第1章15話 フオォォーン
今日こそはギルドで昼食を食べて、魔の森を見物に行くのだ。
ギルドに着くと何故かジグロさんが居た。イヤーな予感がする。
「ミノル坊ちゃんが来ないかと思いまして……実は……」
と言って食堂を見る。
人が10人くらい固まって座っている。
「治療ですか?」
「はい……」
全員の治療をすることになった。やはり獸人や亜人の人達が多い。魔人の人も居た。骨折が多く難しい。
古い骨折は曲がって付いてしまっている場合が多く、手を出せなかったのだが兵士出身の女性が、軍ではもう一度破壊して付け直すと教えてくれた。
獸人の娘が曲がった足で、治らないなら切って治療して欲しいと言ってきた。
実験的な治療で上手くいく自信は無いがと言うと、是非やって欲しいと言うので治療することにした。
麻酔魔法で痛みを抑え、曲がった部分の骨を圧縮空気で破壊した。透視で骨のつながりを見ながら、神様・仏様・精霊様に祈りながら手で骨の位置を固定して治療魔法を発動した。
淡く青い光が足を包む。
透視で見ていると、ジワジワと骨が生成し出している。心の中で祈り続ける。治りますように……
光が消えた。恐る恐る透視で骨を見る。
つながっている!
思わず、柏手を打って拝んでしまった。
麻酔魔法を解除して
『ゆっくりと立って』
ロクデニア大陸語で言うと、彼女はゆっくりと立ち上がった。
彼女はゆっくりと歩く。次に早足で歩く。振り返って俺に
「アリガトー ボッチャン」
日本語で言った。彼女は泣いていた。
俺もナンカ嬉しかった。
周囲から拍手が出た。見物人が居たんだ。
治療を終わらせ掲示板を見に行くと、女の子2人とノレルさんがいた。
「ミノル坊ちゃん! 先日は有り難う御座いました」
「いえいえ、今日は狩りですか?」
「そうしたいのですが、武器を怪我の時に無くしまして……この娘達は怪我上がりの上、ダークエルフと魔人なのでチームに入れてもらえないのですよ」
ダークエルフさんがリレさん、魔人さんがリスラさん。可愛いじゃないですか。
「僕と一緒にいかがです? 初心者ですけど」
今、足の曲がりを治したばかりの娘も出て来た。ノレルさんの知人のようだ。獸人のタタさん。
「じゃ皆でナンカ狩りましょう」
出かけようと玄関に向かうと
「ミノル坊ちゃん。魔獸の森の方は気をつけてくださいね」
ジグロさんが注意してくれた。
5人で正門を出て魔獸の森に向かう。森と街の間は芝生みたいになった草原だ。我々と魔獸の森の間に凄くデブの黄色の鳥が4羽歩いている。
俺は弓と矢入れを出し矢入れを背負って二本抜き先頭のやつを狙うと、ナンカ後ろで言っている。無視して矢を放つ。次のを狙って打つと最初のが当たった。また2本矢を出し狙うと二羽目も倒れたが、残りの二羽がすごいスピードでこっちに突進して来た!
一羽目はなんとか安全な距離だったが最後のは10メートル手間で当たって5メートル手間で止まった。
正直、死ぬかと思った。
後ろの4人は大歓声を上げ、渡してあった魔法バックを持って鳥を取りに走る。
手間のから順番にバックに回収していく。
さっきは危険だから止めろと注意してくれたのだそうだ……俺が無視した訳ね……
1羽焼いて食べることを提案したら、アッサリ拒否された。高値で売れるそうだ。
森から50メートルくらいまで近くに来ている。正門に向かう道の近くで、草を食べているトナカイと牛の混血みたいな大きいのがいる。
100メートルくらい離れている。安全距離だし草食だし安全みたいだったので打った。
眼に当たっているのに突進してくる。すごい声で吠えた!
「フオォォーン」
声で萎縮する。
二本目を打って、念の為三本を引き抜く。当たっているのに倒れない!
三本を連射して、もう三本も連射。
また三本連射
もう三本矢を用意したところで死んでくれた。
11本!
30メートルも離れていない。
危なかった……
近くに行くと……でかい!
矢で相手にする魔獸ではなかったようだ。
「ミノル坊ちゃん。本当にでかいですね……これ」
「ボッチャン。デカイデカイ」
「どうしょう、これ……」
「角が無ければ入るのでしょうが…」
「無理だよ厚さだけで、僕の背近くあるよ……」
悩んで、皆で相談していると正門が開き、ジグロさんが大型馬車2台で飛んで来た。
「正門から連絡があったんですよ。坊ちゃんがまた超大物だって」
「……これ、解体士呼びますね……」
「お願いします」
「これ、何なんです?」
「初めて見ました。今、鑑定士も呼んでありますから」
冒険者ギルドに帰って皆に飲み物を奢ると全員エールだったので俺もエール。
日本でダニエルに付き合って何度も飲んでいるので、倒れる心配も無いだろう。
つまみに鳥の串焼きを取ってあげたら必死に食べている。
腹が減っているのか!
串焼きとソーセージ焼きを追加で10本ずつとエールの追加を注文したら歓声を上げた。
全員無言で、ひたすら食べているので話しは出来なかった?
エールの追加をまた注文して、俺は最初のエールを魔法で冷やして飲んでいた。
俺以外、お腹パンパンになって皿にソーセージ焼き一本残っているだけになった頃、ジグロさんが戻ってきた。
あのフオォォーンは、魔国と北方に居る魔獸で、本来ここには居ない筈の種類だそうだ。
トナカイのような角と毛皮はオークションでないと値段が判らないので、後日。
肉と魔石で380万デル。
黄色の凶暴な鳥さんが、超高級肉なので1羽60万デル。4羽で240万デル。
大型馬車台と出張解体で10万デル。
本日610万デルの支払いだそうだ。
「良いですよ、それで。ポイントは僕に、本日分のお金は一緒に働いた5人で均等割りでお願いします」
「良いのですか?」
「構いません。僕はレベル上げが目的でしたから」
ジグロさんは4人を呼んで、日本語とロクデニア大陸語で明細の説明をして、坊ちゃんの好意で本日支払い分は5人で均等割り。一人122万デル支給。オークション分とポイントは全て坊ちゃんに行くが、文句有るか? といったことを宣言した。
全員唖然と俺を見ている。
ジグロさんが、早くプレートを出すように言うと全員恐る恐るプレートを出した。
みなさん、受け取ったプレートを見て俺に
「アリガトー」
を日本語やロクデニア大陸語で言っていた。
これで武器も買えるし御飯も食べれるだろう。
本当に泣いている娘もいた。
今日は怒られない良い日だった。
ちなみに俺は本日でCランクの冒険者となった。本当に強い相手だったのね……




