをサービスワゴンから出し配った。


「ミノルさん、カレーの味はどうです?」


「美味しいです。僕の個人的な趣味だと、もう少し酸味が欲しいですかね。」


「やはりですか……悩んだのですよ。こちらのトマト風の野菜を入れようかと」


「イノシシなんかもメンチカツにしたら食べれるかもしれないですね」


「やはりミノルさん! メンチカツなら香辛料や野菜で消せるかもしれないし安価に作れますよね」


「パトリック。その酸味のきいたカレーとメンチカツを速やかに。これは研究だから」


 ハリーさんの指示に笑ってしまった。


 鳥カツカレーソースとエールで3時頃まで盛り上がり御開きとなった。

 お土産に濃茶色のブーツを貰った。新型だそうだ。とても助かる。


 カレーで血行が良くなったのか、朝より相当体調が良くなった。

 帰って魔法の練習でもしてから風呂にでも入ろうと思って館に帰った。


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