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第1章20話 歴史に学んで


 帰るとすぐに風呂に入る。

 疲れた。

 全身を洗って、再度歯を磨く。ようやく人類に戻った気がする。


 貰ったばかりの緑色のシャツとダークグレーのズボンを着る。

 ちょっとオシャレな感じ。冒険者スタイルだが汚れ易いかな。


 ハリーさんから来ないか? と連絡。即座にOKして事務所に飛んだ。

 まだ三時頃だった。


 事務所に着くとハリーさん、パトリックさん、ミアさん、サキバさん揃っている。


「今日も大活躍でしたね」


「はい、馬車が襲われたと聞いて」


「何かヘンな感じがしますよね」


「ですよね」


「話をしながら、魔力の拡大と残りのスキル増やしをしましょう」


「実は朝から昨晩の話を理解する為に、勉強してたんですよ。パトリックに聞いて日本の教科書の産業革命を読みまして、なる程と。イモと畜養が初期の産業にいかに大切なのが理解できました」


「米の収穫量と効率や養豚などの本を今、探してます。農業高校の留学者はパトリックが現在探してますが、王都に一人見つけたようです。実はパトリックがこのプランに大賛成でして」


「農業高校の留学者は、連絡が付き次第雇う方向で考えてます。聞きだい事が沢山有りますし」


 俺は魔力の拡大をして貰って、スキル増加用の魔道具に移動した。


「私は余力があれば、大豆も初期に作りたいですね。油も採れるし醤油、味噌、豚のエサにも出来ますしね。豆腐も懐かしいです」


 パトリックさんが一気に話す。日本に3年留学してたそうだ。


「こんな感じでパトリックが燃えているのです」


 ハリーさんが嬉しそうだ。


「父が理解し易いようにポテトフライと塩味ですけど鳥唐揚げを用意しました。ミノルさんも食べてみてください」


「凄いですね。楽しみです」



 サキバさんが魔力はまだ増えそうで、スキルはもう1回くらいで全部最高レベルになりそうだと教えてくれた。


 しばらく待つと、ポテトフライと鳥唐揚げが出て来た。


「冷えたエールも用意しましたので、どうぞ」


「美味しいですね。ニワトリに近い味ですし。イモもジャガイモに似た味で、皮付きが美味しいです」


「でしょう? 似たこの世界のイモと鳥です。鳥は猟師任せなんで安定供給が望めませんが」


「実は200年ほど前日本の文化と技術導入ブームが有り、その時米やジャガイモなど色々導入されているのです。ところが入れるだけで何もしなかったので消滅したり、交雑したりとかで……現在その取りまとめ中です」


 パトリックさんが話しをしていても、他の三人は食べるのに忙しい。


「これは、いくらでも飲めますね。美味い」


「油で揚げるのは美味しいですね。でも油が高いですよね」


 とミアさん。女性らしい意見だ。


「油は作ると劇的に安くなります。石鹸も作れますし」


「これは本当に農業高校出身者が要りますね。知識が無さ過ぎですよ」


 とハリーさんが食べるのを一瞬止めて話した。


「イモも茎とか葉は豚のエサになるし、やはり優先権高いですよね」


 俺が言うとパトリックさんが頷く。

 サキバさんは無言で食べ続けている。


「カレー粉の原料は手に入りませんか?」


「言うと思いました。現在調査中です。米を広げるにはカレーですよね。パンでも食べれるし」


「パトリック、カレーを出来るだけ速やかに」


「はい、分かりました」


 パトリックさんは笑いながら答えた。


「食べ物を押さえるのは最強なのです。ホフマブルグで上手く行けば、後は同じことの繰り返しです。ヘルンブルグ、シュテンブルグと一気に行けます。先日、我々は良い地位を得ましたから。王国を囲む三角貿易も大きな利点です」


「なる程、壮大なプランですね」


 ハリーさんが言う。


「一番の目的は、国内経済の拡大なのです。自国で生産し消費し交易する。経済の拡大で技術が進む。これが出来ないと。今の日本と、この国のように金が流出して決済不安になるのです」


「ミノルさんの言う通りかもしれないですね……」


「高校で歴史の時間に習った通りの事が、この国で起きてしまっていると思います」


「私もそう思います。余りに教科書的なミスが、国を危機にしているのですよ。ミノルさんの言うように高校で習うような事が起きてるのです。これは私達商人の責任でも有るのです。交易するだけで何も生産して来なかったのが、これだけの停滞を招いたのです」


 パトリックさんは真剣に話していた。


「美味しい物を原材料から作って売って成功すれば人の役に立つという事ですよね」


 サキバさんが食べ続けながら言った。

 サキバさんの単純化は素晴らしいと思った。


 高校生の戯言を真剣に聞いて貰えて、嬉しかった。

 子供の頃から温かく迎え入れてくれた、この不思議の国が好きなのだ。

 不思議の国に帰って来て、まだ数日なのに急に大人に近くなったような気がする。

 ここでは15歳で成人だけどね。



 ハリーさん達ともっと話しをしていたかったが、夕食の時間なので館に帰った。

 部屋に着いてマントを脱いでいると、夕食を告げにミリーさんが来た。

 エールを飲んでいるので、解毒と治療魔法を自分にかけ痕跡を消す。

 お腹が減る魔法も有ればいいのに。



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